すべてのVPN規制を中国当局が否定…は本当?

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すべてのVPN遮断するとの報道を受けて、中国当局(工業情報省)が本方針を否定したとする新聞報道が出回っている。果たして本当だろうか?

ニュースソースはいずこ?

先週、中国当局がすべてのVPNを遮断するという報道はかなり衝撃的だったのではないだろうか?本報道を受けて、当サイトでも実現性の可否を検討し、取り上げた。詳細は以下の記事に譲るが、個人向けVPNを全面禁止するのはやや難しいというのが当サイトの見解である。

中国政府がついに強硬手段に打って出た。国内の大手キャリア3社に対して個人利用のVPNアプリが行う通信を、すべて遮断するように要請(命令)してきたのだ。だが、技術的に可能なのだろうか?

今週末になって中国のインターネットで、VPNが全面規制するとの報道は正しくないというニュースが流れ始めた。産経新聞も取り上げており、以下のように報道している。

中国工業情報省は13日までに、海外へのインターネットアクセスに広く使われている仮想私設網(VPN)接続をめぐり、政府が国営通信会社に対し、来年2月までに個人利用を停止するよう求めたと報じられている問題について、「個人利用の全面的な禁止は行わない」とする声明を発表した。

個人利用の全面禁止行わぬ 中国政府 VPN接続で声明 – SankeiBiz(サンケイビズ)

『声明を発表』としているが、中国工業情報省のサイト(中华人民共和国工业和信息化部)をよく見てみたが、そのような声明発表は掲載されていない(2017年7月16日現在)。

ニュースソースを探してみたのだが、以下の報道を元ネタにしたのだろうか?

工信部否认要运营商禁止个人VPN业务:规范对象是无资质者_10%公司_澎湃新闻-The Paper

記事の内容は、澎湃新聞の質問に対して当局が回答しているというもの。現在の中国メディアは、勝手なニュースソースを使えず政府に握られている。メディアが流すニュースは、程度の差はあっても中国政府が操作しているとすれば、まったくのデタラメではないかもしれない。

個人ユーザのVPNは禁止されないのか?

この報道では、新聞記者に対して中国当局が『今回の決定は国内・外資企業および”広範囲なユーザ”の正常な越境アクセスには影響をしない』としている。ただ、内容が少し気になるのだ。

工信部在给澎湃新闻的回应中提到,今年1月下发的《通知》中关于跨境开展经营活动的相关规定,不会对国内外企业和广大用户正常跨境访问互联网、合法依规开展各类经营活动造成影响。

本記事も含めて、広範囲なユーザ(广大用户)を大衆ユーザと捉えて、個人利用を禁止しないと読み替えているのだろうか?

ところが、この回答に続く次のくだりを見てほしい。

《通知》规范的对象主要是未经电信主管部门批准、无国际通信业务经营资质的企业和个人,租用国际专线或VPN违规开展跨境的电信业务经营活动。

『今回の通知における対象は、電信主管部が批准していない企業および”個人”が利用する規定違反のVPN』であるとしている。前段では广大用户としているのに対して、後段では個人と明記している。

中国当局が一方的に約束事(特に書面化したもの)を反故にすることは少ない。今回も言葉を言い換えて表現しているのには、意味があるのでは?と考える。つまり、前半の影響が及ばない範囲に個人(一般大衆)は含まれず、後半で明言している個人の違反VPNは対象であるということである。

ノーベル賞受賞者ですら存在を抹殺

中国政府は当局が好ましくないと考えるものは徹底的に封じ込めをする。

たとえば、先日死去した劉暁波氏について、検索禁止用語にされている。さらに、同氏についてのSNS上の投稿は徹底的に削除されている。

A search for news of his death on Chinese search engine Baidu turned up no results and China's Twitter-like Weibo blocked the use of his name and initials “LXB”.Even the most obscure homages to Liu on Weibo were removed.

The Chinese version of the Global Times editorial was not published online.

China Censors Scrub Emoji Tributes To Nobel Winner Liu Xiaobo

中国は、一度決めた方針を貫く正直な国である。金盾プロジェクトも、中国政府の信念の元運用されている。

中国は改革開放で経済は発展した。しかし、今なお社会主義の一党独裁国家である。体制維持のために中国のインターネットは、日本では考えられないような規制がつきまとう。そんな中国インターネットについて解説する。

個人ユーザがVPN使って、当局が好ましいとは思わないコンテンツにアクセスをさせても、中国にはメリットがない。たとえば、当局が言明した”広範囲なユーザ”とは、重点産業として指定されているITなどで見られるSOHOのように個人事業主などを指しており、個人ユーザは禁止対象なのではないか?

結局、どうなるのか?

中国政府は、最初に大風呂敷を広げたあと、少しずつ部分改定するのが得意である。約束破りにならないように、うまくやるのだ。記憶に新しい2014年の”雨傘革命”の引き金となった”普通選挙”の解釈もそうだった。

中国vs香港、現実味を帯びる「独立論」〜若者はこうして大転換を起こす(倉田 徹) | 現代ビジネス | 講談社

今回の報道でも個人ユーザのVPNについて、影響範囲には触れられず、禁止は言及している。つまり、春先の規定にあるとおり海外のVPN業者はグレーゾーンでアウト、国内の企業活動にかからないVPNについては許可を与えず、批准されていない違反VPNとして取り締まる。

中国当局が今年の春から1年弱かけて、ネット規制回避で使われるVPNの全面排除に乗り出す。中国人はもちろん、在中外国人のネットワーク制限は厳しさを増しそうだ。

結局、来年2月には大規模な規制が始まると見たほうがよさそうだ。