中国特有のトラブルに対処
VPNは枯れた技術で、政府や企業から個人まで幅広く使われている。中国では規制の問題やインフラが弱いのでトラブルが起きやすい。速度が遅いかも?と思ったときの注意点をご紹介。
VPNの基本
VPNは離れた場所にあるネットワークを接続する技術である。本社と国内外にある営業拠点や工場を一つのネットワークとしてまとめて、ネットワーク上のリソース(ソフトウェアやデータベース)を扱うようにする。たとえば、上海にいながら日本の社内報(イントラネット)へアクセスできるのもこの技術である。
ただし、中国でVPNという場合、上述のような一般的な使い方のほかに、もう1つある。接続先のネットワークが閉じておらず、接続先サーバからさらに外部へアクセスができる。そのため、中国で規制されているサイトへもアクセスができるようになる。これが本サイトでよく取り上げるVPNの利用例である。
そのVPNで速度が出ない場合、おおむね3ヶ所をチェックすると原因が特定できる。
- VPNの種類(プロトコル)
- ネットワーク
- 利用環境
それぞれ詳しく見ていく。
1.VPNの種類
VPNは仕組みの名称で具体的な中身ではない。”車”と言ってもトヨタやホンダ、スバルなど各メーカがあるように、VPNにも種類がある。ネットワークの発展や用途にあわせて、いろいろな種類がある。有名なものとしては…
- OpenVPN
- L2TP/IPsec
- PPTP
- MS-SSTP
- SoftEther
それぞれ技術開発の背景があってメリット・デメリットがある。たとえば、暗号化を強化すると情報を盗み見される危険性が減るが、速度が低下する。
注意したいのは、中国ですべてのVPN種類が使えるわけではない。まず、OpenVPNは、ほぼ使えない。通信自体が規制されているようだ。同じくSoftEtherについても一部規制されているようで接続が確立できない場合がある。プロトコルの詳細は下記記事がすばらしい(ただし、マニアックな内容であるが…)。
特定の業者やプロトコルが規制される場合もあるので、一概には言えない。ただ、経験則から言うとPPTPは比較的安定して使える。
2.ネットワーク
ネットワークと言うのはバズワード(あいまいな言葉)で、いくつかに分解できる。中国からYahoo! Japanに接続する場合であれば…
- PCやスマホ → (自宅の)ルータ
- ルータ → モデム(や回線終端装置)
- モデム → 各地域のネットワーク基地局
- 基地局 → 金盾(規制システム)
- 金盾 → 海外ネットワーク
- 海外ネットワーク → サーバ(目的地)
このうち個人が努力して回避できるのは1,2,3,6番目である。
自宅の接続を見直す(1番目,2番目)
日本では忘れがちだが、中国製品は玉石混交である。PCやスマホが接続するルータ、ルータとモデムをつないでいるケーブル、また各機器が使う電源タップが不安定であると接続が安定しない。
特に疑ったほうがいいのは、ケーブルとルータだ。日本で買えるケーブルもモデムも高品質なので、ほとんどの場合何を使っても誤差のレベルだ。
この結果を見る限り、現時点ではLANケーブルのカテゴリーごとの差というのは実は民生用途の1Gbps程度で使う場合、大して体感できるほど差が無い、ということになります。
ところが、中国の製品は品質管理が弱い。
メーカごと、生産ラインごとのばらつきが大きい。小さな工場が作っているLANケーブルは安いが、品質が悪いため信号反射(ノイズ)が起きやすい。ルータも同じだ。基盤など作りがいい加減だと速度劣化や接続不安定を引き起こす。ルータの場合、制御ソフトの品質が悪いと、大幅な速度劣化起こす。
接続業者を見直す(3番目)
中国にはネットワーク業者が複数ある。業者は一次回線業者と、そこから回線を借りている二次回線業者にわけられる。
格安業者(年間利用料が500RMBポッキリなど)は、後者である。こういった回線は、多数のユーザと共有しているので、ユーザがよく使う時間帯(夜の6~10時前後)の速度劣化が激しい。また、ネットワークの接続順序が低いので、国内+規制で速度が厳しい。
VPN業者を見直す(6番目)
中国国内から海外ネットワークに出たあと、どの業者を使うかでも速度差が出る。VPNの基礎力と言えるインフラ周りを速度測定した結果を取り上げた記事がある。こちらを参考に比較すればいいだろう。
なお、どういったVPNプロパイダーがあるのか?は、以下の記事で詳しく取り上げているので、こちらもチェックして欲しい。
3.利用環境
