中国ほど学習に適した環境はない
TOEICをご存知だろうか。アジア圏でやたらと重視される珍・英語試験の一つである。中国でこの試験勉強をしてみて、中国ほど学習に最適な環境はないと確信に至ったので共有する。
TOEICを受けた目的
今回、TOEICを受けた目的はシンプルである。次の2点だ。
- やることなくて暇
- 転職エージェントに薦められた
それぞれ述べていきたい。
1.やることなくて暇
まずは、持て余した時間。
中国では、ローカルスタッフが残業を一切しない。一人で残業したくても、ビルが定時でエアコンを切ってしまう。なので、夏は蒸し風呂、冬は冷凍庫。これでは仕事の効率が悪いので、家に帰るのだが、ここが問題。帰ってもやることがない。
私は下戸、お酒を飲まない。おまけに、嫌煙家。
ほかの駐在員に話を聞くと、日式KTV(キャバクラ)やゴルフがメインのようだ。でも、私は中国語がわかるので、小姐同士のくだらない会話を耳にすると、てんかん発作を起こして痙攣しそうになるのだ。さりとて、ローカルフードに興味ないし、喘息持ちなので、外に出てゴルフなどアホらしい。
唯一、楽しみ「だった」ネットは、当サイトで言うように悪化の一途。どう活用しようか?が課題だった。
2.転職エージェントに薦められた
もう1つは、帰任後の居場所の確保。
転職エージェントと話をすると、シニア層の転職では今までの経験・能力に語学能力があるといいと言われた。特に、外資系は実力に加えて、TOEICスコアが重要なのだ、と言われた。
では、暇だから英語(TOEIC)でも勉強しようか!となったわけだ。
学習時間は500時間ほど。結果は?
学習を始めたのは5月末。試験を受けたのが12月初旬。学習期間は約半年で、延べ時間は500時間前後。まずは、成果は論より証拠で、結果をご覧いただく。
いかがだろうか。転職エージェントいわく、外資企業での選考最低ラインが800点台とのこと。逆に言えと、これだけ取れていれば書類選考くらいは通る(期待)ということだ。
たった半年学習しただけで、企業の門戸が日系以外の外資にも広がるのであれば、お安いのではないか?
中国で学習をすすめる理由
インドア派の私にとって、中国で不便なことを列挙すると次のとおり。
- 日本語TVやDVDが見られない
- Gmailが見られない
- Facebookが見られない
- YouTubeが見られない
- Google検索ができない
暇な理由は、すべてがネットのせいだったのだ。
しかし、ものは考えようである。学習の邪魔になるものは、五感のうち視覚と聴覚らしい。中国に来ることで、いずれも封じられるので気が散る要因がなくなったのだ。
VPNなし=学習の支障にはならない
では、自由に検索ができないことで、学習の支障はあるのだろうか。
実は、VPNがなくても、英語の学習に不便はない。
最近の英語参考書は、ほとんどがCDまたはDVD付き。TOEICはヒアリングとリーディングができればいいので、閉じた環境でもできる。ヒアリング対策で発音を聞きたければ、下記のような辞書サイトが役に立つ。
※広告削除にはプレミアム会員は不要。Adblock Plusを使えば一発削除可能。規制されていないので、VPN不要。
出発点と着地点の設定
時間と労力を費やすからには、自分の出発点と着地点を明確にしたかったので、次のとおりとした。
学習前の英語レベル(出発点)
学習前の私の英語レベル(経歴)は以下のとおり。
- 高1で夏季特別補習(担当教師から名指し)。学年(約450名)のうち私を含めて4名のみの特別補習
- 高2であまりの成績の悪さ(赤点)に親の呼び出しを受ける
- 大学受験では、ほかの科目が河合塾レベル60~65に対して、英語だけ50を割り込む
大学入ってからも、一外を毎年単位落とす見事さ。TOEICスコアはおそらく300点台(=中学英語レベル)か、それ以下だった。
学習後の着地点
この着地点(目標)は、転職エージェントから聞いていたスコア800点台とした。
そして、この両者を結ぶためのロードマップとして、次の書籍を参考にした。
この書籍は、英語学習のバイブル扱いされている。Amazonのレビューを見ると、コメントがまるで某カルト教団の信者の声を見ているようで(以下略)。
学習の進め方
