都市化が進む中国農村

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モデル地区を(わざわざ)見に行ってみた

中国政府が70年代から進めている都市化計画。90年代後半から貧富格差解消の目的を兼ねて、農村の都市化が進められている。中国嫁の実家に里帰りしたとき、近くにモデル地区があると聞いたので行ってきたのでご紹介。

中国政府と都市化計画

1960年代の中国は、大躍進運動や文化大革命の混乱が続き国内経済が疲弊しきっていた。頭脳は海外に逃亡、西側との対立で、ヒトもモノもカネもない状況だった。そんな境地にあって生み出されたのが人貸し政策である”改革開放政策”。

今では想像できないような安価で、(当時は)ほぼ無尽蔵のヒューマンリソースが得られるとあって多数の企業が中国に進出した。コストメリットの大きい労働集約型産業にとって、中国がとても魅力的生産地であったのは言うまでもない。

80年代から90年代にかけて勢いがついてくると、地方から沿岸地区を中心に人が殺到。小さな村がどんどん都市化していった。人口母数が大きい中国で、こういった集約が進むと就職難、大気汚染、交通渋滞、環境破壊といった都市病が深刻化する。

中国政府は社会問題化し始めた1970年台から、都市計画について政策研究をしてきた。2014年には、都市部と農村を1つの地域に見立てて、一極化を避けながら都市も農村も発展させる新型都市化計画を発表した。

中国の都市化率は直近の統計では約60%とされている。今後、中国は30年ほどかけて80%まで押し上げようとしている。

2013年,中国の人口約13.5億人の内,都市人口は約7.3億人に上り,都市化率は53.7%となっている。2000年の都市人口,都市化率は,それぞれ4.6億人,36.2%であり,年平均2,077万人,1.3%ずつ増加してきた計算になる。中国政府は,都市化率について,2020年に60%,2050年に80%とする目標を掲げている。

中国政府の推進する「新型都市化政策」について

日本も高度経済成長期前後から都市化率は徐々に上昇し、現在の都市化率は約9割とされている。中国も経済成長を見据えた計画を立てており、その結果、農村にも次から次へとマンション群が建設されている。

と、言うのが前置き。

エコと緑化を両立したモデル地区

嫁実家の(中国人的な感覚でいう)近くに、都市化のモデル地区があるので行ってきた。場所は、山東省の省都・济南から南に100kmほどいった場所にある。名前が”下水河”なのだが、日本人が聞いたら、顔をしかめそうな感じである。

エントランスから気合が入っている。どこかの寺院に見間違えそうだ。

入り口付近には”创建文明城市,提升城市(文明都市を作ろう、都市化をすすめよう)”のスローガンが掲げられている。中国らしいパッと見はいい。しかし、やっぱりと言うか、あまり機能的ではないをやはり目にする。

一応、それなりに車幅を確保されているものの、このように大型バスが来ると横幅と高さがギリギリである。近くにいた保安がやってきて、横幅をギャーギャーと確かめながら運転していた。

マンションは想定する住民があまり多くないのか、5~10階建ての低層がメインとなっている。後述するが、土地が余っているためか、1部屋あたりが大きく、横にやたらと長い。

公園や遊具、屋根付きの休憩場所がこれでもか!というくらいに整備されていた。清掃員がぐるぐる巡回しているということもあり、なんとゴミも落ちていない。下手な大阪よりもキレイなのだ。

おどろ木ももの木さんしょの木である。

あとで確認してみるとエコロジーや緑化も考えられているとのこと。上の写真からもわかるが、該当はすべてソーラーパネル設置。全世帯の熱水は、すべて太陽エネルギーまかなっている。また、建物と建物との間には、公園が整備されており緑にあふれている。

景観破壊のスローガン

そんなモデル地区なので、どうしても党が掲げるスローガンがいたるところに設置・書かれている。先の寺院のような入り口付近にも中国共産党のスローガンが。

ちなみに、プリント印刷かと思ったら、手書き。無駄に職人技だなぁ。

公園の脇にもこんなものがドーンと建っている。扇っぽく見せながら強度を保つために、センスの後ろ側に骨組みがあって、見た目がよろしくない。この雑さが中国らしい。

緑地公園の隣にも、富国強兵スローガンが設置されている。せっかく緑があるのに、マンセル色環のほぼ反対にある赤一色を平然とおいてしまう。スローガンの堅苦しさと一緒に、見る人の心は落ち着きそうにない。

敷地内には診療所や幼稚園、スーパーに映画館などが整備されており、今後は商店街も作られるようで工事が粛々と進んでいた。

なお、映画館の前には金色の毛沢東像がいらっしゃいました。”为人民服务”をこのご時世に見るとは思わなかった。

政治色の濃さは施設名にも及んでいた。近くにレストラン(兼宴会場)があったのだが、その名も人民公社大食堂である。

このあたりだけ見たら、60年台にタイムスリップできる江戸村的なエンターテイメント性を狙っているのではないかと思ってしまう。

農村の都市化は進むのか?

このモデル地区の記念すべき第1号棟は、10年以上前の2006年に工事を着工しているのだが、この工事は今でも続いている。

同地区をぐるっと見ると、現在でも新しいマンションが建設中なのだ。工事現場のスタッフは、忙しそうに作業をしていた。上海など沿岸都市で高所作業の場合、命綱が必須になるケースが多い。もちろん、こんな片田舎では命綱はなく、中国っぽい。

このモデル地区には、既存で30棟ほどある。しかし、実際に住んでいるのは半分程度のようだ。1階からさっと見たレベルでも、コンクリート打ちっぱなし(窓だけついている)がとても目立つ。これだけの規模なのに、敷地内にはあまり人影を見なかったのも、その証左だろう。

そもそもこの近辺、写真を見ればわかるが工場など一部除いて、ほとんどが荒れ地。これだけ土地が余っているのに、わざわざ騒がしいマンションに住むのは、物好きくらいではないだろうか。

沿岸地区は土地に限りがあるので密集化するのはわかる。しかし、こんな農村で政府が思い描く都市化が進むのか?と聞かれたら、No(ノー)ではないかと思うのだが、いかがだろう。