ネットが遅いと外に原因を求めたくなる。しかし、灯台下暗し-使っている端末も悪かったというケースも多々ある。複数の原因が考えられるが、まとめたものを別記事にしてあるので、こちらを見てほしい。
ほかにも中国製アプリを入れたために設定が矛盾を起こし速度が出ないケースなどもある。少々面倒だが、定期的にパソコンや端末を工場出荷状態に戻すのも手である。
参考になれば幸いだ。
コメント
Sanさん
調査結果ありがとうございます。
聞いている内容だけ考えるとインフラベースのお話のようですね。
ご自宅でキャリア変えてモバイルのデザリングやってみて速度が回復するようであれば,ほぼ間違いないでしょう。
ディズニーレベルになると国際企業回線なので何か優遇受けている可能性もありますが…。
コメントありがとうございます。
先日も上海ディズニーに行きましたので調べてきました。
ランド内はたいていの建物内でのWifi状況が良く、上りも下りも杭州接続で100Mbpsという速度が出た場所もありました。(China Telecomと表示されていました)
HopemoonのVPNで日本につなぐと5Mbps程度でしたので、やはりベースの速度がかなりあると、VPNでのLossが大きくても何とかストレスなく接続可能になるのではと感じました。
時間帯は昼頃です。また行った際にはいろいろと試してみます。
中国ではVPN以外のネット規制回避方法もあります。オープンソースプロキシソフトShadowsocksと強化版ShadowsocksR,安定性はvpnより良い。
Shadowsocks + serverspeedはよく使えるパタンです
Sanさん
ディズニーランドで速かったとありますが,これは園内のWifiでしょうか…?
もし可能であれば,覚えている限りで構いませんので試した場所・時間帯・キャリア・vpnの名前列挙してもらうのはどうでしょう?
ひょっとすると疑わしいところが見えてくるかもしれません。
早速のご返信ありがとうございます!
モデムは国内で40Mbps出ているので疑い辛いなと思ってもいたのですが。
電信が詰まりやすいというのは確かにそうかもしれません。
提示いただきました1~3の問題につきましては、家での劣化が激しく、特に今日行ったんですが上海ディズニーランドが速すぎて驚きました。
時間帯や接続場所を変えると変化はありますが、大きくはない印象です。
特にVPNを通して海外接続したときには0.2~0.5Mbpsがザラです。
家の回線は大家が契約しているので、簡単には変えられそうもありません。
以前は同じ電信回線でHMA!で10Mbps出ていましたので、復活が待ち遠しいです。。。
Sanさん
コメントありがとうございます。
それはモデムが原因です!
と,言いたいところですが切り分けしたほうがよろしいでしょう。
1.速度が劣化する場所はどこか?(家だけですか?)
2.時間帯を変えた場合,どうでしょうか?(特に平日の早朝または週末の午前中)
3.Speedtest.netなどにvpnなしで場所と時間帯を変えて接続してどうでしょうか?
記事にも書いた通り中国のマンションは屋内配線が酷いので,モデムよりも配線を疑う方がいいのですが,ここは引越しでもしない限り解決できません。
ここが解決している場合(国内だと40Mbps出ているということなのでこちらだと思いますが…),プロバイダの可能性があります。
経験則から言うと中国電信は詰まりやすいです。ユーザが多いからだと推測しますが,これを変えることできればベストです。
#年間契約なので二重契約状態になりますが,ネットできないのは腹ただしいかと思うので,どちらを選ぶかですね(笑)
私の場合,同じ時間帯・場所でもチャイナユニコムのiPhoneでギャザリングしたらあっさり解消した経験があります。
ご参考までに…。
いつも貴重な情報をUPいただきありがとうございます。
上海在住で大変助かっております。1点質問させてください。
HMAが不調になってから、HOPEWMOONで凌いでいる状況ですが、如何せん速度が全く出ません…。試しにVyprなども試しましたが多少良くなるレベルです。
(日本接続で0.5mbps程度、台湾・香港でも同レベル)
中国電信でVPNなしの中国国内接続では40Mbps出ています。
しかし出張先やディズニーランド内のWIFIでHOPEMOONをつなぐと、5Mbps程度出ることが多く、家のモデムを疑っていますがいかがでしょうか。
モデムは中国電信と書かれた大家供給の白い一般的なものです。
アドバイスございましたら是非よろしくお願いいたします。