日本に留学する外国人の数は年々増加している。途上国と呼ばれていた国々の所得が伸びたことや官民あげての国際化が後押ししての結果だろう。しかし、実務を見てみると未だに古めかしい人的保証制度がまかり通っているようだ。
少し愚痴めいた記事。
留学生を取り巻く環境変化
前提知識として、日本に行く留学生がどのくらいいるかご存知だろうか?
私が学生の頃(xx年前)は留学生はめずらしかった。留学生がいても、朝鮮半島や中東、欧米がほとんど。当時の中国大陸は、ワーカー賃金が平均で月500元の時代。事前に学費と生活費を準備できる人はごく限られていたからだろう。
そんな中、国際化を息巻く旧文部省が作ったのが外国人留学生学習奨励費給付制度(現・留学生受入れ促進プログラム)というもの。かんたんに言うと、お金の援助をして日本に来てねというもの。
公的なものに加えて有象無象の財団法人が奨学金制度を作ったこと、ビザがとりやすくなったのと相まって留学生はこの10年で倍増している。詳細を見たい方は、平成30年度外国人留学生在籍状況調査結果あたりをご覧あれ。
留学生に突きつける2つの壁
ここから本題。
嫁の親戚が日本に留学していて、先日とある公立大学の大学院に合格。これはめでたい。その後が問題。
公立大学は、各大学ごとに独立行政法人があって、そこからきた書類で相談をされたのがきっかけ。先方いわく書類を見てほしいとのこと。実際に拝見して、前時代的過ぎて卒倒しそうになった。
複写式なのに異なる契約
問題の書類は複写式のもの。いわゆるカーボンコピーである。
カーボンコピーは、中国ではすでに絶滅している。日本で見かけるとしたら領収書だろう。
話を戻そう。
問題は2つあって1つ目は、提出書類に複写式(カーボンコピーで1枚目に記入すると2枚目に転写される書類)にもかかわらず1枚目と2枚目で題目が異なるのだ。
その当該書類の1枚目はこんな感じの内容。
宣誓書
上記のものが貴学に入学の上は、学則並びに諸規則を守らせ、在学中の一切のことについて責任を追うことを誓約いたします。
よくある道義的な宣誓書である。未成年者ならともかく、学生とはいえ曲がりなりにも成人。これに第三者の宣誓保証人をつけろというのもどうだろう?
連帯保証人ですって
問題は2枚目。まず、注目したいのが書面のタイトルである。
保証書
上記のものが在学中に納付すべきが授業料の債務履行に関し、本人と連帯してその責を負うことを保証いたします。
複写式にもかかわらず、1枚目と2枚目の契約内容が異なる。
(´・ω・`) なにこれ?
これ、あれです。よく詐欺とかで使われる1枚目はなにかの契約書、2枚目に金銭消費貸借契約書になっていて知らぬ間に借金こさえるというやつ。これを独立行政法人という公の機関がやっているのだ。しれっと。
しかも、”連帯”の二文字。ここ10年くらい見たことのない文字が目の前にあるのだ。連帯保証人の恐ろしさは、当サイトに来られる方ならご存知だろうから割愛する。
そんな保証人をどうやって外国人留学生に見つけろというのだろう。これが2つ目の問題だ。保証人なんておいそれとなるものではない。
いや、これどうするんだ?
外国人留学生はどうするの?を聞いてみた
あれこれ考えても仕方がないので、当の行政法人にお電話してみた。
以下、回答。
Q.知人でも保証人はそうかんたんに引き受けるものではないと思うが、単独渡航の留学生の場合、どう処理しているのか?
A.お友達や知人を探してもらうようお願いしています。
え。友達や知人レベルで、保証人引き受ける人いるんですか?世間に弱い人が無知の人を引きずり込む。それなんて負のスパイラル?
話は続く。
Q.2枚目は”連帯”と書いてあるが、連帯保証人を想定しているのか?
A.違います。
Q.債務対象は”授業料”に限定されるのか。遅延損害金など含むのか。
A.授業料のみです。
文面には上述のように記載がある。裁判沙汰になって主張を覆されても困るので、上述の回答を書面化して一筆(学校法人の印鑑ついて)ほしいと言うとゴニョゴニョ。
なんなんでしょうね…。
国が仕掛ける大型トラップ
連帯保証人という人的保証制度の欠陥は、数々の判決が物語っている。まだ使っているところあるの?と思ったら、教育機関がざっくざっく検索で引っかかる。
人的保証を選択した人は連帯保証人および保証人の選任が必要です。
人的保証(個人の資財)には限界があること、リスク込みで計算やるのがオペレーションのはず。
国際化を叫ぶ一方で、実務は昭和(奈良時代の大宝律令まで遡る)でとどまるこの制度。外国人留学生を呼んでおいてこんなのを放置しているのは、国策トラップではないだろうか。
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