日本と異なる部屋選びの基準はコレ
中国へ赴任や駐在が決まったら現地の生活拠点、すなわち部屋探しが始まる。しかし、不動産のクオリティが高い日本の感覚で、中国の部屋を探すととても痛い目にあう。日本とは異なる基準で部屋選びが必要なのだ。そこで、注意するべき7つを紹介する。
中国の賃貸、基本のキ
中国は国土が広く多民族が共存する国家だ。春節(2月頃)のとき、同じ中国でも北はマイナス30度近い極寒、南はアイスを食べたくなる30度オーバようなレベルである。地方ごとの習慣や風習も異なる。習慣や風習が違うと商習慣も異なるのは想像できるだろう。
ただ、比較的発展している沿岸部であれば、共通する部分もある。
1.礼金不要、敷金は基本戻る
日本では最近減りつつあるものの、依然として残る礼金という商習慣。中国人が日本で生活を始めたときに、一番理解しがたい洗礼その1でもある。
しかし、中国ではそういう商習慣はない。また、退去時のハウスクリーニングなども取られることはほとんどない。敷金は、雑費(未払の水道光熱費やインターネット回線の解約など)を差し引いた分が戻るのが普通だ。そのため、礼金はなし・敷金は基本戻ってくると考えていい。
礼金もなく、敷金からハウスクリーニングを取られることもない。その代り、入居前の状態は以前の入居者の退去時のままなのだ。そのため、掃除は自前でやる必要がある。
高額物件(月1万元を越えるようなマンション)などでは、それをコミコミの場合もある。会社借り上げなら気にしなくてもいいが、自分で借りる場合やトラブル防止のため覚えておくと便利だろう。
2.同じマンションでも内装バラバラ
日本は戸建てはもちろん、マンションでも断熱材を敷き詰めて夏は涼しく冬は暖かい部屋が多い。路線や道路沿いの窓ガラスであれば防音加工、露結加工されたものが一般的である。
しかし、中国でそういった物件に会うことはまずない。日本と異なり、内装がない状態でマンションを購入するため(つまり、コンクリートの打ちっぱなし)、内装=大家の趣味になるのだ。
同じマンションでも住み心地に雲泥の差があるのは”よくあること”なのだ。
3.家具・家電が付いている
日本の賃貸は、付属物(エアコンやカーテンレール等)だけの部屋を貸し出す。そのため、退去時に原状回復義務がつきまとう。
しかし、中国の物件は、家具が一式・家電もそろった状態が一般的だ。前の入居者が置きっぱなしにするものも多数あるケースも多い。マンスリーマンションのようなものである。
手ぶらで入居が可能だが、自分の生活習慣にそった部屋を見つけるのは難しいかもしれない。
部屋探しで気をつける7項目
では、実際に部屋探しをするとき、気をつけたいポイントをあげていく。私の経験(上海と深圳、広州)に基づいているので、参考になるはずだ。どれも仲介業者や大家任せお願いするのではなく、自分の目で手で確認するのをオススメする。
1.水回り(排水)に問題ないこと
中国で部屋を借りて、ほとんどすべての人が遭遇するトラブルが水回りだ。私は入居前に次のことを確認する。
- 洗面台やお風呂に水をためてみて、抜いた時につまらないかどうか
- トイレットペーパーをまるめてトイレに流してつまらないかどうか
- 洗面台付近、お風呂の付近に排水口が設置されているかどうか、流れるかどうか
日本ならばありえない、くだらないところである。しかし、入居してからこういったトラブルに巻き込まれると最悪だ。
なお、過去の経験では、確認したのに入居直後にトイレがつまって便器ごと交換してもらったことがある。入居後に業者がやってきてガチャガチャやると正直つかれるので、入居前に解決しておきたい。
2.給湯器の湯量が十分かどうか
ガス湯沸かし器が普及している日本ではコレもありえなことだ。
まず、中国では湯船につかってゆっくり…は難しい。湯船がある部屋自体が少ないのだ。特中国の北方は歴史的に水不足に悩む地域なので、湯船はまずない。
お風呂に入れないのであれば、十分に熱いシャワーでたっぷりと洗いたいはず。そこで、この問題が出てくる。防災や大家の好みなど理由はそれぞれだが、ガス給湯器がなく、電気式のケースが多い。
その場合に厄介なのが、加熱できる水の容量だ。容量が小さいと、家族全員でシャワーを使おうにも、途中までつかってお湯切れ…となるわけだ。
3.キッチンまわりの設備に問題がないこと
中国に単身駐在ならば、毎日外食というのもあるかもしれない。それでも週末や夜中に小腹が空いてキッチンを使おうとしたら使えない…というのはがっくりである。併設されている設備がちゃんと使えるか確認しよう。
特に使用頻度の高い次の機材は要注意だ。
- ガスコンロ … 点火で必ず使う着火部分が摩耗していないかどうか
- レンジフード … 油まみれになってないか
- 冷蔵庫 … たまに古いタイプで騒音発生器になっているものがあるので注意
大型設備で問題がある場合は、入居前に交換してもらうよう交渉する。さもないと、あなたの責任になるのだ。
4.窓の外から侵入ができないかどうか
そんな馬鹿な!と思われるかもしれないが、次のことをよく覚えてほしい。
中国で泥棒や強盗が入りやすいのは、最上階またはその次の階である。
これは、屋上が物干しスペースになっているマンションが多く、出入りが自由になっていることが原因である。また、金持ちほど高層階に住むケースが多いため、それを狙う泥棒が多いのだ。
え?最上階の部屋にどう侵入するのか?
