中国白タクアプリ『滴滴出行』が日本へ侵略

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本当の意味での”ぶっ壊し”がやってきた?

中国のライドシェアサービス最大手『滴滴出行』が日本へ正式サービスを開始する。日本の道路行政は業者寄りと言われて久しい。そのため歓迎する声もある。しかし、本当にそうだろうか?

白タク規制はいずこへ?

ここ2~3周間ほど寝不足が続いている。理由は我が家の王子さまが大陸パワーをフルスロットルで夜泣きしてしてくれるためだ。ハーフとは言え、おそるべし中国大陸パワー。

そんな慢性寝不足状態でも、目がさめるような衝撃ニュースが飛び込んできた。配信元は日経新聞で、以下抜粋である。

第一交通産業が中国の配車サービス大手、滴滴出行と2018年春にも連携する。背景には日本国内でひそかに浸透しつつある自家用車などを使った有料運送、通称「白タク」行為の存在がある。第一交通は地盤の沖縄などで中国人観光客を対象にした白タクを目の当たりにしてきた。新たな配送サービスが世界で台頭するなか、日本では自ら受け皿となってプロドライバーによる交通網を再構築する考えだ。

第一交通、「白タク」増加に危機感 中国・滴滴と連携

このニュースを見たときは、一瞬『えっ!?』である。

日本では道路運送法という法律があり、白タク行為を一律禁止している。これは同法が掲げる『道路運送の秩序を確立して、道路運送の総合的な発達をはかる目的』のためである。白タクが増加すると過当競争が発生し、サービスの低下や無秩序な交通量増加が懸念される。これを阻止するわけだ。

そのため2015年頃に世界的な白タクアプリの先駆者である米Uber(ウーバー)が日本で実験を開始したときも、国土交通省が同法を盾にライドシェアサービスをご破産に追い込んでいる。

米ウーバーテクノロジーズ(カリフォルニア州)が2月に福岡市で始めた一般ドライバーによる送迎事業「ライドシェア」の検証実験に対し、国土交通省は4日までに、無許可でタクシー業を行う「白タク」行為を禁じた道路運送法に違反するおそれがあるとして、ただちに中止するよう同社を指導した。

ライドシェアに中止指導 国交省、白タク行為のおそれ

『滴滴出行』は中国版Uberとして有名であるが、ビジネスモデルはUber本家とほぼ同じだ。中国大陸では豊富な実績を持ち、中国に暮らす日本人もよく使っているだろう。上海郊外やはじめて行く場所で、一見さんが白タクを捕まえるのに比べると安全・安心できる。

ただ、近年の訪日中国人観光客の急増とともに九州・沖縄を中心に白タク行為を助長するのが問題になっていた。また、Alipay(支付宝)やWeChat(微信)で支払うと観光地にほとんどお金が落ちないという政策上見過ごせない部分もある。

中国人が集まるグループでは白タクの客引きが絶えず、日本の警察も逮捕・摘発は続けているがいたちごっこになっているのは否めない。つい先日も中国人の白タクグループの摘発が紙面を飾っている。

急増する訪日中国人向けの違法ビジネスとして、在日中国人が割安で送迎する「中国式白タク」は各地で横行。配車予約や支払いをスマートフォンのアプリを通じて行っており、金銭授受の証拠がつかみづらく摘発が難しかった。府警は関空から白タクを追跡し関係者を割り出すなど、地道な捜査で逮捕につなげた。

「中国式白タク」摘発、訪日客向けに運行容疑 在日中国人4人逮捕 大阪府警

京都府警東山署は30日までに、中国人観光客向けに無許可でタクシー営業をする白タク行為をしたとして、京都市伏見区桃山町因幡、旅行会社社長、武宮博洋容疑者(49)を道路運送法違反の疑いで逮捕した。

同署によると、武宮容疑者は中国出身で、中国の会員制交流サイト(SNS)で乗客を募り、京都市内のホテルなどから二条城や金閣寺、奈良公園などの観光スポットを周遊。大阪市内のホテルに送り届けるなどし、2~6人のグループ客から1回当たり5万円前後を受け取っていた。

中国人向け白タク容疑 京都、代理店社長を逮捕

そんな中国版Uberが、専業タクシー会社と業務提携というわけだ。

中国版Uberの問題

このニュースが衝撃的である理由は、シェアリングサービスで日本が中国に出遅れていることではない。以前取り上げたファーウェイ(华为)のように、中国がぐいぐい引っ張れば日本国内も活性化するからだ。時代にそぐわない企業や制度が淘汰されるのは、むしろ歓迎してもいい。

中国モデルが世界標準になる日-VPN規制からカネまで
中国がデファクトスタンダードに 中国に進出している日本企業が、日本に出戻りしているという。そして、日本に進出する中国企業は、製品単発ではなくビジネスモデルを持ってくるようになってきた。中国とそのビジネスは大きな変換点にいるようだ。

では、どこが衝撃的なのか?

それは、この提携理由が記事通り白タク行為だとすると、今回の協業が『ヤクザの迷惑行為に困った事業者が、ヤクザにショバ代を払う』とレベルが同じであるという点である。前回の米Uberは遵法だったので国土交通省の鶴の一声で鎮圧したが、中国は法律を守らないので提携するというのではビジネスが混乱する。

中国Uberから見れば最大手とはいえ、選択肢の1つにすぎない第一交通産業をとりわけ優遇する必要がない。日本全国津々浦々の業者と手を組みたいはずだし、サービスから決済まで日本国外のプラットフォームなので、日本の法律・規制を遵守する必要もない。第一交通産業は顧客の紹介ソースは増えるかもしれないが、売上のほとんどを持っていかれるのではないか。

そもそも中国は十九大で大国を自称するが、南シナ海の領有権問題でわかるとおり遵法精神はない。強調しながらWin-Winなビジネスができるのであればいいが、習近平の演説でもわかるとおり一強を目指すはずだ。今後、類似の問題(直近では民泊だろうか?)で中国企業が好き勝手やったらどうなるかは想像に難くない。

万里の長城が必要なのは日本

日本政府関係者は、中国から謙虚に学んで”日本版金盾”を作ってはどうだろうか。

金盾は、電脳版万里の長城と呼ばれるが、その万里の長城は異民族が侵攻してくるのを迎撃・防衛するために建設されたものだ。自らの市場は開放しないが、他国の法律・規則を無視してやってくるのは夷狄とレベルが同じだ。そんな中国アプリから日本の秩序と国益を守るための仕組みが必要なのだ。

相互にギブアンドテイクできない相手と交流しても、百害あって一利なしである。

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