インターネットでも対外拡張路線?-領土塗り替え作戦が進行中

中国インターネット
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習近平率いる中国が推し進める『中華民族の偉大なる復興』こと中国夢。2013年に同氏が国家主席に就任した以降から活発になり始めた物理的な拡張-南沙諸島への人工物建設や尖閣諸島への領海侵犯-に加えて、インターネットの世界でも対外拡張路線がはっきりと読み取れるようになってきた。

Facebookで南沙諸島が中国領

事の発端は、SNSの筆頭格であるFacebookで起きた物議である。

同社のサービスFacebook上で『中国』を検索すると、南沙諸島を含む形で表示されていたようだ。南沙諸島は、複数の国が主権を主張する諸島である。2016年に国際裁判所で中国主権が明確に否定されたものの、中国による実効支配が続いている。

主権を主張する国の一つであるベトナム政府が、同社に抗議をしてニュースで取り上げられたのだ。

ベトナムのタインニエン紙(電子版)は2日、中越などが領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)、西沙(パラセル)両諸島について、インターネット交流サイト(SNS)最大手フェイスブック(FB)の地図が中国領のように表示しているため、ベトナム政府が修正を文書で申し入れたと伝えた。

南沙・西沙、FBで「中国領」=ベトナム政府が修正要請

『表示されていたようだ』と表現したのは、現在すでに修正されたためである。ベトナム政府の抗議を受けて、同社は係爭中のエリアをまるっと地図表記から取り除いたのだ。

As of Monday afternoon, a map used for Facebook's advertising tool was found to have completely removed Paracel (Hoang Sa) and Spratly (Truong Sa) Islands in the South China Sea, which Vietnam calls the East Sea.

Facebook removes Paracel, Spratly Islands from China's map at Vietnam's request

ちなみに、どのように表現されていたのか?であるが、こんな感じだったようだ。確かに南沙諸島がまるっと中国に係屬している。

なお、今は『中国』で検索をしても、このエリアはどこにも所属していない状態になっている。修正後の地図がこちら。

中国でFacebookが規制されているのは、周知のとおりである。ベトナムも同社のSNSを以前禁止していた。しかし、現在両者はうまいこと協力関係にあって、顧客がいるベトナムの主張に沿った修正だったのだろう。

近年、ベトナムはシリコンバレーに拠点を置く企業のSNSサービスに門戸を開いてきた。この姿勢は中国がフェイスブックやグーグル、ツイッターへの接続を遮断し、微信やQQなど中国製SNSの成長を促進してきたことと対照的だ。

越、FBが起業家に不可欠 かつて禁止、今や経済成長の手段に

一時期、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏は盛んに中国へアピールしていたが、その頃にやったお土産だったのかもしれない。

もっとも、同社は今年に入ってから中国の端末メーカに個人情報を引き渡していた問題でも集中非難を浴びており、これ以上の足元での火事を嫌った処置の可能性も否定できない。

米フェイスブックは5日、華為技術(ファーウェイ)など中国の消費者向け端末メーカー4社とデータ共有で提携していたことを明らかにした。

フェイスブック、中国の端末メーカーとのデータ共有を公表-華為など

台湾表記で航空会社とにらみ合い

南沙諸島以外に、中国政府が今年に入ってから積極的に取り組んでいるものは台湾表記である。5月頃から中国に乗り入れしている航空会社に対して、台湾を中国台湾と明記するように求めている。

中国政府が外国の航空会社に対しホームページ(HP)などで台湾を「中国台湾」などと表記するよう要求している問題で、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)は18日までに、中国人客向けのHP上で台湾の表記を「中国台湾」とした。

JALとANA、台湾を「中国台湾」表記

航空各社は苦慮の末に、中国人客向けの言語またはサイト上でのみ”台湾”を”中国台湾”に表記変更をしてしのぐようだ。ANAのサイトで確認すると簡体字版以外は、”台湾”のままである。

ただ、この”表記のみ”の対応した結果、オンラインの航空券販売サイトのようにデータ引き渡しをするようなサイトでは面白いことが起きている。

たとえば、Skyscannerの中国語版である天讯网でTaipeiを引き当てると、表記データではなく元データの台湾で表記されている。天讯网は法人もサーバも中国にあるのにもかかわらずだ。これいいのか?

中国政府は台湾の実効支配ができないとしても、オンライン・オフラインで情報発信を継続することで、”市に虎あり”を狙っているのかもしれない。

以下、所感。

平和ボケから脱却しよう

上述で”市に虎あり”としたが、中国政府の名誉のため言うと、この表記変更は理不尽な要求ではない。そもそも40年も前に中国政府(中国人民共和国)と国交を締結したときに、ほとんどの国は”一つの中国”を承認しているのだ。

中国政府から言わせれば、書面上は約束していたにもかかわらず、背後でコソコソやられていた状態を回復しただけなのだ。日本も幕末に欧米から押し付けられた不平等条約を直すのに膨大な労力を掛けていたが、その様子と若干被る。

とは言うものの、ここ最近の中国政府のナショナリズムは度が過ぎている。国内のTV(特に軍事系)をつければどの局も民族意識を高めるような番組だらけである。先日も習近平は、こんなことを語っている。

中国の習近平国家主席は27日、ジェイムズ・マティス米国防長官との会談で、中国には平和への強い決意があるが、領土について「一寸たりとも」失うことはできない、と語った。

中国の領土は「一寸たりとも」失えない 習主席、米国防長官との会談で

中国には”引く”というカードがないのだ。

そんな中国とアメリカが覇権を争う今、日本はその間に立たされている。冷戦時代に中曽根元首相が日本を浮沈母艦と表現したが、再来である。一方、日本国内ニュースを見ると、1年以上前からトップニュースがモリカケだらけで国際状況の緊迫を伝えるものが見当たらない。

そんな日本は内向き志向で滅亡した李氏朝鮮の末期にそっくりな気がしてしょうがないのだ。

日本の評論家は、親米または親中を説くものが多い。どちらも他力本願なのである。確かに、中国政府の反日政策は不愉快かもしれない。しかし、事前通告もなく中国政府といきなり頭越しに国交樹立したアメリカを信用するのもトンチンカンである。

そして、ハッと気付かされるのは”自分の身は自分で守る”という中国人の原理原則だ。

中国に駐在が決まったら覚えておく10か条-自分の身は自分で守る-
危険とリスクとスリルがいっぱいの中国ライフ 中国に通年8年生活している。北は大連、南は治安が悪いとうわさされる東莞、深セン。東の上海…と発展の度合いが異なるそれぞれの場所で生活をした。しかし、1度もモノを盗まれたり、騙されたりはない。中国生...

日本にいたら戦火に巻き込まれ、中国にいれば人間の盾である。どちらもろくでもない。身を常に軽くして、逃げる手段やルートを確保する。情報の入手は複数用意しておく。さらに、どこででも生きていけるスキルを身につけるのも必要だろう。

いずれにしても、平和ボケにならないよう気をつけるのが重要だと思うのだが、いかがだろうか。

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