それは、屋上からロープを垂らして入ってくるのだ。スパイダーマンである。
スパイダーマンは正義の味方だが、中国のそれはただの泥棒だ。
また、あまどいや非常階段が隣にあったり、渡り廊下のような構造の場所はすべて避ける。すべて進入路になるからだ。余談だが、私の部下が15階に住んでいて家財道具ごっそり盗まれるという経験をしている。
もちろんだが、2階や3階などの低層階は論外だ。
5.騒音発生源
マンションの近くに以下のようなものがある場合、避けた方がいい。
- 2車線以上ある交差点
- 高速道路
- 地下鉄の予定線
- 建設中または作りかけのビルやマンション
日本と異なり、中国の工事現場は朝夕・週末お構いなしだ。朝は7時から夜の10時まで、週末も関係なく工事をする。ゆっくり休みたいときに、隣に騒音発生器があったらたまらないだろう。
道路については、交通マナーがアフリカ諸国並に悪い。一日中クラクションの嵐になるので避けないと騒音に悩まされるだろう。工事中のビルやマンションを避ける理由は、騒音問題に加えて、倒壊や爆発の危険性があるので注意したい。
過去に建設中のマンションが倒壊して他の建物にぶつかったり、放火や爆発するという事故は枚挙にいとまがない。
6.近くに小区がある
小区は、昔からその地域にある居住地域で一般に低層階の住宅である。
こういう場所は住民が古くから住んでいることが多い。そのため、よそから来た人間がウロチョロしているとこっそり見ているケースが多い。
また、地区ごとに自警団がいることが多く、こういう場所の近くは治安がいい。
例外は取り壊しが決まっている小区である。そこには日本の地上げ屋と同じく居座って条件闘争する輩が増えるのでスラム化することが多い。ここは仲介業者経由で大家に確認するといい。
7.ドアが二重になっていること
これはとても重要。
窓から入られる心配を取り除ければ、あとは正面突破を防止するだけだからだ。ドアが頑丈で、二重になっているのがいい。日本では数年前から普及し始めているシリンダー鍵も、中国では相当前から標準の鍵として使われている。それだけ泥棒が多いのだ。
なお、二重ドアのイメージはこういうもの。ドアの中にドアである。
マンションによっては、各門と棟ごとに警備員と監視カメラがある。しかし、これらはまったく信用出来ない。
まず、警備員自体が窃盗団とグルになってごっそり盗難することがあるからだ。エレベーターにセキュリティカードが付与されていて、指定階以外止まらないというのもある。しかし、これもあてにならない。壊れて放置されることも多い上に、火災発生時にロックが正常に解錠されなければそのまま人間チャーシューのできあがりだ。
やはり物理的に二重ドアになっていて、丈夫な合わせ扉のほうが安全で信用できる。また、この手のドアは内側からロックをかけると、外から鍵を持っていても開けられないタイプが多い。家族が入ったあと、完全にロックすることで、就寝中もぐっすり眠れる。
中国部屋探しのまとめ
中国で内装や設備に問題があると、修理や改装のために何日も業者が出入りする。業者自体がいつなんどき泥棒になるかわからない上に、中国の業者はやったらやりっぱなしなのだ。つまり、ゴミや破片が散らばったら、それを掃除するのはあなたなのだ。
まずは、最低限の設備に問題がないかどうかを確認する。その上で、自身を守るためのポイントがクリアできていれば、最低限クリアだろう。
高級物件でよく見るケーブルテレビやジムのあるなし、空気洗浄機などは、会社購入や大家に頼んだり、外ですますことができる。なくても死んだりしない。
また、現地に主婦業やる場合の買い物場所も、中国ではデリバリーが発達しているので気にならない。タクシーや社用車つかって買い物するのも手である。
自分と自分の家族を守るための方法を確認すること、それが一番重要だ。セキュリティについては別記事でもまとめているので、こちらを参考にしてほしい。
皆さんの参考になれば幸いだ。
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