ネット民主主義は、はるか彼方へ
ネット世界の巨人 Google(グーグル)が中国への復帰を本格化させている。中国ユーザにとっては朗報である。ただ、Googleが将来同国のユーザに提供するサービスは、その昔のGoogleと違うものかもしれない。
ウェブサイト=Google
昨今のウェブサイトはGoogleと切っても切れない関係にある。
その理由は、世界でもっとも使われている検索エンジンがGoogleで、そのシェアはなんと約9割(全世界)。世界のネットはGoogleがつないでいると言っても過言ではない。
そんなGoogleが、中国の検閲システムを組み込んだ検索エンジン-コードネーム”Dragonfly(ドラゴンフライ)”を開発しているようだ。
Since spring 2017, the internet giant has been developing a censored Android search app to launch in the country as part of a secretive project code-named Dragonfly, The Intercept revealed on Wednesday.
Lawmakers Pressure Google Over “Deeply Troubling” China Censorship Project
開発している”ようだ”と表現している理由は、Google自体は本件についてコメントを控えているためだ。将来の計画については、ノーコメントとのこと。
Not comment on speculation about future plans.
ただ、Googleが中国マーケットに復帰する動きは、今回がはじめてではない。
今から8年前の2010年に、同社が中国マーケットから検索エンジンを撤退させた(開発拠点は残して、検索エンジンを香港に移動)あとも、ことあるごとに中国への復帰をちらつかせていたからだ。
そんな同社は一刻も早く中国へ復帰したいのか、ついに撤退時の理由であった検閲を受け入れて戻ろうとしている。
ネットの巨頭が次々と中国へ傾倒
中国へポチ化しているのは、Googleだけではない。
同社とスマホを二分するアップルも同じだ。アップルは2016年頃から、当局に不都合なアプリを次々と削除。今年2018年春から、ユーザのプライバシーは二の次。ユーザデータごと中国にデータセンターを移管している。
そんな中国にすり寄る両社ともに共通点がある。それは、中国をのぞいた主要なマーケットでパイを食い尽くしているということ。
SNSの巨人であるFacebookも、Googleやアップルほどではないが、既存市場でこれ以上シェアを取るのは難しい。そのため同社も中国市場へのラブコールを続けている。先月も、香港経由で中国に子会社の法人登記をしたものの、登記が削除されている。なかなか恋愛は成就しそうにない。
在讨好中国方面,Facebook历经十年的努力,似乎进展不多,但如今,这家社交网络平台终于在中国获得了一个正式身份——至少暂时如此。
これから大きく伸びると大手を振って株主にアピールできるのは、巨大な中国マーケットくらいなのだろう。それだけに、各社ともにのどから手が出るほど欲しいわけだ。
米中双方から袋叩き
と、ここまではよくあるストーリで、この先がおもしろい。
まず、本拠地であるアメリカでは、同社の動きに議会がすばやく反応。牽制(けんせい)している。
米中がここ数ヶ月争っているのは、単に不均衡な貿易だけではなく、次世代の覇権を争っていると言われている。その中でも、アメリカが一歩リードするIT分野において敵と肩を組むとはなにごとか!と後ろ蹴りされているのだ。
米アルファベット傘下のグーグルが中国市場向けに検閲済みバージョンの検索エンジンを開発しているとの報道を受け、米共和、民主両党の上院議員のグループが同社を糾弾した。
技術者の間でも同社の二枚舌ぶりがなかなか評判である。もちろん、”悪い意味”で。
Googleは同社のサイトに『Googleが掲げる10の事実』を掲げていた。その中に『ウェブでも民主主義は機能する』というのがあった。『世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること』をミッションとして掲げる同社は、検索はユーザの利便性を第一に考え、意図的・恣意的な操作はするべきではないというわけだ。
ん?検閲はそれに該当しないのか?となる。おまけに、この『Googleが掲げる10の事実』というページはいつの間にか削除されている。
そんな苦境に立たされているGoogleに、中国当局は熱いラブコールを送る。
中国共産党の機関紙、人民日報は、(中略)同社の再参入を歓迎するとした論説を掲載した。同紙は、アルファベット傘下のグーグルが2010年にハッキングや検閲を理由に中国から撤退した決定について、「中国本土におけるインターネットの発展に参加する絶好の機会を逸することにつながった大失敗だった」と指摘。
ただ、中国も手放しに歓迎しているわけではない。あくまでも『同社が中国の法律に従い、国内でインターネットを管理する当局の権限を認めるのであれば』である。Googleがどちらに寄っても万々歳とはならなそうだ。
これはユーザにとっても手放しで喜べそうにはない。バックドアが仕掛けられたGoogle。そんなプライバシーもセキュリティも保証されないサービスが追加されて、いったい誰が喜んで使うのだろう。
同国ユーザが、自由の象徴だったGoogleに失望する様子が目に浮かぶ。
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