私は”かなり”飽きっぽい性格で、6~7割やると放棄する。今回は、しっかりPDCAサイクルを回して、自分にハッパを掛けることにした。ちなみに、PDCAとは次の略称だ。
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)
とくにCheck部分とその補正のActを重視した。この時、役に立ったのが、学習アプリだ。
勉強時間管理2 -勉強の計画と記録 – Google Play の Android アプリ
※ソフトはいいできだが、広告がとてもうざい。勉強中は通信を止めるのをおすすめする
このアプリは、日別、週別、月別の進捗状況(棒グラフや%で達成率を表示)や、時間帯別の学習時間を把握しやすいことだ。
たとえば、毎月70時間を目標に学習するのであれば、達成できたかどうかがすぐにわかる。達成できていない場合は、毎日の勉強時間帯にドリルダウンして、詳細を把握できる。
たとえばこの週であれば、土日の午前中に遊んでいて、午後から勉強していたことがわかる。そこで、寝る前に学習セット(翌日の学習資料と筆記用具)を用意してから寝て、起きたら自己強制するなど工夫した。
学習時間の配分
出勤前に30分、通勤中に単語復讐。帰宅してから、3時間。週末は午後の6時間を目安に学習した。したがって、総学習時間は以下のとおりだ。
(3.5時間/日x5日間/週x4週間+6時間/日x2日間/週x4週間)x6ヶ月=約708時間
さて、手元を見てみる。実際の学習時間は、500時間である。残り200時間はどこへ消えたのか…?
「三つ子の魂百まで」-お後がよろしいようで。
使った参考書
以下、使った参考書をあげていく。飽きっぽい性格なので、数は必要最低限にした。
5月~6月
発音:CDBフォニックス<発音>トレーニングBOOK (アスカカルチャー)
音読:みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング(CD BOOK)
補足だが、英語が大嫌いになったキッカケは、中学時に習った「基本五文型」である。こういう形式張ったものが、私は大嫌い。この点、大西氏のこの参考書は、目にウロコ。この内容を念頭に置いて、文法をよく読み込み、声に出して音読していたのが一番効果があった、と思う。
7月~8月
音読:ぐんぐん英語力がアップする音読パッケージトレーニング 中級レベル(CD BOOK)
瞬間英作文:スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング
文法(練習):精選英文法・語法基本問題演習SIRIUS JUNIOR
音読は最初からテスト直前まで一貫してやった。また、どの参考書でも、覚えられない内容や思い浮かばない表現方法は、Anki Webに突っ込んで通勤時にブツブツ唱えていた。地下鉄1号線で英単語を読み上げていた怪しい日本人は、私である。
ちなみに、シリウスの問題集はやり遂げたが、不要だ。大学受験のような重箱の隅をつつく問題は、TOEICに出てこないためだ。
9月~10月
瞬間英作文:おかわり!どんどん話すための瞬間英作文トレーニング(CD BOOK)
文法:一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)
ボキャブラリ:新TOEIC TEST 出る単特急 金のフレーズ
ボキャブラリ増強(学習マップで言うボキャビル)を10月末に開始。この手の単語シリーズは、個人的に大嫌い。すぐに眠くなるからだ。ただ、これがテスト時に大いに役に立ったのは後日談。音読は止める代わりに、瞬間英作文のお代わりに着手した。
11月~12月
瞬間英作文:おかわり!スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング(CD BOOK)
テスト対策:TOEICテスト新公式問題集< Vol.6>
テスト対策:TOEICテスト新公式問題集〈Vol.5〉
テスト対策:TOEICテスト新公式問題集〈Vol.4〉
試験直前に公式問題集を延々と解いた。同時に瞬間英作文で、シャッフルさせながら表現方法を口に定着させた。TOEICにはSpeakingはないが、しゃべれない外語は不要。その後のことを考えて、脳内英会話をフル回転させていた。
