米国で長年問題視されていたバックドア問題に焦点が当てられている。制度の不備を狙った抜け穴問題は、米国に限らず日本にもある。国籍をターゲットにしたこの問題は、むしろ、罰則のゆるい日本のほうがタチ悪い。
やっと重い腰を上げた米国
今回メディアが取り上げているのは、米国向けの出産ツアー。詳細は、リンク先記事をご覧あれ。
米連邦検察局は1月31日、中国人妊婦を顧客にして行われてきた「出産ツアー」を企画・実施していた米国籍の中国人旅行業者を一斉に起訴した。
中国人の「米国出産ツアー」、ついにメス
~ぼろ儲けの斡旋業者を起訴、大統領令で出産ツアー自体の禁止も~
私の知る限り、少なくとも10年前から国籍取得を目的とした出産ツアーはあった。
たまたま米国が問題視して、貿易戦争と相まって取り上げられているが、類似の記事は産経新聞社などがたびたび取り上げていた。
「南太平洋の楽園」ともいわれる米自治領北マリアナ諸島連邦のサイパン島で、ある闇ビジネスが活況を呈している。中国人の妊婦が現地で出産し、米国籍を保有する新生児を母国に連れて帰るパッケージツアーだ。こうして生まれた子供は「美宝(メイバオ)」と呼ばれ、ここ数年で激増。今やサイパンで出生した赤ちゃんの71%が中国系というから驚きだ。
米国の前はカナダ・さらに前は香港
今回は米国が問題になっているが、その前はカナダ、さらにその前は香港が有名だった。
今でも記憶しているのは、深圳と香港は川を隔てているがその距離は100mもないので、夜中にこっそり川を渡る猛者(の妊婦)である。
中国大陸から香港へ渡って出産する妊婦が近年増えている。香港病院管理局の統計数によると、2004年から2005年の間で1万3千人余に上る。香港現行滞在政策では、香港で出産した中国大陸の嬰児は出生証明書を提示すれば、香港の永住権の取得ができ、11歳になってからは香港身元証明を取得することができるからだ。
これらの問題に共通するのが、当地(渡航先)の医療機関に負担を掛けて地元の人が迷惑を被るという構図。上述の2006年記事でも書かれている。
香港病院管理局によると、香港国立病院で誕生した嬰児の約30%が大陸人の子供である。大陸からの妊婦が多すぎる為、香港の国立病院に大きな負荷をかけているという。その数はまだ増えつつある。
所得の増加にともなって米国をターゲットにした出産ツアー参加者が増加。瞬間風速的に最高売上を狙って人数が急増。結果、米国がブチ切れたといったところか。
日本の制度も変えるべき
米国やカナダ、香港は属地主義だから物理的に移動しないと国籍はもらえない(親のどちらかがその国籍を持っているのを除く)。でも、問題の厄介さは属人主義を取る日本のほうが上だろう。
出生した子が日本の国籍取得する方法は、国籍法で定められている。
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
属人主義なので、親のどちらかが日本国籍を持っているか、日本に生まれたものの国籍推定ができない場合に限定しているわけだ。
でも、この条文には続きがあって…
第三条 父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
ナンノコッチャ?と思った人は、法務省にもっとわかりやすく解説したページがあるので、こちらをご覧あれ。
平成20年12月12日,国籍法が改正(平成21年1月1日施行)され,出生後に日本人に認知されていれば,父母が結婚していない場合にも届出によって日本の国籍を取得することができるようになりました。
虚偽の届け出について罰則ある。しかし、虚偽に加担する輩というのはおおむね以下のような人間である。
- (制度の欠陥をついてくる)悪意のある輩
- 失うものがない輩(いわゆる低所得者)
- 法制度を理解できない愚か者(いわゆる低学歴)
1のような輩は、事前察知して即逃げる。2と3は、ゴミ人間なのでホロコーストするしかない。しかし、日本は温情主義なのでできないという目も当てられない状態である。
属地主義の場合、証明証の発行元(そして、それは医療機関)を巻き込まなければ難しい。属人主義の場合、紙切れペラでできちゃう。よっぽどタチが悪い。100人子供がいると言い張って、認知したらどうなるのだろうか?
いやはや恐ろしい。
コメント