中国版バカッター
当サイトで以前から指摘しているP2P金融。女子学生を相手に裸の写真を担保にする「裸ローン」が社会問題化。自殺者まででているので、一連の問題をまとめた。
P2P金融とは
裸ローンの前に、この裸ローンの母体になっているP2P金融について解説する。P2P金融とは、peer-to-peerローンの略で、個人同士が貸付・借受する金融のことである。
個人同士が直接やり取りすることもあれば、間にエージェントのような会社が存在することもある。銀行などのローンに比べると担保がほとんど要らない代わりに、利息が高いのが特徴だ。日本で言うと街金・ヤミ金の類である。
本サイトでは繰り返し、このP2P金融は火薬庫であると指摘している。
P2P金融の前提は、ある種の信頼性である。しかし、中国は政府自体がその成立課程からねつ造にまみれた国である。社会自体に信頼性というのがない。そのため、このようなP2Pは単にリスキーな投資または詐欺まがいが多いのだ。
銀行などであれば、政府が規制することである程度避けることができる。実際、中国政府は近年になって投資のリスクを消費者に説明する説明義務を負わせるなど制度化に前向きだ。
ところが、このP2P金融は新しい業態なので、政府の対応も後手後手になっている。猫も杓子もP2P金融やそれに類似したサービスを立ち上げている。一般国民がダイレクトに損害を被るケースも多く、危険な状態なのだ。
担保がヌード写真
さて、一般に融資をする場合、担保が必要である。銀行は硬い案件を取っていくので、P2P金融に頼ってくるのは不透明な投資か担保がない個人くらいである。もともとの資力が低い上に、貸出金利が高いので不良債権もかなり多いはずだ。当然、投資側は確実に回収をしていきたい。そこで回収側が闇金ウシジマくん的な担保として、ヌード写真や動画を提出させていたのがこの問題である。
ちなみに、闇金ウシジマくんとは闇金業者が主人公となっている漫画である。
どういう手口で写真や動画を提出させているかと言うと、これら写真または動画を提供する(しかも、身分証明書付きで)と利率の優遇が受けられるというもの。期日までに返済できなければ写真または動画をばらまくという脅迫つきだが。
返済できない場合は売春を迫られるわけだが、返済した場合でもデジタルデータは売買されるのでタチが悪いのだ。QQやWeChat上には、そのデジタルデータを売買するバイヤーがすでに跋扈(ばっこ)している。
百度上では当局がすでに対処をしているようで、関連画像や動画はメディアの引用資料ばかりだ。中国国内のTorrentサイトではキーワードが掛からない状態である。
Twitterではお祭り状態
中国当局が対応できるのは、統制が効く国内サイトやサービスまでである。海外サイトではちょっとしたお祭り状態になっている。特に、画像や動画をかんたんに投稿できるTwitterではタグ付きで一覧できる状態だ。
ハッシュタグは、裸条放款を略称した「裸贷」または「裸条」である。内陸系では前者、華僑では後者を使っているようだ。
連想されるのは、バカッターである。ネット上ではTwitter上に違法行為や迷惑行為を公開して自爆する人をバカッター(バカ+ツイッター)と呼ぶ。こういう人は想像力が欠如しているために後先考えずに行動するわけだが、日本にも中国にもいるということだ。
興味ある方はVPN使ってTwitter検索してみてはいかがだろうか。
補足:裸ローンの写真ファイル
検索をしたらアメリカの中華系クラウドストレージ上に最新版(を称する)写真と動画入りのアーカイブを取得。当サイトがポルノサイト扱いされても困るので直リンクは張らないが、「借贷宝裸条」などでGoogle検索するとまだダウンロードできると思われる。
追い詰められて自殺者まで
自殺したのは厦门华厦学院の二回生になる女子大生(20歳)で、彼女の借金総額はわかっている範囲だけで57万元(日本円 約900万円)に上るという。
この女子大生の両親は、2月下旬に女子大生から借金返済のためお金の都合を依頼され、21,800元を送金。4月1日にも4,000元を送金している。ところが返済額が足りていなかったようで、4月5日に突如裸の写真が母親の携帯に送られてきたという。
驚いた両親は、一時しのぎとして、さらに14,000元を送金するとともに、娘にどのくらいの借金があるのか、実家に戻り借金返済をするように促したという。その後、何度かやり取りをしていたのだが、4月7日から仕事の面接に行った先で、客室内を密閉して練炭自殺したようだ。
中國女大學生陷入裸貸事件,引發的各種家庭悲劇頻見報端。日前,福建一名大二女學生如夢,因為捲入了校園貸款,欠款57萬,而後她的裸照又被上傳到網路,不堪還債壓力和騷擾而走上絕路。
4月14號,如夢的父親熊先生說,女兒是廈門華廈學院的一名大二學生。因捲入校園貸款,11號,在一賓館燒炭自殺。至於如何捲入校貸,事發至今仍不清楚。
彼女は、学生向けローン(校园贷)少なくとも5社から借り入れをしていたようで、金額の大きい”今借到”を含む”闪银”、”现金贷”、”快乐花吧”や”现金卡”など複数のP2Pローンを利用していた。借り入れ回数は257回、借金の累計金額は57万985元。携帯や衣服、化粧品や海外旅行など浪費した経歴がないので、どういった経緯でこれだけの借金を重ねたのかが不明だという。
ただ、彼女は代理購入の生業をしていたとのコメントもあるなど、小さな借金が雪だるま式に膨れ上がって追いつめられたのだろう。
身元捜索合戦
ここまでは、普通のネットニュース。このニュースが流れたあと、中国ユーザによる人力捜索が始まっている。
おまけに、中国の各メディアが裸ローン時の女子大生が撮影した写真を掲載しており、そこからの身元捜索が行われているようだ。各報道機関が使っている写真は、内容保護のために写真を反転しているようで、元写真はこちら。
マスキングされているこの画像気がついたのだが、便箋には本名と住所が書かれているのだ。こうなると2チャンネルばりにスレッドが立ちそうであるが、百度上では関連語句がすでに検索禁止語句になっており、以下のように検索ができない。
学校名も割れているので時間の問題だと思うが、死人にむち打つ中国のメディアはすごいの一言である。ポルノサイト真っ青、過激なシーンを売りにしているニコ生と一緒に近々当局のさらに厳しい規制が入るのは間違いがない。
P2P規制へ本腰
中国当局がいままで野放しになっていたP2Pについて、いよいよ本腰を入れる。フィンテックとして持ち上げられてきたが、その実はサラ金なのだから当然である。
株価急落の要因となったのは、中国政府が発表した少額貸付オンライン業者への新規免許の発行停止と、営業地域の制限だ。中国では以前からオンライン貸付業者の金利の高さが問題視されており、負債人口の増加に政府は神経を尖らせてきた。業者らは学生や単純労働者など、信用履歴を持たない顧客らに少額融資を行っている。
中国共産党がもっとも恐れるのは、こうしたヤミ金が跋扈(ばっこ)して、庶民の不満が盛り上げることだ。その矛先が政府に向けられるのを徹底して封じてきたことからも伺える。
ただ、もともと正規の金融機関から借りられなかった人々が、さらに潜って融資を求めるのは古今東西の歴史から読み取れる。次に何が流行るのか?引き続きウオッチしていきたい。
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