進む厳罰化と不明確な規定
中国当局のネットに対する言論規制が止まらない。日本アニメに対する規制が発表につづいて、軍に対するデマを流布させたという容疑で10人が逮捕・送検された。ネットへの投稿はもちろん、QQやWeChatでの発言内容を元に突然逮捕されるかもしれない。
表現の自由がない中国
2015年5月2日の軍機関紙・解放軍報にて、中国人民解放軍総政治部保衛部(軍の宣伝、思想、政治、組織、規律などの諸活動を行う憲兵隊)はこのほど、軍に関する悪質なデマをインターネット上に拡散した10人に対し、法に基づいた厳正な処分を下したと発表した。
このデマの一例として引き合いにだされているのが、以下のような内容。
- 部隊の仰天内幕
- 軍トップの内部抗争
- 軍内マフィアの後ろ盾
この程度の内容は、百度上のみならずいろいろなところで出回っている。今回はインターネット上での取り締まり強化を見せつけるための標的に10人が選ばれた可能性が高い。
原文を見ると、これらのデマの流布場所として、微博、微信、论坛(BBS)を挙げている。微博、论坛はウェブサイト上のものなので、まだわかる。しかし、微信(WeChat)は基本日記+個人間の発言がメインで、プライベートなものだ。特に公開設定しない限り、第三者は見られない。それにも関わらず、今回逮捕者の発言先として取り上げられているということは、こういったメッセンジャーの発言内容も当局が監視しているということの証拠である。
不明瞭な取り締まり規定
今回の逮捕や先日の日本アニメに対する規制も、その規定の不明瞭さが浮き彫りになっている。アニメに対する規制では、以下のような例を挙げている。
- 暴力行為を美化し、小火器(ライフル・ピストル等)の使用法や爆発装置の製造方法を詳述したもの
- 身体を傷つける過激な映像シーンを含むもの
- 淫らなわいせつシーンが描かれたもの
これらの規定をそのまま準用するならば、真っ先に取り締まらなくてはいけないのは、中国お得意の反日ドラマである。暴力行為という意味ではこんなシーンがある。
また、わいせつシーンと言う意味ならば、こんなシーンもある。
過激なシーンは、Googleのイメージ検索をかけるといくらでも出てくるので、興味がある人は検索してみるといい。キーワードは「抗日电视剧」あたりだ。
機能しない裁判制度
万が一、逮捕されたりすると非常に厄介だ。中国の裁判制度は非常に問題が多い。政治的な意図で判決がたびたび歪むからだ。日中間での戦後補償問題について、1951年のサンフランシスコ平和条約とその後の二国間条約により決着済みとしている。しかし、去年商船三井がこの件でやり玉に上がっている。
この国には、三権分立も法の理念もなく、そのときどきの時勢に応じてそれっぽい判決が出るだけなので、当然腐敗がひどい。裁判官自体も自身が共産党員であるし、生活の周りを見れば全部軍や政府なのだからそうせざるをえないのかもしれない。
当然だが、在宅であっても起訴などされると出国ができなくなる。また、運営元がここぞとばかりにデマの流布によって損害を受けた!などとたかってくる可能性もある。この場合、刑事が済んでも中国民事訴訟法第231条に基づく出国禁止になる可能性も否定出来ない。
3つの対策
中国や韓国のような反日国家(この2カ国以外では北朝鮮くらいしかないが…)に関わらないのがベストだ。しかし、夢見がちな経営者や現地を知らないアナリストの言葉を鵜呑みにした事業計画に巻き込まれて、ほぼ強制で行かざるをえない場合もある。
では、そんな時はどうしたらいいのか?3つの対策を挙げる。「3ナイ対策」と呼びたい。
- 使わない:QQやWeChatなど中国製ソフトを一切使わない。使う場合でも、仮想環境(VMPlayerなど)上で使う
- 言わない:不用意な発言をネット上で行わない。QQ, WeChat, 携帯電話のショートメッセージも監視されていることを自覚する
- 教えない:個人情報は一切出さない。また、ネット上の発信・受信時は身元を隠ぺいする
1と2についてはそのままで、不用意なインストールを避けて、使う場合でも最低限に留めておくことがいい。
3については、QQや百度地図などを使うと携帯電話での認証を薦めてくるが、こういうのは一切無視しよう。なぜなら、携帯認証を行えば、QQや百度地図のアカウントとあなたの個人情報がリンクするからだ。身元の隠ぺいとは、これらのツールを使う場合に発信元がわかりづらくするように、匿名ProxyやVPNを使うことだ。少なくとも海外からの利用であれば、中国当局も調査のしようがない。
皆さんのお役に立てば幸いだ。
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