社会政策・産業政策の岐路に立つ中国

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中国当局が海外アニメの駆逐を開始

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中国の文化部(日本の文化庁または文部科学省相当)が海外アニメの一部を非難、取り締まりの要請を動画配布元に告知したようだ。この禁止令の背後を考えてみる。

中国では4月1日から、海外の映像作品をネット配信する場合は作品ごとに許可が必要になり、認められなかった作品は削除しなければならないという。また海外作品の配信数を国産作品に対し一定割合に抑えるよう求めるなど、海外作品の規制強化を進めている。

中国政府、「BLOOD-C」など日本アニメを“暴力賛美”と名指しで批判 – ITmedia ニュース

文化部整治暴恐动漫 多家动漫网站被查

ネット上では、中国の対日政策の強化と捉える向きが多い模様。

中国、日本アニメ100作品ネット配信禁止 進撃の巨人、デスノート

「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む  ついに来た中国動画サイトの日本アニメ規制、人気作品も次々に消滅中

この動きは、単に日本のアニメが規制された!と見るよりも、中国政府が長期的に進めている社会政策と産業政策合わせてみたほうがいいと思われる。

社会政策上のアニメ禁止令の意義

まず、社会政策では中国政府が進めている金盾プロジェクトの一貫であることは間違いない。中国政府(正確には中国共産党)は、利権団体の共同体なので、それを脅かすものは徹底して潰すというイデオロギーのみで運営されている。中国政府が株式会社だと揶揄されるのはここにある。1989年に起きた天安門事件は中国共産党以外にあまり豊富な知識と勝手なイデオロギーを許すと独裁体制を揺るがしかねないという教訓を残した。そこで、前者のシステム的なものとして金盾を構築し、統制強化に努めてきた。

検閲にとどまらぬ中国の「知の統制」を懸念する(1/2ページ) – 産経ニュース

後者は中国共産党自体がイデオロギーを与えることですり替えをしようとしている。たとえば、愛国教育や中国夢などがその例だ。

社会主義の中核的価値観_中国網_日本語

中国の沿岸部、特に国際色の強い上海ですら姿をほぼ消したプロパガンダ広告をあちこちで目にするようになっている。

看板

海外のアニメを含んだコンテンツは、多かれ少なかれその社会の体制を反映する。中国ではあまりない教師に食って掛かる学生や、国家権力に敢然と立ち向かう主人公などは中国政府のこれらの政策とどう考えても相容れない。

経済政策上のアニメ禁止令の意義

経済政策上の意味では、国内向けと国外向けの2つにわけられる。

まず、国内向けという意味では、産業に育成と保護を図りたい中国政府の意図が見え隠れする。単に暴力的だとかを理由とするならば、禁止するだけでいい。しかし、当局は国産アニメを強制しているのは、中国アニメがいかにクオリティが低く、不人気であることを物語っている。このままでは、海外のアニメ制作会社の下請けにずっと甘んじることになる。iPhoneが中国国内で製造されており、中国人がこぞって買うにも関わらず、ほとんど中国にはお金が落ちないのを非難していたのと同じ構図である。

China Makes Almost Nothing Out of Apple's iPads and iPhones

iPad

そもそも中国がこの30年間成長できたOEM請負の経済モデルは限界に来ている。低い人件費、抜け道の多い労働法、ゆるい環境基準などに外資企業が群がったが、中国人民の高コスト化、社会保障や環境汚染に対する不満などは臨界点突破まで秒読みだ。中国共産党は従前モデルに替わる新しいやり方で14億人の食べる手段を確保しようとしている。その1つがアニメ製作なのだろう。

もう1つの国外向けという点では、お金のない中国からそれなりに資金力が出てきた中国に対してコンテンツ配信元、著作権者が声を本格的に上げ始めてきたことだ。もともと、中国の百度に限らず、ビリビリ動画などに上がっているコンテツのほとんどは、違法アップロードである。野放しにしてきた中国政府がたびたびやり玉に上がっているのは周知の事実である。

同時に中国政府自身が中国マーケットの透明性を高めるために、知的財産権への保護を強めていることもあげられる。自分の足元がグラグラしているようではおぼつかないので、影響が小さいアニメからまずは禁止して徐々に広げていくつもりではないか。

海外版権への意識向上?

国内で著作権管理を強化するのは、産業育成とコンテンツ配信業を成り立たせることで雇用を創出したい政策一環であるのは上述のとおりである。ただ、同時に海外版権への配慮も見られるようになってきた。非関税障壁として貿易摩擦の原因になっていたのも理由の1つであろう。

直近ではゲームコンテンツを違法に配信していた中国企業に対し、人民法院が裁量上限となる50万人民元の賠償額を言い渡す判決も出ている。

コーエーテクモゲームスは本日(2017年11月8日),中国で北京三鼎夢軟件服務有限公司に対して提起していた著作権侵害訴訟について,北京三鼎夢軟件服務有限公司に合計約162万人民元(約2770万円)の支払いを命じる判決が下ったと発表した。

コーエーテクモゲームス,中国3DM GAMEへの著作権侵害訴訟で勝訴 – 4Gamer.net

今回の海外アニメ禁止令は、単なる反日政策と見るのは早急だろう。中国政府が置かれている微妙な国内外の立場をより鮮明している中で、なんとか舵取りをしようとしている模索の1なのではないか。