VPN規制で歓迎-踏み絵迫る中国外交

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トランプ米大統領が昨日11月8日から北京入りしており、北京とその周辺は厳戒態勢がひかれている。その訪中にあわせたのか、VPN規制が強化された。どうやら踏み絵迫るのが習近平流のようだ。

訪中に合わせたVPN規制強化

11月9日現在大手ニュースサイトはまだ記事化していないが、VyprVPNをはじめいくつかのVPNドメインが新たにブロックされた。登録ユーザ向けにお知らせメールをすでに発信しているVPNプロバイダもある。本件について担当者に聞いてみたところ、以下のように回答が来ている。

Our domain has now been blocked there as of this morning so customers in China will not be able to sign up. We assume the timing of the block is related to President Trump’s visit to China.

今回の大統領訪中は、2期目となる習近平政権にとって初のビッグイベントである。政治イベントが発生するたびに、中国のネットは規制が強化される。今回も訪中にあわせてブロックされたのではないか?と言うわけだ。

当の大統領は、紫禁城を借り切った待遇にご満悦のようでTwitterのトップ背景画像が習近平とのツーショット写真になっている。

大統領レベルが、わざわざ盗聴や検閲のリスクがある中国ネット回線を使うとは思えないが、来訪にあわせてブロックする中国当局も肝が太いとしか言いようがない。

Googleの各種サービス(GmailなりGoogle Mapsなど)やFacebook、Twitterなどは、アメリカのIT産業を華々しく象徴するサービスだ。これらが中国当局の非関税障壁により規制されている状況を抗議をしなかったら踏み絵を踏んだことになるのではないか?

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なお、冒頭のドメインブロック自体は、VyprVPNに限れば今朝(11月9日)に対応を終えており、正常にアクセスできる。イタチごっこいい加減止めて欲しいところだ。

書評:中国はなぜ軍拡を続けるのか

そんな中国の政治からくりを、人民軍切り口で解説している良書があるのでご紹介。

書籍名は『中国はなぜ軍拡を続けるのか』で、著者は東北大学大学院法学研究科教授である阿南氏。本書は300ページ強あるので読み応えはあるが、中国社会の背景から入って、フロントである中国共産党まで網羅されており、ぜひおすすめしたい。

著者が別媒体で、中国が抱える2つのジレンマについて鋭い指摘をしている。ジレンマの背景は、当サイトでも指摘しているが、古くて新しい問題である都市部と農村部の格差である。農民工の問題と読み替えてもいい。

中国では、都市部出身者と農村部出身者の間で、戸籍による制度的差別と巨大な格差が厳然として存在します。(中略)農民の自己負担が依然として非常に高くて家計を圧迫している、あるいは農民が出稼ぎ先の都市部の病院を利用できないといったことが中国国内でも問題視されています。

中国政治は人民解放軍抜きに語れない 2つのディレンマを抑え込む「共産党の軍隊」がカギを握る | JBpress(日本ビジネスプレス)

全人口のうち6割にあたる農村部や社会の低層部への福祉に当てるべき資金で、インフラや軍拡(近代化)をすすめてきたとしている。先日開催された十九大では、貧困対策をしてきたと自画自賛していたが、日本のマスメディアはこの経緯について一切指摘していない。

ちなみに、一人っ子政策も根底にあるのが貧しい農村人口の抑制である。経済発展がすすんだ今でこそ、農村戸籍にも光がさしつつあるのは別記事で言及しているとおりだ。

中国の農村戸籍は損なのか?
処女を400万円で売る少女 雲南省の18歳女子高生が、街頭で処女を売る広告を出してネットで話題になっている。この少女の身に何が起きたのか?

このように背景を解説した上で、2つのジレンマについて言及している。

第1のディレンマは、華々しい経済発展の裏側で、格差拡大に起因する社会内部の不満が、膨大な数の農民も巻き込む形で拡大の一途をたどっているということ。

(中略)

これに対して共産党指導部は、国内のディレンマの中和剤として排外的なナショナリズムを煽りました。しかし、これによって、中国自身の経済発展にとって不可欠なパートナーである各国との関係を不安定にさせてしまった。これが第2のディレンマです。

独裁政権が国内体制引き締めのために、ナショナリズムを煽って国民の視線を海外へそらすのは昔からある政治手法だ。中国では、この2つのジレンマ(国内抑制と国外との均衡)を抑えるために、人民解放軍が欠かせないわけだ。

本サイトが蛇足ながら付け加えるならば、ハード(物理)的な部分を人民解放軍(主に対外)と中国人民武装警察部隊(いわゆる武警、主に対内)が担って、ソフト的な部分を金盾など規制・検閲が担っているということだ。

中国共産党が最も恐れるのが人民だとすれば、当局の強権的手法やネット規制は今後も続くのは間違いない。

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