データに安全な場所はなし
中国全人代が政府による情報管理をまとめたサイバーセキュリティ法案を公表した。まだ、法案のレベルだが、通信の秘密をないがしろにし、個人情報への自由なアクセスを明文化するなどツッコミどころ満載である。同法の行き先から目が離せない。
玉虫色で中身のよくわからない規定
法案の内容はネットで公開されており、誰でも自由に読むことができる。同法案について、中国国民は8月5日まで意見を提出することができる旨を明示している。
社会公众可以直接登录中国人大网(www.npc.gov.cn)提出意见,也可以将意见寄送全国人大常委会法制工作委员会(北京市西城区前门西大街1号,邮编:100805。信封上请注明网络安全法草案征求意见)。征求意见截止日期:2015年8月5日。
この法案の内容だが、玉虫色である。何が何に該当するのかが明示されていない。例えば、総則8条あたりなどは、「公共秩序」や「公共道徳」、「民族軽視」や「テロリズム」などどういうものを指しているのかが曖昧である。中国政府の二枚舌外交に出てきそうなキーワードのオンパレードとなっている。
任何个人和组织使用网络应当遵守宪法和法律,遵守公共秩序,尊重社会公德,不得危害网络安全,不得利用网络从事危害国家安全、宣扬恐怖主义和极端主义、宣扬民族仇恨和民族歧视、传播淫秽色情信息、侮辱诽谤他人、扰乱社会秩序、损害公共利益、侵害他人知识产权和其他合法权益等活动。
法案では、ネット利用者のプライバシーをハッカーや情報販売業者から保護することを強化などをうたっている。この内容は以前にお伝えした別法案と構造がそっくりである(参考:中国ネットメディアの版権管理強化)。
政府の介入を明文化
同時に、中国政府がデータにアクセスし、これを入手する権限、国内法に違反するとみられる私的な情報の拡散を阻止する権限を強化することを明記している(同法案43条~50条の箇所)。また、ネットワーク機器は国務院が定める試験基準を満たすことが求められる。
注意したいのは43条である。
第四十三条 国家网信部门和有关部门依法履行网络安全监督管理职责,发现法律、行政法规禁止发布或者传输的信息的,应当要求网络运营者停止传输,采取消除等处置措施,保存有关记录;对来源于中华人民共和国境外的上述信息,应当通知有关机构采取技术措施和其他必要措施阻断信息传播。
中国国外から来た情報について、規制や転送を阻止する権利を記載している。今まで、暗黙的に遮断していたのを初めて明文化している。
ゴシップも取り締まり対象
習近平登場後、中国ではネット上の発言や言動に神経質になっているが、その中には根も葉もないゴシップ的なものも含まれている。実際に取り締まり対象となったものを調査した記事があるので参考にしたい。
だがこれまで、検閲当局は明らかに間違っている情報にはあまり神経をとがらすことはなかった。ウィーチャットへの数万件に及ぶ投稿を分析したシチズンラボは、検閲対象となった投稿のうち、そうした流言が占める割合を算出していないが、検閲された150件の投稿の中で「数十件」は単なるうわさや、うそ、憶測を含むものに分類される可能性があると言う。
中国では日本と異なり表現の自由や通信の秘密などが議論になることはないので、この法案はそのまま立法化されるものと思われる。今以上に中国のネットは、窒息しかねないほど窮屈な世界となりそうである。
コメント