東証一部企業が中国人の架空取引で事実上倒産

シェアする

中国市場参入の方法を誤ったツケは大きい

東証一部企業が中国人董事長の架空取引で事実上倒産

東証一部上場の日系商事会社が、中国事業を任せていた中国人董事長(代取)による大量の架空取引で事実上倒産した。スポンサーは見つかったので民事再生の方向だが、通年経常利益の17年分という巨額の特別損失を計上し、上場廃止を廃止する模様。いったい何が遭ったのか?

中国売上が急拡大

事実上倒産したのは、江守グループホールディングス(9963)

民事再生手続き中の江守グループホールディングス(江守GHD)=本社福井県福井市、江守清隆社長=は15日、2015年3月期連結決算で純損益が536億2千万円の赤字(前期は33億円の黒字)となったと発表した。中国子会社の大口取引先の貸倒引当金を88億円積み増すなど563億円を特別損失として計上したことが主因。債務超過額は昨年12月末時点から約108億円増加し、342億6300万円に膨らんだ。

3月期決算、純損益536億円赤字 江守グループホールディングス 経済 福井のニュース |福井新聞ONLINE:福井県の総合ニュースサイト

この会社は北陸に本社を置く商社で化学品、合成樹脂、電磁材料などを扱う手堅い企業だったらしい。しかし、2005年頃から中国マーケットに進出し、売上額が急拡大。特にここ5年間で300億円だった売上が2014年には1,000億円を超える規模になっていた。パンフレット等では中国市場の規模拡大に伴う好調ぶりがうたわれていた。去年の売上割合では中国マーケットが全体の7割を占めるなど顕著だった。

事態が二転三転。そして、急展開

事態が急展開したのは、2014年10月20日と同月21日。同社が発表した臨時報告書の中で巨大な不良債権とそれに対する貸倒引当金が発表された。当初は8.5億程度だったのだが、今年の2月、3月に発表された追加調査結果で雪だるま式に不良債権が増えていき、最終的には300億円を超えた。これに伴うように株価も2014年10月、2015年の2~3月、そして最終的な倒産発表となる5月になって株価が紙くずとなった。

東証一部企業が中国人董事長の架空取引で事実上倒産-江守グループホールディングスの株価急落

詳細は同社の「中国子会社における追加調査 結果のご報告」が詳しいが一部抜粋する。

監査法人からは、中国子会社の大口顧客との取引が近年増加している一方で、滞留売掛債権についても増加している事実を踏まえると、一般的には不適切な取引が疑われること及び当社子会社の社員が実態のない会社との取引に関与している可能性があることについて指摘を受けました。

中国子会社の元総経理は当該元総経理の親族が経営していると思われる会社と中国子会社との間で取引を行わせていた(中略)。会社の承認を得ずに親族の経営する会社と取引したという単なる社内規則違反だけでなく、当社中国子会社における売上の実在性の疑義及びさらに重大な内部規則違反

監査法人が実施した残高確認手続の中で、顧客A社に対する売掛金残高について、(中略)A社の再販売先が江守中国の仕入先X社であることが分かりました。すなわち、X社から仕入れた商品が、最終的にX社に売り戻されたことになります。

東証一部企業が中国人董事長の架空取引で事実上倒産-中国人董事長の架空取引方法

途中まで読んで気を失いそうになるような内容が、延々と28ページに渡って詳細に記載されている。

結末と余波

江守グループホールディングスは内部で事態の決着として「中国子会社の事業縮小及び特別損失の計上に関するお知らせ」にて以下のことを発表している。

  • 事業縮小の対象会社
  • 特別損失の計上

この中で、中国事業を事実上停止。回収の手続きと縮小のための人材に絞り行うという。営業活動を停止しているので回収債権のためだけになるが、循環取引をやっていた中国人董事長にこれを補填することは出来ないだろうし、循環取引に加担していたような企業と争ったとしても回収は絶望的だろう。

東証一部企業が中国人董事長の架空取引で事実上倒産-そして巨額損失の計上

この中国人董事長は本体の取締役も勤めており、江守グループホールディングスの監査の甘さに株式総会で相当糾弾されるだろうが、まさに身から出た錆と言える。この経緯について、証券会社各社は格好の粉飾決済の一例として大きく取り上げている。

第279回 【事例研究】江守グループホールディングス・突然の債務超過転落発表!② | 楽天証券

中国マーケットとのつきあいかた

日本国内のマーケットが横ばいまたは縮小する中で、海外に目を向ける企業は多い。特に中国人人材がかんたんに手に入り、距離的にも近い中国市場に参入する企業は反日デモにも負けず後を絶たない。

マーケットはあるのか?に対しては、「ある」と答えたい。実際、私が所属する会社は売上が前年比6割強と好調だ。確実に回収できる案件をメインに、不安定なものには手を出さないように努めてきた結果だと言える。

ただ、CFから見ると大赤字である。原因はいろいろあるのだが、高騰する人件費やオフィス費用、よくわからない中国政府に振り回されたりと販売コストがかなり重いためだ。本社からの持ち出しもかなりの金額になっている。儲かっているとされている自動車産業も販売の急降下に加えて、日系という罰ゲームや根拠不明の独禁法でいきなり横取りされるなど散々だ。儲かる儲からないか?という意味から言うと、「ない」と断言する。

では、どう付き合うべきなのか?私個人の意見を言うと「ヒトやモノ、カネなどを動かさないで、商取引するのがいい」だ。江守グループホールディングスも当初は単なる海外取引をしたようだ。その後本格的にヒト(駐在員)を派遣し、カネ(現地法人の設立)を動かして最後破綻した。日本ベースで取引または間に別の商社を入れてやっていれば、こんな結末にはならなかったはず。中国というところは伏魔殿みたいなもので、そこに乗り込むのは旧日本軍のように、まさに「泥沼化」することを歴史が教えてくれると言える。