ネット監獄-中国
今年も世界のインターネット自由度が、アメリカのNGO団体から発表された。論外として評価されていない北朝鮮を除くと、中国は堂々のワースト1を獲得したのでレポート。
世界最悪レベル
毎年年末になるとネットの自由度を発表しているNGO団体がある。アメリカに本部を置くフリーダム・ハウス(Freedom House)だ。設立は1941年と古い。もともとは、ナチス政権の人権弾圧に対抗するための組織らしく、人権白書なども毎年公表している。
その同組織が今月発表したのが、ネット自由白書(中国で閲覧不可:Freedom on the Net 2015)。今回の発表では、世界全体でネットに対する管理の機運を懸念を表明した。特にネットへの過剰とも言える管理を行う中国に対しては、次のようなものを挙げている。
- ネット利用者への実名制導入
- 官製DDoSシステム
- スパイ法に伴うバックドアの義務化
いずれも今年本サイトで取り上げている中国国家プロジェクトで行われている抑圧的な行為だ。このレポートを引用した海外記事では、今回の調査をこう締めくくっている。
through their hard work and determination, they’ve managed to out-rank Cuba, Vietnam, Russia, and Libya to become literally the worst place for internet freedom in the world.
ただ、中国の場合は、広範囲にわたる検閲や言論統制と一緒に考える必要がある。オンラインであれオフラインであれ自由がなく常に監視されているためだ。
検閲も言論弾圧も強化
当局はメディアの版権強化など利益や情報源を集約する一方で、サイバーセキュリティ法の制定や実名制の義務化など取り締まりの強化を続けてきた。2015年11月からは刑法の条項を一部変更し、新たにデマ取り締まり規定を設けている。
2015年11月1日、米ラジオ局ボイス・オブ・アメリカ中国語版サイトは記事「中国の刑法改訂=新たに“ネット謡言罪”を制定、見せしめ効果を狙う」を掲載した。
今回の新たな規定は「明らかに虚偽の情報と知りながら、ネットやその他媒体で虚偽情報を流通させ、社会秩序を深刻に乱した場合には3年以下の懲役、深刻な結果をもたらした場合には3年以上7年以下の懲役」とされている。
注意したいのは、この「明らかに虚偽の情報」の規定が不明瞭であること。そして、この「デマ」の首謀者はもちろん、参加したメンバについても等しく罰する規定となっていることだ。たとえば、とある記事がWeChatやQQ上にあったら、それを引用したメンバも処罰されると読める。
もしも日本にこんな規定があったら、社民党の福島みずほや共産党の志位和夫などは即逮捕のレベルである。
「個人だから問題ない」は通用しない
一般に現代法では、人権保護の観点から、前述のような影響範囲が大きい規定は、明確性が求められる(参考:第40回<明確性の理論>)。しかし、繰り返しになるが中国の刑法やその他施行規程には、このような明確性がほとんどない。国家や中国共産党の恣意的な運用ができてしまう。「人治の中国」と言われる所以だ。
この兆候は今年前半にすでに見えていた。たとえば、初夏に起きた株価暴落。株価操作をしたとして中国記者がやり玉にあがっていた(参考:メディアに乱高下される(らしい)中国株価)。一介の地方紙記者が、これだけ広い中国全土のマーケットを操作することなど不可能である。しかし、同記者は逮捕された上に晒し者になった。同じ構図が今後中国全土で吹き荒れるのであろう。
リベラルな論調で知られる中国紙「南方都市報」のベテラン記者が国家機密詐取罪の容疑で逮捕され、中国内陸部の江西省の刑務所で取り調べを受けていることが分かった。この記者は偽の気功師の行状について長年取材しており、この偽気功師が警察に圧力をかけて、記者を逮捕させたとの見方も出ている。
注意したいのは、これらの規定が個人だから…外国人だから…では済まされないことだ。たとえば、WeChatやQQ、Weiboなどに中国当局から不都合な記事をアップロードして拡散した場合、首謀者として逮捕される可能性が大いにあるということだ。
中国国内の接続情報はすべて国家が管理しているのは当サイトにてお伝えしている通り。たとえ人のアカウントを借りていても、そこから追跡してくるのは間違いない。特に気をつけたいのは、電話番号とひも付けされているWeChatだろう。法人契約であれ個人契約であれ、ネットで完結できるQQよりも危険度が高い。
今年に入ってすでに5名の日本人がスパイ罪で逮捕されている。容疑もよくわからず、即時身柄拘束される危険が常に潜むことをよく覚えてく必要がある。
「仮にこの2名が、中国国外の諜報機関の一員として、計画的に情報を収集したと当局に認定されれば、スパイ罪の適用となります。(中略)一方、組織的、計画的なものではないと認定されれば、国家機密探知罪として、懲役3年以上、10年以下の判決となるのがほとんどです」
整理すると次のような事項があげられる。
- 警察国家である中国にいることを自覚すること
- 中国国内でネットに直接接続しない。どうしても必要な場合は、個人情報などに暗号化かけておく
- 常時VPN接続を心がける(参考:中国おすすめVPN)
- 電話番号や銀行番号など個人情報が入った端末からSNSは一切やらない
- 中華アプリは極力控える(参考:中華アプリから身を守る@Android)
中国にいる場合は、身元を割らせない個人情報と中華アプリの分離、VPNの常時接続は必須と言える。
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