試験当日「読める、読めるぞ!」
試験会場は上海外国語大学。赤峰路という辺境の地。降りると学生らしき人がわらわら。一緒について行ったら現地に到着。
私がいた会場には、40名前後の受験生。各会場の入り口には、個人情報保護からほどとおい中国らしく、全受験生の名簿が貼ってあった。同じ会場の40名のうち、6名が日本人。日本人の多さにびっくり。
ちなみに、試験監督官が外国人であれ中国人であれ、一律中国語で話しかけてくるので、中国語が必須なのはご愛嬌。
5月にサンプルのTOEICリスニングを聞いた時は、まったくわからなかった。11月から模擬試験をやって練習したものの、当日テスト始めるまでドキドキ。
テストが開始したあと、リスニングとリーディングで、とあるシーンを思い出した。
ムスカ大佐「読める、読めるぞ!」
面白いくらいに何を言っているのか、文章で何が書かれているのかがわかるのだ。「スラスラではない」にしても、だ。きっと、ムスカ大佐もこの心境だったのに違いない。
ただ、残念なことに、アラフォーには試験時間120分は長かった。最後30分は、集中力が切れ気味で適当にやってしまった…。スコアもそれをほぼ忠実に反映していた。TOEIC恐るべし。
おまけ
試験を中国で受けるとおまけとして、中国当局のお墨付き証書がもらえる。
中国語で書かれた途端、証書がうさんくさくなるのは、なぜだろう?いずれにしても記念にとっておくことにした。
日本語TVは死亡し、VPNはズタズタ。暇をもてあます諸兄に役に立てば幸いである。
コメント
カリンさん
コメントありがとうございます。
この記事自体は在中邦人でvpnがあってもうまくアクセスできなくて困っている人に気晴らしにどうですか?的に書いたものです。
まぁ,私のことなのですが(笑)
会社のアカウントで外にゲートウェイ持っているところであれば困ることもないのでしょうけれど,うちみたいに小さな企業だと中国ネットに直接続なのでお手上げなのです。
もっともbilibiliや抜け道あるので必ずしも…ではありませんが。
中国の若者については同感です。
母数が大きい分,舌を巻きたくなるほど頭の回転が速い方の数も多い。
それだけに,これからどうなるのかは脅威半分,興味半分です。
どのみち閉塞感が漂う日本よりはマシかなって思いますね。
ずいぶんと前の記事に失礼いたします。最近は事情が違うのでしょうか?
中国人もずっと微信をやってるので勉強とは遠くもなれます。
若い人であれば日本人より勉強熱心で快活な方が多いです。
面接で決まりきったセリフを死んだ目で言わされてる感じもないですね。
幸か不幸か規制や監視が社会に与えた影響もあるのか、古い考えも浸透していて
あるべき姿だと思います。
一応現状では・・・
・gmail→できる。今まさにしてます
・日本語のTVやアニメ、番組→超見てます
・facebook→会社で使えるところが沢山。個人だとVPN持ってます。
・youtube→一応動画サイトがあります。
・google検索→百度があります。規制がかけられてる様な事は、
そもそも日常で検索する必要が無い。日本でも日常的に政治絡みを検索する人は特殊です。
ですね。
日本人より真面目であり、残業もうんとしてますよ。まだ会社にいるの??って言うくらい。その代り自由にメッセージもしまくってます。転職や退職もあっさりするし、若者がチャレンジ出来る土壌があるし、日本よりも自由に感じる皮肉な部分があります。
これからどう変わっていくのか楽しみです。
クニさん
コメントありがとうございます。
記事にも書いたとおりここにいてもやることがなくて暇すぎるんですよね…(苦笑)
エージェントについては、自分のマーケット価格の確認と起業するかの天秤かけている感じですね~。
お互いにサイトをもう少しいい方向に持っていけるようお互いがんばりましょう。
仕事をこなしTOEICの勉強をし、サイト更新に恐れ入ります。
転職エージェントに相談と言う事は転職をお考えですか?
私も中国赴任8年が経ちこのままどうなるのやら…
虹口区にある上海外国語大学、懐かしい響きです。道向かいにある上海財経大学に留学しておりましたので。
まずはサイトをどうにか起動にのせて行く事を目標に頑張ってみます。