反政府派はすべてテロリスト
中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が12月27日に、昨年から審議してきた「反テロ法案」を成立させた。習近平以来続いている締め付けがより強化されるのは必死の情勢だ。
バックドアの義務化
今回の反テロ法案(中国語名:中华人民共和国反恐怖主义法)の成立を受けて各メディアが報じている。以前から各国が懸念表明していた機器等の暗号化技術の提供義務については、盛り込まれなかった。
反テロ法の最終案によると、通信事業者とインターネット企業には暗号化されたデータの解読や、その他の反テロ措置で当局と協力することが要求される。ただ、草案と異なるのは、中国で事業を行うにはデータを国内で集積し、検閲用に暗号化システムを提供することをIT企業に義務付けるという、議論を巻き起こしたいくつかの文言が取り除かれたことだ。
暗号化技術の提供義務化は、以前からたびたび中国政府が画策している。そのたびに、外資から強烈な反対を繰り返し表明している。サイバーセキュリティー法案でも同じことが繰り返されていたのを覚えているだろうか?
新規制は中国の銀行にシステムを納入する業者に対し、ソースコードを提出し、中国製の暗号化アルゴリズムの採用を義務付けている。これに対し米経済団体は、安全性に関する煩雑なテストが必要になる上、微妙な知的財産の開示を迫られると反発。「サイバーセキュリティー政策として必要以上に幅広く、あいまいで差別的だ。中国の経済成長を阻害しかねない」と指摘した。
自国で技術および製品の研究・開発・生産ができない中国政府が折れたと見ていい。ただし、一方で国内のプロバイダー事業者などにはバックドア(システムの裏口)の設置や暗号化の解読技術の提供を義務付けている。
具体的なテロ対策の手段としてはインターネットに関する規制を盛り込んだ。当局のテロ防止措置や調査への協力として、プロバイダー事業者などに通信に施す暗号の提供などを義務付けた。テロに関する情報を見つけた場合には直ちに転送を止め、関連情報を記録して当局に報告することも規定した。
容易に通信が解読されるのは避けたいが、常にバックドアを持っておきたい政府の思惑が見え隠れする。いずれにしても、もともと存在していなかったに等しいプライバシーが皆無になるようである。
海外メディアを締め出し
この成立に至った草案と法案については、公開されているので興味がある人は見て欲しい。中国の法律は、裁量権を大幅に必ず残す書き方が多いが、本法案でも同じである。
草案
法律
今月に入って中国政府は、政府に批判的なメディアの締め出しをより強化している。メディアによって、本法案の評価は異なるが、総じて一致しているのは検閲規制がより一層強化されるという点である。
中国メディア・環球網によると、中国外交部は、中国政府のウイグル政策に批判的な記事を執筆した北京駐在のフランス誌女性記者ウルスラ・ゴーティエ氏に対し、年末の査証(ビザ)更新に必要な記者証の発給を拒否した。
国家が何を以ってテロと認定するかは曖昧で、その対象は「一切」など包括的で「その他」などの漠然とした範囲になっているので、QQやWeChatで中国の人権批判などして盛り上がったらテロリスト認定される可能性がある。
国家反对一切形式的以歪曲宗教教义或者其他方法煽动仇恨、煽动歧视、鼓吹暴力等极端主义,消除恐怖主义的思想基础。
もっとも、外国人の場合、ほかにも反スパイ法(参考記事:ネット統制をさらに強化?)などがあるのでより注意したほうがいいという表現がいいかもしれない。
テロ対策金盾はアメリカ製?
偶然なのかどうかはわからないが、この法案の直前にアメリカ企業が揃って投資を表明している。デルは、5年間ではあるが15兆円と巨額である。
日本だけではない脱中国、しかし米大企業は進出加速 デルは15兆円投資、IBM、インテル、シスコ、アップルも | JBpress(日本ビジネスプレス)
投資表明している企業が、ハード(特にデータセンターとネットワーク)、サービス、そしてR&Dで人工知能と来ている。外資企業が撤退を検討する中で、これだけの巨額投資。何らかの回収ができると踏んでいるはずである。
そして、ふと思うのだ。金盾の次世代版をアメリカが開発するのか?と。これらの企業が関連するのは、いずれもITやネットワーク、そしてその応用技術である。大量の通信データを効率よく取得、解析し、発信者を特定した上で粛清。言論や人権をビジネスツールとして使う一方で、軍事技術の開発と売り込みに余念がないアメリカらしい。
2016年は期待できないどころか、暗黒時代の幕開けとなりそうだ。
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