高層ビル建設ラッシュだった2014年
世界高層ビル協会(CTBUH)のリポートによると、高さ200メートル以上の超高層ビルが2014年だけで97棟完成し、そのうち中国だけで58棟と去年比で61%も増加した。これは、世界の超高層ビルのうち半分以上が中国で建設されていることになる。2015年には世界第二位のビル「上海中心(上海タワー)」が完成する予定である。一見すると絶好調だが、本当にそうなのだろうか?
好調に見えるオフィスビル
2015年はトップ10のうち4が中国
2015年に完成予定の超高層ビルトップ10のうち4が中国で完成する予定だ。特に注目度が高いのは、上海で建設されている上海タワーだ。中国では最も高いビルになり、世界でもブルジュ・ハリファ(828m)、東京スカイツリー(634m)に次ぐ世界第3位。ビルとしては第2位の高さだ。日本でも高度経済成長期には、高層ビル建設ラッシュが続き1964年には霞が関ビルディングができている。中国もその高度経済成長の真っ盛りにいるということだろう。
上海タワー。左にみえるのは上海森ビル。
低い空室率
完成後に目を向けるとどうなるか。北京と上海に限ると、約7%前後。都内の空室率が6%前半なので、ほぼ埋まっていると言える。外資が多い上海の陸家嘴のあたりになると1%で、開業6年目を迎えた森ビルに至っては1%を切っているらしい。
このような稼働率に支えられて、オフィスの賃料も年平均1割前後で上昇している。また、上海市内各地でビルの建設ラッシュが起きており、各地で建設途中のビルを見ることができる。特に、個人や中小企業向けのスモールオフィスへの需要が高いようで、SOHOの4文字をよく見かける。
低迷する住宅価格と民間需要
住宅価格は8ヶ月連続下落
その一方で、住宅価格は下落が続いている。下落率は日本のバブル時代ほどひどくはないが、8ヶ月連続の下落となっており、住宅市場がかなり冷え込んでいるのがわかる。
12月の中国主要70都市の新築住宅価格は、前年比4.3%下落し、11月の3.7%から下げが加速した。国家統計局が発表したデータに基づき、ロイターが算出した。前月比では0.3%下落し、8カ月連続の下落となった。ただ、0.5%の下落を記録した11月からは鈍化した
不動産を国がデベロッパーに売って得られる金額はとても大きい。上海市は収入源が多いので4割前後だが、地方政府の歳入全体の6~7割近くと言われる。それだけに、住宅価格の下落はインパクトが大きい。地方政府は現在躍起になってカンフル剤を打っているが、効果はイマイチの模様。
テナントがガラガラの百貨店
市内をウロウロすると、テナントがガラガラの百貨店が目立つ。
写真は上海の中心地、外灘にも近い南京東路。そこにあるデパートをみると「改装中」と書かれたフロアがとても目につく。このデパートに2~3ヶ月に1度訪れるのだが、改装中と書いておきながら、内装をしている様子もない。開店休業状態と言ってもいい。
7階建てでフロア面積はそこそこあるのだが、1/3も埋まっていない状況だ。しかし、店内は清掃がよく行き届いており、空調もついている。店内には警備員がウロウロしており、運営自体は行われている。まるで、明るい廃墟ピエリ守山のようである。
百貨店だけではないテナント一部壊滅上海紅橋駅
百貨店の場合、土地や建物のオーナが一度全店舗を閉鎖した上で、立て直しする可能性もあるので上記のデパートは計画的なのかもしれない。ただ、テナントが壊滅状態なのは、私営だけではなく、公営の駅などでも見られる。
上海近郊で一日の乗降車数が最も多い上海紅橋駅。ここは、空港と地下鉄、高速鉄道が一緒に併設されており、文字通り上海の交通の要である。年間利用客数も数百万人と非常に大きい。しかし、テナントの入り具合はかなり寂しい。
レストランなどが並ぶ2階へ上がると、そこには昼でも貞子が出てきそうな雰囲気の場所が。窓ガラス越しに見てみると、中にテーブルなどが残っているので、もともとはレストランや物産販売などの店舗があったのだろう。2010年7月の開業なので、5年も経たずしてこんな状態になっている。
管理費は税金などは、テナントの有無にかかわらず発生するので、本来ならば低価格でも貸し出したほうが収支にはプラスになる。ただ、中国ではそういう処置もとられず、放置された場所をよく見られる。
中国のバブルは崩壊するのか?
ここまで書くと、まるで中国のバブルがもう少しで崩壊すると思うかもしれない。ゴシップ雑誌は、中国経済破綻などのような過激な見出しで特集が組まれることもある。
中国の不動産バブル崩壊は本当に起こるのか | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉:日経BPオールジャンルまとめ読みサイト
しかし、私個人は中国のバブルは崩壊しないと考える。理由は3つ。
- 土地の開発決定権は政府にあり、自由にコントロールできる
- 中央銀行が貨幣を管理していて、さらに人民元はグローバル通貨ではない
- 中国政府は豊富な外貨と厳しい資本制限をしている
1.土地の開発決定権は政府にあり、自由にコントロールできる
住宅価格を決定するのが需要と供給次第なのは資本主義国家と同じ。ただ、供給側を中国政府が独占的に決定できる。中国の土地は人民のものであり、政府がそれを管理している。もしも、価格が下落しても、その分だけ供給をしぼりこめば下落に歯止めを掛けることができる。
2.中央銀行が貨幣を管理していて、さらに人民元はグローバル通貨ではない
中国は人民元の供給量をしっかり管理している。下落に振れれば、即座にコントロールをするだろう。また、人民元はグローバル通貨ではないので、市場に好きなだけジャブジャブとお金を注いでも他国から文句を言われることはない。もちろん、それだけマネーを流せば、銀行口座の預金が紙くずになる可能性はあるが、日本のバブル崩壊をよく研究している中国政府がそのまま放置することはないだろう。
3.中国政府は豊富な外貨と厳しい資本制限をしている
意外にも中国政府は、海外からの借金がほとんどない。このため、海外から口出しをされる心配がない。おまけに、外からの資本異動に厳しい制限をつけているため、日本で一時期話題になったハゲタカファンドが入り込めない。
以上の理由から、中国は異常な価格の住宅価格をどこかで調整はするものの、日本のバブル崩壊のようなハードランディングは避けて、ソフトランディングするのではないかと考える。
ただ、経済は絶好調か?と言われるとそれも否定する。中国の経済を支える重要な柱である生産委託であるが、人件費や物価の高騰が無視できないレベルにまで上がってきている。生産拠点の移転は非常にお金と手間がかかるため、生産拠点を持つ企業もそう簡単には移動しない。ただ、既に工場スタッフの賃金が約12万円/月(6,000RMBグロス)前後まで上がっているので、これ以上上がるのであれば企業の移転は続くだろう。鄧小平から始まった改革開放政策(来料加工システム)は転機を迎えていると言える。
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