過当競争に終始する中国小売業界

終わりなき価格競争に突入した中国小売業界 ビジネス
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理念なき競争時代に突入

終わりなき価格競争に突入した中国小売業界

中国の家電小売店がチキンレースを始めている。安売りはもちろん、長期保証やプレゼントなどあの手この手で消費者を誘っている。日本同様に売り場面積の拡大、種類の増大とコストがうなぎのぼりだが、店舗には人影がそもそもない。過当競争の先にあるものはなにか?

中国小売を取り巻く環境

小売業界が冴えない。中国の小売規模自体は毎年増加傾向にある。2000年前半のような勢いはないものの、それでも年率4%前後と高い数字だ。しかし、どの程度もうかっているのか?という粗利でみると年々低下している。中国企業は詳細を明らかにしないので統計と公開されている情報から推測すると販売管理費(販売コスト)の上昇が要因と見られている。

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が12日に発表した「2015-2016年アジア小売・消費財業界見通し」報告書によると、今後2年で中国小売業販売量の年平均伸び率は8.7%、中国は2018年に世界最大の小売市場となる見込みだ。

中国小売市場が2018年に世界最大規模になる見込み PwCが発表 – ライブドアニュース

2013年前後から実体経済が急速に悪化しているせいか、店舗もあの手この手で消費者の紐に訴えかけている。おまけに、オンライン販売という店舗運営コストがゼロの強敵が現れており、販促費用が以前よりかさむのにそのコストを値段に反映できない状況が中国小売業界を襲っている。広告も日に日に過激さが上がっている。たとえば、大手小売が最近出している広告では、他店(全网としているのでネット含めて)よりも高ければ500RMB(約1万円)すぐにお支払いとまで謳っている。

終わりなき価格競争に突入した中国小売業界

本来ならばここで、仕入れ力の強化、流通の合理化、店舗や人員の整理などコストコントロールを行うべきなのだが、規制にがんじがらめになっている小売にそれができない。体力を消耗するまで頑張るチキンレースの様相を呈している。

自縛から抜けられない中国小売業界

価格での競争には限界があるので、差別化をするのが常套手段になるのだが、中国ではこぞって過剰サービスへと走る。先述のような1円でも高ければ保証するなどに加えて、iPhoneや液晶テレビのプレゼントなどである。ここで、素直にこれらのキャンペーンを遂行すればいいものを、中国人経営者は妙な気を起こす。これらプレゼントも正直やりたくないので、実際には実現が難しい条件などをつけるのである。例えば、1日100万円以上のお買い上げをした方が対象です…などである。新婚さんならともかく、1日で誰がそれだけの金額を消費するのだろうか?

当然、消費者もぬか喜びの先にこういうことをやられれば、学習をして次から来なくなる。結果、さらに過剰なサービスをしないと客が来ないという蟻地獄に小売業界全体がハマっているのである。

終わりなき価格競争に突入した中国小売業界

オンラインショップは、固定費が店舗型に比べれば安上がりな上に、近年は問題があれば即交換・即返品okなどを比較的素直にやっているので、だまし討の多い店舗型から急速にオンラインに軸足が映るのも無理は無い。

中国チェーン経営協会の郭戈平会長によれば、ネット通販業界からの価格圧力やコスト高を受けて、2013年はスーパーマーケット、百貨店、コンビニエンスストアなどの従来型小売企業の粗利益率が軒並み低下した。

中国:従来型小売企業の粗利益率低下、ネット通販人気が経営圧力に | newsclip (ニュース、ASEAN、その他のニュース)

価格競争の先にあるもの

こういった過当競争は、業界を不健全化する。日本の携帯電話が例としてあげられるだろう。

巨大な3社とその他サービス業者の間で繰り広げられたユーザ争奪競争は、料金体系を複雑怪奇なものにし、携帯端末の本体料金は0円なのだという消費者の固定概念を植え付けてしまった。消費者は混乱し、サービス業者は疲弊し、端末メーカもほとんど儲からず世界の市場から置き去りにされてしまった。

同じように、中国政府は国内市場と国内メーカ・小売保護のため、一層強固に彼らを守ろうとするかもしれない。相変わらずこの業界は参入障壁が高く、一向に変化しない中国政府の態度に、中国市場は魅力がないと見切りをつけるコラムも多々最近見受けられる。

中国の量販店には、見えない壁が存在する。テレビの場合、10インチから85インチまでの商品を揃えないと店頭で販売させないという暗黙の縛りがあるのだ。これでは日本勢は得意の高付加価値製品に特化できず、競争力を保てなくなる。

背景にあるのは国産ブランドの保護だ。中国にはテレビのローカルブランドが20社近くもある。

中国市場で甘い夢を見てはいけない 日中関係「改善」の兆しはビジネスの好機なのか? | JBpress(日本ビジネスプレス)

だが、保護できる力を政府が失った時が悲惨である。メーカ、小売、消費者の阿鼻叫喚地獄へと変えてしまう。健全な市場を作り、全体の利益を図るためにも、中国市場の改革開放が必要であろう。これら要望は、各国各業界から再三挙がるがほとんど実行されていない。産業構造の変換を中国政府が図るのであれば、過保護な現在の政策を変える勇断が求められている。

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