書評:三国志「その後」の真実

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三国志は勧善懲悪物語ではない

三国志「その後」の真実 知られざる孔明没後の後伝

今回紹介するのは『三国志「その後」の真実 知られざる孔明没後の後伝』。三国志と言えば、劉備・関羽・張飛が手と手を取り合って戦乱を駆け抜け、孔明を得て曹操に立ち向かうという勧善懲悪もののように思うのだが、そうではないのだ!という書籍である。

本書で印象に残ったのは2点。

1.三国志演技の成立過程

歴史書と言うのが、その書籍が成立した時代や時の政権に左右されやすいのはよく知られている。三国志の場合も例外ではなく、ここに漢王朝と儒教が関わっているのだと指摘している。

本書で述べられているのだが、三国志演義は全120話のうち桃園の誓いから諸葛孔明が五丈原の戦いで没するまでで8割のボリュームを割いている。しかし、黄巾の乱から五丈原の戦いまでは約50年で、三国時代の終焉まではまだ数十年残っているのだ。三国志というタイトルと歴史的な長さが不一致しているということである。

なぜそのような構成になっているのかは、この書籍の成立過程と関わっているというのが著者の指摘である。

2.三国志は絶対君主制ではない

三国志を読むと曹操、孫権、劉備の三英雄はあたかもリーダーシップを発揮して、臣下がそれについていくように見える。しかし、本書ではこれも違うのだと指摘する。

そもそも孫権と劉備が拠点とした呉や蜀はそれぞれの出身地ではない。いくら軍隊を持っていたとは言え、その政権基盤はかなり不安定なものだったというのである。孫呉では周瑜が、蜀漢では諸葛亮孔明が華々しい外交戦を繰り広げるが、これらの背景を紐解いているのが本書である。

三国志ファンなら必読

三国志「その後」の真実 知られざる孔明没後の後伝

三国志のその後(三国志の終焉から晉王朝の成立まで)自体は、ほかの歴史書で読むことはできる。陳舜臣の『小説十八史略』であれば三国時代全体が1冊でコンパクトに収められているので、小一時間もあれば十分である。

本書のサブタイトルだけを見ると、三国時代の歴史紹介と三国志演義の続きを補うもののように見える。しかし、250ページほどと日本-中国のフライトで読めてしまうボリュームながら、三国志ファンならきっと驚くような意外な物語の側面を知ることができる一冊である。

旅のお供にいかがだろうか。