国益と自由化要求を操る当局
中国政府と海外勢が中国ECをめぐって攻防を続けている。海外への外貨流出やITの国産化推進したい政府と自由化を求めて海外および中国国内で乗り込んでくる外資の間で駆け引き活発化。中国は金盾を使って取り込みを図るようだ。
中国人を呼び込みたい海外サイト
中国は経済成長が鈍化した…とはいえ、表面上の経済成長は7%と高い。中国の公式数字は疑念が多いのは確かである。ただ、懐疑的に見る欧米メディアでも、経済成長率が3%前後と推測しており日本の3倍近い。
同社は昨年、公式GDPの予想を公表するのをやめ、実際の成長率とみなす数値を公表することを決めた。それによると、今年の中国成長率は2.8%、2016年はわずか1.0%にとどまると予想している。
その中国で、成長が著しいのはEC(オンライン販売)である。個人向け販売であるB2Cの分野は、経済成長の鈍化にもめげず2桁成長を続けてきた。アメリカのマーケティング会社は、2015年の予測値を32%としており、成長スピードは驚異的である。日本は2014年から2015年が12%程度なので2倍強、金額でも8倍近くある。もちろん、発表内容が正しければであるが。
そんな中国市場に、欧米企業のアプローチがここ最近多い。決済などの金融からサービスまで、業務提携の幅は非常に広い。
「ペイパル・チャイナ・コネクト」プログラムは銀聯カード、中国建設銀行、SMZDM.com等とのコラボレーションにより、消費意欲が旺盛な中国の海外ネット購入者・ハイタオユーザーとペイパルを利用する世界中の1000万以上のショップやブランドを結ぶ。
各社ともに、最後は中国の消費者を自分のサイトやサービスに引きこもうと、かなりの労力を費やしている。
閉鎖的な市場と金盾
ただ、このサイトで繰り返し言っているとおりであるが、中国は資本主義の国家ではないし、自由主義の社会でもなく、西側ルールの世界でもない。中国共産党は、その存続を第一としているので、脅かしたりその予備になるようなものは容赦なく排除する。FacebookやTwitterなど世界的な有名企業でも、中国当局には手も足も出ないのだ。
おまけに、改革開放後30年近く経済発展を支えてきた来料加工貿易が先細っている以上、14億人をどう養うかは当局の頭痛ネタであることは間違いない。その飯ネタの一つにITの国産化やEC化がある。そのような分野に、海外勢が入ってきては困るのが本音ではないだろうか。とりわけ、日本やヨーロッパのようにGoogleとAmazon一辺倒になり情報や物流を牛耳られるのは斷乎阻止するだろう。
そこで、中国が考えた手が金盾を活用する方法のようだ。
万里の長城(Great Wall)にちなんで「Great Firewall」と呼ばれる中国政府のネット検閲は、中国と国外との間でフィルタリングなどを行うためトラフィックが遅くなるという問題を招いている。(中略)
仕組みは、CloudFlareが持つWebサイトの高速化などの技術とBaiduが中国内17カ所に持つデータセンターネットワークを組み合わせ、国内外のトラフィックの性能を最適化し、Webサイトの読み込みを高速にする。一種の「“高速レーン”を作る」ものだという。
たとえば、上記の記事のように、中国の金盾をまさに”盾”にとって、それを補助する中国企業と手を組ませるようなやり方だ。自動車産業が中国市場に参入した時に、現地企業と合弁会社を作らせているが、それと同じことをITでもやろうとしている。これならば、手を動かすのは海外企業、中国企業は黙っていてもお金が入るおいしい仕組みがまた味わえるわけだ。
消費者保護など数多の非関税障壁
これに加えて、中国の法律は中国政府自身が自由に決めることができる。たとえば、取引にかかるリスクをすべて売り手に押し付ければ、中国の消費者の保護という体のいい文句で非関税障壁が作れてしまう。
9月18日に国家商工業行政管理総局が発表し、10月1日から施行された「网络商品和服务集中促销活动管理暂行规定」では、キャンペーン時などに安く購入した商品は7日以内であればすべて返品、返金可能にする
中国は建前上議会政治をとっており、選挙はあるものの、出来レースなので海外企業も不利な法案にロビイスト活動もできない。順調にマーケットを育てたら、横から取り上げられることは十分にあり得る。
先日、中国政府は銀聯カード経由の引き出し上限額を突然引き下げた。1日あたりの上限金額1万RMB(約20万円)を年間で10万RMBまで引き下げるというもの。
中国は銀行・クレジットカード「銀聯カード」による海外での現金の引き出しを年間10万元(1万5719ドル)に制限する。中国銀聯(ユニオンペイ)関係筋がロイターに明らかにした。マネーロンダリング(資金洗浄)や資本流出を抑制する狙いがある。同筋によると、10月1日から年末までは5万元を上限とする。
もともと年間で7,000万円までできたのが、約188万円までと97%カットされるのだからビジネスインパクトは非常に大きいだろう。
中国ECに参入する場合は、中国政府や中国企業の甘いトラップによく注意が必要ではないだろうか。
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