VPNにとどまらない社会の引き締め
中国共産党は今秋党大会を開いて、習近平指導部の2期目となる人事を決定した。その党大会に備えて今春からVPNを非合法化、言論統制を強化した。それに続き、8月末から風紀取り締まりも本格化した。一連の流れを追って現状を解説する。
ネット規制の次は、リアル規制
今年の春から始まったネット規制。当局が認可したVPN以外を非合法化し、もともとグレーゾーンだった海外VPNの非合法化が明文化されたのはお伝えしたとおり。
今回はネット上の規制に続いて、風俗など共産主義が認めていないものの一斉取り締まりを始めたようだ。
思い起こせば、習近平が中国共産党総書記になった2012年秋に、当時アジア最大の風俗街だった東莞が大規模摘発を受けて壊滅している。共青団に属している習近平が、別派閥の拠点である広東省、その資金源である風俗撲滅だと見ていた。
現在の上海市長は、習近平の子飼いなので、その足元の上海は比較的安全とみて東莞から流れてきた人が相当数いた。しかし、どうやらそれは間違いのようだ。
8月11日凌晨,上海警方成功摧毁一个组织卖淫的犯罪团伙,抓获高某等三名主要犯罪嫌疑人和一批涉嫌卖淫嫖娼的违法人员,当场查获一批赃款和大量账册、凭证等涉案物品。
中国では統計情報が信用出来ないため、輸出入総量や電気消費量など別の指数が用いられることが多い。有名なのは、李克強指数と呼ばれるものだ。私はこれとは別にサウナ指数を用いている。理由は別記事で紹介しているので、こちらを参考にしてほしい。
上海市内のサウナが休業を続々告知
動きが見え始めたのは、先週の金曜日から。一部のサウナ系グループで更新が停止するなどしていたが、様子見ムードがあった。定期的に消防点検などと称して、うわべの取り締まりはやっていたからだ。
昨晩からは、ほかの店舗などにも加速度的に波及しており、どこのサウナも営業停止に追い込まれている。
今日の昼頃まで通常営業を通知していた店舗も、わらわらと休業案内が飛ぶありさまである。
東莞の摘発が開始された当初もそのうち嵐は過ぎ去ると思われていたが、1週間、2週間と伸びた上に摘発の手が止まず、最終的に東莞は廃墟となってしまった。客の多い時間帯を狙って根こそぎ捕まえており、当局の本気度がうかがえる。
習近平が政権運営してから言論統制の強化、VPNの掃討、今回は風紀取り締まりである。どんどん無味乾燥になっていく…。
デリバリーで対抗するサウナ側
追記:2017-08-15
今日の夕方頃から、出張(デリバリー)で女の子を派遣するところがでてきた。こういうところの女の子は、稼げると聞いて体を張っている人たちである。歩合給なので、休店されると彼女らは実入りゼロになるので困るのだ。
アナウンス内容は以下のとおり。
从现在开始有客人自己开房间或虹口附近的单都可以姐妹子上门服务
意訳:いまからお客自ら部屋を(ホテルの時間借りなど)確保して紅口付近であれば、女の子を派遣するサービスはじめます
この種のアナウンス、私はデジャヴを感じた。それは2012年秋の大規模摘発でサウナ店舗が休店になったとき、同じようなことを業者がやっていたのだ。KTVで女の子を連れて帰る人が捕まるように、こういう業者の動向を公安もよく見張っていて、頃合いをみて突撃。お客ごと逮捕というのがそのうちニュースで見られるだろう。そして、その先にあるのは風俗サービスの壊滅である。
日本大使館は注意を呼びかけへ
追記:2017-08-17
在上海日本国総領事館より『売買春行為は違法です』と題してメールが着弾。今回または前後の摘発で、捕まった人がいるようなニュアンスが含まれている。
最近、上海で売買春行為(性的サービスを伴うマッサージ等を含む)により処罰されるケースが増えています。中国において売買春行為は違法であり、「治安管理処罰法」の適用を受け、処罰の対象となります。
検挙・逮捕された場合についても併記されています。中国の法律は、身体拘束する期間が比較的長いのが特徴。スパイ容疑で捕まった邦人が数ヶ月も勾留されることからも周知の事実ではあるが。
検挙された場合、最高15日以内の拘留及び5,000元以下の罰金が科せられるだけではなく、国外退去処分を受け、その後中国へ一定の期間入国禁止となる場合もあります。
文末にある一言が妙にツボに。その昔、売春関係で検挙された場合、パスポートにその旨が記載されていたようだが、今はどうなのだろうか?
当局に拘留されてしまうと、釈放されるまで外部への連絡が自由にできなくなり、「事件・事故に巻き込まれたのではないか」と周囲の方に心配をかけてしまう可能性もあります。
いずれにしても、しばらくはおとなしくしたほうがよさそうである。
デリバリー停止、再開の見通しもなし
追記:2017-08-26
風紀取り締まりは現在も続いており、1週間程度で再開するとしていた店舗もお手上げ状態で再開の見通しもついていない状態である。
デリバリーをやっていたところも停止するところが現れるなどペンペン草も生えないとはこのことである。上海ではどうしようもないようで、近隣の蘇州などに女の子を移動させる店舗も出ている。
今秋予定の中国共産党大会後になれば緩むと言う声がある一方で、今回の取り締まりは上海公安当局の新しいトップによる施策のため、継続性があり変化なしという声もある。関連性があるのかわからないが、香港の旺角や油麻地でも掃黃が続いているのも気になる。
油尖警區特別職務隊聯同入境處,昨日(8月19日)傍晚約6時進行代號「烽火」的掃黃行動,於油麻地窩打老道、上海街、廟街、砵蘭街、新填地街及寧波街多個單位,共拘捕31名年齡介乎16至53歲的內地女子,其中30人持雙程證,1人並無持有有效證件。
飯盛女(めしもりおんな)ならぬ茶汲女
中国の上層部がもっとも関心を寄せる十九大も10月で終結した。習近平政権の2期目は主席一強体制が印象づけられた一方で、3期目があるのではないか?という憶測が早くからも飛んでいる。詳細については次の記事をごらんいただきたい。
それはさておき、本大会が終了したあとも、上海市内の取り締まり状態は続いている。店舗は営業(もっとも売春自体、中国では違法だが…)は再開されていない。デリバリやマンション個室でのほそぼそとした活動がされているのは前述のとおりだ。
11月に入ってからは茶屋(茶藝会)を称して、店舗営業に踏み切るところもでてきた。女の子を技師ではなく、茶室に付属する茶汲女扱いのようだ。
ちゃんとしたお茶を飲む場所も用意しているようで、茶具含めて写真を見る限りではそれっぽく見える。
その後、通されるのが個室というわけだ。
日本ではその昔、娼婦は江戸の吉原遊郭ほか幕府指定の遊郭でのみ営業が許されていたが、非公認ながら宿場の奉公人という名目で、飯盛女(めしもりおんな)という娼婦がいたそうだ。給仕を行う者も指したようで、一概に「売春婦」のみを指すわけではないそうだ。上海では飯盛女ならぬ茶汲女が復活したというところか。この手の商売は、時代が変わって場所が変わっても変わらないようだ。
それはさておき、KTVやガールズバーにも公安は引き続き目を光らせている。外地(上海以外)が安全という情報もないので、遊びに行かれる場合はご注意を。
コメント