中国当局がネット統制をさらに強めるための法整備に動き出している。中国ネット受難の日々は、より深く、より長くなりそうだ。
サイバーセキュリティ法いよいよ成立
今年の頭から話題になっていたネット安全法(参考記事:サイバーセキュリティ法案を公表)は、まだ審議中の段階にある。ただ、その実際の運用にあたり、度合いを強化しようと考えているようだ。
中国国家インターネット情報弁公室の魯●(●は、火へんに韋)主任は9日、記者会見し、国益を守ることを主眼とする「ネット安全法」の施行に向け立法機関で審議が進んでいると述べ、ネット空間の取り締まりを一層強化していく方針を示した。
以前は、取り締まりの対象は一般民衆で、目的は主に情報の拡散を防止するためであった。特に、禁止キーワードや当局に対するアクションを呼びかけるようなデモなどが中心であった。
自国民に向かい始めた矛先
習近平の汚職追放運動は、大物を捉えるための中堅幹部から、上位に向かって動いてきた。点と線の動きだ。ここ最近になって、党内に対しての批判を含めた面に対するものへと変化しつつある。
中央政治局は10月12日、党規約の改訂版を承認した。国営新華社通信は、新規約は共産党の歴史上、「最も完全で厳格な行動規範」だと述べた。新規約は、党員が政策について「否定的なコメント」や「無責任な意見」を述べることを禁じている。党員は問題を議論することはできる――だが、それは良いことを言う場合に限られる。
中国の検閲:表現の不自由という新常態 この記事はパニックと混乱を広げる罪を犯している | JBpress(日本ビジネスプレス)
面の動きになっているということは、その範囲が、これから一般民衆にも適用され始めるのは想像に難くない。実際に、12月に入り大気汚染関連の記事やコメントが削除されるという騒動も起きている。
「大気汚染の悪化抑制に貢献してくれた全市民に感謝します」。北京市政府は10日、市民に向けた「感謝状」を発表した。だが、短文投稿サイト「微博」上では「感謝はいらない。(市長は)首を差し出せ」などと政府の対応を批判する書き込みが殺到、当局に次々と削除された。
中国当局の天安門事件に対するトラウマの深さ-体制を揺るがすような言動への恐怖感-がうかがい知れる。それだけに、これらの動きが強化されることはあっても、緩和される見込みは薄いのではない。
中国には検閲などない!
こうした一連の動きについて、中国当局は検閲そのものの存在を否定している。ボイス・オブ・アメリカ(アメリカの声)の中国語版には、インターネット施策の高官がインタビュー内容を引用している。
中国有400万家网站,有将近7亿网民,有12亿手机用户,有6亿的微信和微博用户,每天产生的信息是300亿条。任何一个国家和组织,都不可能对这300亿条的信息进行审查。
意訳すると中国には400万のサイト、7億人のユーザサイト、12億人の携帯ユーザ、6億のSNSユーザが毎日300億もの情報を発信している。どんな国家の組織がこれだけの膨大の量をいちいち検閲できるのか?と。
普通に考えると、そのとおりである。サイバーポリスが3万人いたとしても、毎日一人あたり100万メッセージなど見られるわけがない。しかし、そこは僕らの憧れの中国様である。事故を起こした高速列車をさっくり埋めるほどの実行力。きっとやっていると私は確信している。
冗談はさておいて、在中の外国人にとってはいいことがない。これらの国家安全法やサイバーセキュリティ法の運用強化に加えて、スパイ法の運用にも神経をすり減らす日々が続きそうである。
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