次世代産業育成促進は吉と出るか?
中国政府は李克強首相が3月に示したブロードバンド促進計画を国務院にて具体化し、決定した。同時に21兆円を投じて関連企業の育成を図るとしている。この次世代産業の育成促進は吉と出るか凶と出るのか?
きっかけはランキング
今回の決定は国務院(日本の内閣に相当)は13日に開催した常務会議にて行われたもの。李克強首相は、携帯端末保有数が世界最多であるにもかかわらず、通信速度は途上国並みである状態をブロードバンド先進国目指して改善するとしている。ほぼ同時期に工業和信息化部(工業情報化部)からも「ブロードバンド中国」の答申をしており、これを受けたものと言える。
このブロードバンド先進国の中身は次の通り。
- ブロードバンド人口の引き上げ:全体の半数以上を現在の3Mbpsから8Mbps以上に引き上げ
- 速度の引き上げ:都市部については、4割以上の速度引き上げ(50~100Mbps)
- 光ファイバー化:都市部については、全回線を光ファイバーに切り替える。また、8,000万戸以上の新規獲得を目指す
- 行政機関へのブロードバンド導入:全国の行政機関にブロードバンドの整備を徹底
- 利用料金の引き下げ
これに加えてネット関連業界の改革も行う。
- 通信市場の開放
- 公平な競争環境の整備
- 接続事業者の設立を奨励(総数を100社超に引き上げる)
全体で投資額を21兆円程度と見ており、中国政府の強い意気込みが感じられる。
風呂敷をたためない中国人
ただ、これらの情報を真に受けることは避けたい。中国政府がこれまでもあまたの大風呂敷を広げているが、これをたたむことができないのが常である。また、ハードを真似して作ることはできるが、ソフト(中身)をつくり上げるのがとても下手な民族でもある。ハリボテを作ったものの、中身が放置された都市や巨大な廃墟施設が中国各地にあるのは、この証左ではないか。
ブロードバンド改革の先にあるもの
今回のブロードバンド改革は、中国政府が狙う産業構造転換の第一歩、基盤づくりである。リーマン・ショックやその後のASEANとの競争激化から中国政府は産業構造をどう変えるかに腐心してきた。その答えの1つがインドなどに見られるIT産業の育成だと言える。
中国政府がネット高速化を重視するのは、産業構造の高度化のカギを握るとみているためだ。ビッグデータやクラウドコンピューティングなどIT(情報技術)と、製造業など既存の産業を結びつける「インターネット+(プラス)」と呼ぶ政策を推進している。
ネットを介し新たな事業や起業をはぐくむ環境を整え、雇用の創出につなげる考えだ。電子商取引が農村部にも広く普及すると期待でき、消費主導の経済モデルへの転換にも役立つとみている。
ITと言うのは、大量処理に向いている産業である。ビッグデータというバズワードが最近もてはやされているのも、ITの特徴をよく活かした分野だからだ。ただ、大量処理に必要なのは標準化である。属人性をなくして、今まで複数人でやってきたことを1台のサーバで効率よく処理する省人化でもある。
中国の国家プロジェクトは、出来レースである。プロジェクトが担えるかどうかではない。そこには技術も信念もない。そのまま他の企業に丸投げされたり、外資の技術を買ってきて名前だけ消して入れていくケースが多い。結果、胴締めは何もしなくても利益が上がり、末端は相変わらず技術力がつかず、そして省人化・集約化により貧富の差が加速度的に開くのではないか?と思う。
今後の中国社会の動向からますます目が離せなくなってきたと言える。
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