シンガポールの悪習慣:マイナーリペア制度

シンガポール
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シンガポールの不動産賃貸借契約には、マイナーリペアという特約がある。この制度、不動産価値を毀損させる原因なのだがそんな制度を紹介。

マイナーリペア制度

現在借りているコンドミニアム(高級アパート)は、駅から徒歩5分圏内、築5年ほどの好物件である。最寄り駅も外国人の多いところで、マリーナベイサンズが屋上から見えるほど市の中心地にある。

はたから見ると六本木にあるタワマンのような雰囲気でなかなかよい感じである。このあたりは日本人に限らず駐在員が多く、コンドミニアムのほとんどは外国人といった具合。以前にバンカーが投資の話で来たとき曰く120平米程度で約3億円ほど(300-400万S$)と言っていた。お金の嗅覚に優れた彼らが言うのだからその程度なのだろう。後日、郵便受けに入っていた同じコンドの売却物件もその金額だったので流石である。

さて、そんなコンドミニアムだが住んでみるといろいろと問題が多い。ほぼ毎月、なんらかの問題が起きる。部屋の内側の場合もあるし、外側の場合もある。このうち内側の問題は、家主が解決することになる。この点は、日本のマンションと同じだ。

日本では賃貸借契約が結ばれると引き渡し時の状態を家主は維持する必要がある。借り主は賃貸契約終了時に原状回復義務があるものの、自然劣化などについては責を負わないのが普通である。

https://www.roompia.jp/blogs/1/entry/149

原状回復義務はシンガポールも同じである。しかし、日本と異なるのはちょっとした修理について自己負担額が発生するという点である。たとえば、電球が切れたとか水道が詰まったなど日本でも借り主が負担するようなものもあれば、備え付けエアコンの故障やドアの破損も借り主が一部負担する。

一定金額までは借り主が負担をして、それを超える部分を貸主が負担する制度をマイナーリペア制度と呼ぶ。

たとえば、ドアの修理に400S$掛かった場合、借り主が150S$負担しそれを超えた250S$を貸主が負担するのだ。

高額修理の結果、素人修理が横行

そんなに金額掛かるのか?と思うかも知れない。

シンガポールは日本よりもGDPが高い分、賃金も高い。そのため、人を呼ぶと修理ができた・できないにかかわらず90~100S$ほど取られる。これに部品代が掛かってくるので、300-400S$はあっという間である。

私がこの部屋に住み始めてから1年ほどだが、その間に修繕した箇所はざっと…

  • 窓枠破損
  • ドアノブ破損
  • スイッチ破損

である。

それでも1度直したら完璧!ならまだいい。しかし、シンガポールの修理業者は素人に毛が生えた程度。施行も日本のそれと比べると心もとない。

上述のスイッチ破損では、素手(感電防止対策なし)でスイッチ部分を交換、バチバチっと火花を飛ばしながら業者が危ないね~とか笑っていた始末である。末恐ろしい。

こういった修繕について悲鳴をあげているケースも多く、Web検索するとこれでもかというほど出てくる。

『シンガポールあるある ~修理編その①~』
シンガポールの今住んでいるコンドミニアムに引越してきて1年ちょっともう何カ所も修理しています 日本だったら元からの不備は不動産を通して大家さんに悪い所を伝え修…

シンガポールの粗悪設備とその危険性

先日、わが家で発生したのがこちら。天井にある電飾のカバーがずり落ちてきたのだ。子供がいなかったのでよかったが、危ない危ない…。3mの高さから落ちてきたらたまらない。

よくよく見るとこのカバー、木のフレームにプラスチック素材を貼り付けただけという簡素なもの。簡素と言うよりは粗悪に近い。プラスチック素材も日本のホームセンターで100円で売ってそうなレベル。

問題は留め具である。高所に取り付けるもののが落下するのは極めて危険なので、日本の電飾などは2重で安全策が取れている。よくあるLED電飾などははめ込み部分の留め金に加えて廻して取り付けるので、万が一どちらかが破損してもすぐに落下することはない。

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ところが、シンガポールのこれは単にカバーと天井側をねじで取り付けているだけなのだ。おまけに自重に対して十分な強度がないためもげてしまったのだ。

カバー側も木製合板なので、自重に耐えられず穴が拡大してしまって意味をなさなくなっている。これはひどい…。

ついでにいうと、このプラスチック素材はこの木製のフレームにしっかり合うように作られているわけではなく…よく見ると曲がっているのだ。機械切断したらこんな曲がることはない。カッターなどで切断したのだろう。

素人修繕に素人施行。プロの欠片もない。上海ですらもう少しまともな施行しているぞ?

自分の身は自分で守ろう

さて、ここで冒頭のマイナーリペア制度である。

当初、修理業者を呼ぼうかと思ったのだが、紹介したとおり自己負担である(あとでこっそり経費に混ぜて精算するが…)。おまけに、何度も言うが素人レベルの修繕が来て、また落下したらたまらない。

嫁(中国人)と考えたのは、次回落下しては危険である。同じ素人修理ならば、自分でDIYしてしまおうである。

電飾カバーが取れて不便なのはただ1点。LEDの明るすぎる光が眩しいである。そこで取り出したのが、白いゴミ袋。これを2枚”セロテープ”で重ねて貼り付けた。こんな具合である。

白色電球の場合、強い発熱がある。LEDも発熱はあるものの白色電球に比べれば小さい。また、ゴミ袋の貼り付けは雑なので触れない限りは放熱に支障はないだろう。

LED電球 vs 白熱電球 vs 蛍光ランプ(4) 発熱温度を比較
次世代の明かりとして、LED照明に注目が集まっている。電球タイプが出揃い始め、住宅への導入例も増えてきた。そこで、日経ホームビルダーがLED電球と白熱電球、蛍光ランプの比較実験を行った。最終回は発熱した電球の温度を測定する。

実際にスイッチオンしてみるとこんな感じに仕上がった。あれ?十分ではないか(笑)

右側がごみ袋。左側がオリジナル。

わざわざ人の家に行って、天井を見上げる暇な人間は来ないだろうし、来ても笑いのネタにするからこれでいいね!と言うことで決着した。退去時に何らかの方法で接着しておけばよかろう。

素人施工&修繕だらけのシンガポール物件

実は部屋を見ていると、いろいろ以前の住人や修繕業者が格闘した形跡が見られる。素人修繕は、前述のマイナーリペアを嫌ってなんとかしたという類なのだろう。

素人修繕は根本解決にならない。だから、素人なのだ。そんな修繕を繰り返すと、基礎部分含めて台無しになる。たとえば、ネジ山が最後まで使い切ったら、一度掘り出して埋め込み施工が必要になる。埋め込みした箇所は他の部分と施工時期ややり方が違うので、変色もするだろう。

このマイナーリペア制度は、乱暴に扱う借り主対策なのだろうが、費用負担を嫌って長年不具合を放置して重大事故にもつながるのではないかと思う。

こんな物件でも毎月6,000強(約50万円/月)する。GDPは日本の2倍かもしれないが、可処分所得の増加以上にこの手の出費や品質なので幸せなのか?は疑問である。それともHDPならもう少しマシなのか?

シンガポールの物件は、投資目的にはいいかも知れない。しかし、自分で住むには到底向かない。

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