米国投資移民の85%が中国人
中国で富裕層が増えるにつれて、その中国から脱出し海外に移民する人が増えている。たとえば、アメリカの投資移民制度(正式名称はEB-5プログラム)を取り上げると、これに申請をする人のうち、中国人だけで85%強。何が起きているのだろうか?
中国人移民を拒否したカナダ政府
早くから中国人の投資移民を認めてきたのがカナダ政府。カナダはもともと永住権(や国籍)を餌に投資移民を募っていて、比較的寛容とされる。また、投資金額が他の国に比べて小さく(とは言っても80万カナダドルで8,000万円近く)人気だった。人数は15万人を数え、帰化してカナダ国籍を取った中国人も少なくない。私の知り合いにも中国の有名大学を卒業し、カナダへ留学、留学中に投資移民申請をし帰化した上で、中国で事業を行う人がいる。
しかし、カナダ政府はこの制度を2012年後半に事実上廃止した。ネットでは中国人の悪行に嫌気をさしたなどと言われている。実際は投資効果が限定的で、不動産の価格を押し上げたものの、人間の定住がともなわないため割に合わなかったためだろう。メディアでもこの点を指摘している。
また、カナダ政府がこうした制度を導入したのは、裕福な移民が国内で事業活動を行うことで税収が増えることを期待したためだったのだが、実際には移民の多くは、中国国内で稼いだ資産をカナダに移転し、高齢者や職のない一族を呼び寄せた後は再び中国に舞い戻っているケースが多いとされる。
【日々是世界】カナダ「投資家移民」廃止 中国富裕層に衝撃 – 産経ニュース(リンク先消滅 2015-04-06)
アメリカに殺到する中国人
ポストカナダの1つがアメリカ。アメリカもカナダ同様に投資を目的とした移民を認めており、このプログラムに参加する中国人が急増している。イギリスに比べると必要な金額が50万USDと小さいことが受けているようだ。
中国:海を渡る富裕層…「投資で永住権」魅力 – 毎日新聞(リンク先消滅 2015-04-06)
注目するべきなのは、その割合だ。下図を見るとわかるが、全体の85.4%が中国人なのだ。日本人と比べると実に180倍強。人口比が11倍程度なので、いかに多くの中国人が海外移住を目指しているかがわかるだろう。
EB-5 Statistics | EB-5 Updates
EB-5 visa shortage causes rush for Houston developers, Chinese investors – Houston Business Journal
中国人が海外に移民する理由(ワケ)
中国人の移民問題でよく言われるのは、中国経済が傾きかけているので海外脱出をしている!というものだろう。反中共を掲げる法輪功系のメディア「大紀元」がよく繰り返している。ただ、中国経済はこれから減速して低成長時代に入ることは確実だが、経済崩壊が起きる可能性は低いだろう(理由はこちらの記事)。では、なぜか?
理由はリスクヘッジのためだろう。もしも、政治や経済を理由にしているのであれば、中国の事業を継続することはないだろうし、また、永住権取得後に中国に戻るのに合理性がない。手持ちの資産を1ヶ所にしておくとリスクは当然高い。特に法治国家とはいえない中国ではなおさらだろう。中国経済が傾いたときを考えると中国にのみ資産があることはこれもリスクになる。そこで、手持ち資金の分散をさせている。
スキだらけの日本政府
移民問題で言うと、日本はかなり深刻だ。理由は2つ。
1.定期的なチェックがされない在留資格とゆるい罰則
中国人の留学先として日本はアメリカについで第2位。日本で働く中国人を含めると全体で76万人がいるとされている(2012年)。しかし、これは登録されている(届け出されている)中国人の数であって、不法滞在している分を含まない。ビザの要件はかなり厳しい(アメリカ並)のだが、1度入国すると要件が変化しても定期的なチェックが行われないので、そのまま在留できてしまう。
たとえば、留学ビザで入国したあと、学校を辞めたとする。その場合、外国人本人と所属機関は届出をしなくてはならない(入管法第19条の16第1号及び第2号)。しかし、これの罰則が非常にゆるい。
第七十一条の三 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
(中略)
三 第十九条の十第一項、第十九条の十五(第四項を除く。)又は第十九条の十六の規定に違反した者
また、そのままこっそり就業した場合の罰則も同じだ。
第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
本人は再入国が一定期間禁止されるが、戻らない覚悟ならかんたんだ。おまけに、日本では不法滞在していた外国人が、家庭をつくったことを盾にして居座るケースが後を絶たない。
2.ゆるいゆるい投資ビザ要件
日本の投資経営ビザ要件自体はかなりゆるい。
資本金が500万円以上、経費が年間500万円以上認められればビザの発給要件を満たすとされている。
1度投資ビザが発給されると、その家族も呼べるようになるので、ネズミ算式に増えていく。アメリカやカナダは富裕層をターゲットにしているのに、日本の場合、切羽詰まった人たちが押し寄せる可能性があるので、リスクが高く、リターンがきわめて小さい。
善良な外国人を呼び寄せるために…
移民政策には個人的に賛成だ。経済が伸びるファンダメンタルズの1つに人口増が欠かせないからだ。2000年に入ってから経済が伸びている中国、インド、アメリカなどはそれぞれ人口が増えている。逆に人口が横ばいの国は経済が停滞している。また、経済のグローバル化は嫌でも進んでいくだろう。それに対応する人材や多文化形成のためにも外からやってくる人や刺激が必要だ。
ただ、現状の法律や制度は、まじめにやっている外国人がバカを見るような制度になっている。また、違法就労や違法在留する外国人を逆手に取ってこき使うような事業主も後を絶たない。
まじめな外国人を呼び寄せて、不良外国人が日本で生き延びる術を絶つために次の2つを施策してみたらどうだろうか。
- 入国要件の大幅緩和:学歴を大学院や専門性などに限らず、本科や大専程度まで引き下げてしまう。高学歴=優秀とは限らないからだ。母数を増やすことで、いい人材を獲得する確率を高めるということ。
- 罰則の大幅強化:違法な滞在や就労をすればまったく割にあわないと思わせるような罰則を作ること。そして、不法滞在の外国人はどういう理由があれど、全部強制送還すること。違法就労の事業主に1人頭1億円の罰金と懲役30年とかやれば、やろうという気にはならないだろう。仕事先がなくなれば、不良外国人も居残りする術がなくなる。
現嫁や周りの外国人と話していてよく耳にするのは、ビザの要件は厳しいのに、すり抜けた悪い奴は居残れる。不公平だ…という言葉。不公平感が募るような社会に未来はないと思うのだが、どうだろう?
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