大手中心にサービスを停止?
中国のストレージサービス(オンラインストレージ)が一斉にシステム切替を実施した。システム切り替えとしているものの、実際にはクラウドサービスの停止となっているようだ。
今回の報道はアスキーが発端。同メディアは以下のように伝えている。
具体的には、ファーウェイの「華為網盤」(ユーザー数1402万)、大手ネット企業である騰訊(Tencent)の「騰訊微雲」(同407万)、微博やポータルサイトで知られる新浪(Sina)の「新浪微盤」(同235万)、日本ではキングソフトで知られる金山の「金山快盤」(同103万)、クラウドストレージ専門の「115網盤」(同213万)、UCブラウザーで知られる「UC網盤」(同不明)が、6月30日で一斉にサービスを終了することを発表したのだ。
海外メディアもほぼ同時刻に似たような報道をしており、一部メディアでは規制強化が引き金になって、コスト増に耐えられない企業が市場から撤退したとしている。
もともと、中国のクラウドサービスは本業とは縁の遠い企業なども提供していたので、淘汰されたとも言える。
DropboxやGoogle Driveの使えない中国
もともと中国は、当局が関与できない海外のサービスやサイトを一律禁止している。いわゆる金盾と呼ばれる検閲システムである。そのため、DropboxやGoogle Drive(Google ドライブ)など世界でメジャーなサービスが軒並みブロックされており使うことができない。
Googleなどが2008年にブロックされた頃から、中国のユーザは国内のストレージサービスに移行していたが、その移行先が今回停止となったわけだ。中国ユーザは国内ストレージしか選択肢がないのに、これがさらに狭まったわけだから、まさに”ふんだり蹴ったり”である。
Vdisk, KuaiPan, and UC net disk – run by Sina, Xunlei, and Alibaba, respectively – have filled the gap left by the government’s censoring of international options, but now each one is partially or fully closing down.
Vdisk, KuaiPan, and other Chinese cloud storage providers shut their doors
注意したいのは、中国は昔から”上有政策,下有對策”がモットー。上(時の権力者)に政策あれば、下(庶民)は対策ありの国。今回のこれらのサービス停止も額面通り受け取れないということだ。よくよく見てみると、完全閉鎖ではなくて他のサービスへの切替を告示している。
たとえば、Vdiskは新しいドメインでのサービス開始を通知している。
亲爱的用户:微盘新版vdisk.weibo.com已发布,如果你用微博账号创建或绑定了微盘,请您直接使用新版;未绑定微博的用户,可继续使用vdisk.me
この通知では、weibo.comのサブドメインとしてvdiskを取得した上で継続するとしている。同じクラウドストレージである快盘も他のサービスへの移行を告知している。
对于绑定了小米帐号的快盘个人用户,数据将延期保留到2016年8月15日。我们将在2016年6月15日后,在小米手机MIUI文件管理器内提供迁移工具,便于用户将数据迁移到小米云。
中国人は、十徳ナイフやコミコミが大好きな国民性なのでWeiboや小米などのサービスに統合されて、窓口が一本化されるのは歓迎かもしれない。
データ管理強化の一環か?
中国政府はデジタルデータの国外持ち出しについて規制を発表している。これらクラウドサービスの統廃合は、デジタルメディアの管理強化の一環として実施されていた可能性がある。
もっとも、アメリカが発端となって広まったクラウドストレージだが、発祥地ではすでにコスト面の問題からサービスの統廃合や制限が次々と発表されている。
容量無制限のオンラインストレージをめぐっては、米Microsoftが提供している「OneDrive」の無制限プランや、米Bitcasaの無制限プランがかつて存在していたが、いずれも無制限プランを終了している(Bitcasaはサービス自体も終了し、現在サイトはアクセスできない)。
今回、統廃合されたクラウドストレージもすべて無料のものである。ユーザを一方的に失うのは好ましくないが、サービス維持にかかる莫大な費用に耐えきれなくなり放棄された可能性も否定し難い。
データ保管先のリスク管理を
今回のサービス停止は、中国で事業または生活する人にとってはいいタイミングだったのではないか。クラウドサービスというのは、中国に限らずいつまで続くかわからない。有料サービスはもちろん、無料のサービスであればなおさらである。
また、中国の場合、当局の政策次第で”今日はクロのものが、明日はシロになる”可能性がある。そのため、自社または自身の貴重なデータを安全・確実に保管する方法について考えてみてはいかがだろうか。
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