マーケティングの新しい形
中国には日本で見当たらないマーケティング手法がいくつかある。そのうちの1つにSNS+試供品提供を自動化したモデルがある。国土が広く、モバイル端末普及率が都市部で90%という中国ならではの手法なので、ご紹介。
現場にスタッフが要らない
上海の地下鉄には自動販売機にソックリな試供品提供マシーンが設置されている。場所は複数あるのだが、今回撮影したのは2号線沿いの南京東路という駅。
右側にはタッチパネル、左側には試供品が並んでいる。参加方法はとてもシンプル。
- WeChat(中国語名:微信)でこの試供品マシンに印刷されているバーコードをスキャン
- WeChatのサブスクリプション(定期購読)申し込みをする
- 試供品提供のパスワードがもらえるので、それをベンダーマシンに入力
- 試供品ゲット!
日本の醤油だ!と喜んで私と嫁でやってみたのだがそれがうまくいかない。5分ほど試してみて最後に挫折してしまった。
中国でPDCAを効率的に回すマーケティング手法
この手法の強みは、次の3ポイントだと考える。
- 24時間365日実施できる。待つのが嫌いな中国人の基質にピッタリ
- 興味をもった顧客へのDMや購入した顧客への継続的な利用(醤油を使ったレシピの公開など)を一括して実施できる
- 中国の広い国土にベンダーマシンを配った分だけ効率的に実施ができ、コストが安上がり
試供品を大量に配るやり方は、実際に手をとって試してもらうという点で消費者に与える印象は強い。ある調査では、購入決定に最終影響を与えたもののうち50%近くが「見たり聞いたり」したものだという。日本の醤油は中国のそれとは異なり、海外渡航が難しい中国人にとって、実体験はインパクトが強いだろう。ただ、試供品をもらってもアンケートを返すことは少ないので、効果測定が難しい。
その点WeChatでは、知らない人への広告の発信、興味をもった人への試供品の告知、活用のレシピを載せて、実際の購入方法と割引キャンペーンまでの流れを1つのアプリケーションでできる。試供品を取得した人の数を数えれば、クリック数で割ることで実際にどの程度の人が行動したのかがわかるし、購入クーポンを発行することで売上にどこまで結びついたかも測定できる。
さらにこの広い国土と多い人口を相手に、営業マンやキャンペーンスタッフを雇って…と言うのは、費用がかかりすぎて非現実的だ。機器の設置を増やしただけ大規模に実施できるこの手法は、ランニングコストも非常に低い。日本ではスマホの所有率が低いので難しいかもしれないが、日本でもそのうちこういうキャンペーンが出現するのだろうと予測している。
コメント