猫も杓子もP2P金融
携帯メーカや花火業者、素人の大学生が活発に参入する分野がある。P2P金融(ソーシャルファイナンス)だ。以前取り上げたこの分野、だんだんと時限爆弾になりつつある。何が起きているのか、詳しく見ていきたい。
P2P金融とは?
このソーシャルファイナンスについては以前に別の記事で取り上げた(参考記事:小米科技、金融サービスに参戦、ネット金融の群雄割拠到来)が、再度詳しく見てみよう。
ソーシャルレンディングとは、Web上で金銭の借り手・貸し手を結びつけ、個人間での融資を実現する仲介サービスのことである。多くの場合、インターネットオークションのような入札形式で借り手と貸し手とのマッチングを行い、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)によって融資が必要な背景や、個人の信用度などに関する情報交換を行い、個人間融資を実現する。
ソーシャルレンディングは個人間取引であり、融資額は小口になるという性質を持つが、融資条件の融通が利きやすく、貸し借りの相手を互いに選択できる、などといった特徴がある。融資額や返済期間、利率などの条件は、あらかじめ提示した上で、その条件を承諾した融資希望者を募ることができる。
なんてことはない。ヤミ金やマチ金のオンライン版である。
個人(または複数人)が個人(または法人)に貸付をしているので、自己責任の投資だ。貸し手側は、自己リスクで自由な金利で貸付をできるし、借り手は貸し手を自分で選択できる。借り手は銀行など公的な機関から借りるだけの信用力がないので、高金利で借りるしかないのだが、それは言い換えると貸し倒れリスクが非常に高いといえる。
中国のP2P金融市場
中国では不動産物件がだぶつき始めており、不動産投資による見返りが望み薄である。特に高騰していた地域の不動産は、チキンレースが始まっており、投資適格を欠いている状況だ。
住宅不動産については青息吐息であるし、商業不動産については2014年に香港最大の財閥が売り抜けを敢行している様である。
そんな中、未だに経済成長率を大きく上回る15%強を謳うP2P金融市場にこぞってお金が集まっているというわけだ。さらに、中国政府が推めるIT推進計画にこのP2P金融が含まれているので、バブル化している。
易観智庫がこのほど発表した「2015年第1四半期(1-3月)中国P2P金融市場季度監測報告」によれば、同期間中のP2P金融取引規模は前期比34.5%増の1009.3億元だった。
易観智庫の分析によれば、今期は春節の影響があったために2月の取引規模が縮小したが、李克強首相がインターネット金融の健全な発展促進を訴えたことで一気に取引が増加した。
問題はこうして集まったお金の行方である。
金利15%を謳うということは、元の商売で15%以上の運用ができていることが前提である。もちろん、これでは利益(と言うより経費すら出ない)が出ないので、30%前後欲しいだろう。こんな美味しい商売が実際にあるのだろうか?個人的には懐疑的だ。
中国の資金は国家により厳しく制限されているので、闇を除けば基本海外に出られないのだ。
早くも聞こえる破綻の声
そんなP2P金融には、携帯メーカから花火業者、果ては大学生まで参入するというカオス状態。当然、運用のノウハウや資金回収などできるわけもなく、破綻する業者が相次いでいる。
网贷之家工作人员来到23层楼,见到的是“鑫e财富”(该平台工作人员称,这是他们公司的品牌名称),办公室内基本已无人办公,有一名物业的保安人员“坐镇”,不让人将财物搬出。同时,现场陆续也来了十几位前来维权的投资人。其中,有两位是白发苍苍的老年人,据他们表述,其投资金额均为15万元左右。
同記事の中で債権回収について書かれているが、法律上はともかく実務上ほぼ不可能である。それは、日本のバブル後始末に30年以上も費やしたことからも推測ができる。ないところから回収はできないのである。
ちなみに、この様子はテレビ東京のWBSが取り上げており、ネット上からも見られる。
この記事を起こした3年後、ネット金融の破綻が相次いでおりいよいよ現実味を帯びてきた。この3年ゾンビのように生き延びてきた有象無象のP2P金融も、習近平政権の政策転換で死刑宣告を受けた。
中国でスマートフォンなどを通じ個人の資金を融通するインターネット金融の破綻が相次いでいる。2018年に入り約330社に達し、債務不履行額は少なくとも300億元(約4900億円)にのぼる。個人投資家による抗議活動も広がっている。
4,900億円は日本のソーシャルレンディングと同規模なのだが、資本の規制が強い中国ではだぶついた資金がなだれ込んでいるので全体から見たらまだまだ小さい。
ただ、株価騒動のように一気に炎上する可能性も否定できない。
大暴動の引き金になりかねないP2P金融
P2P金融という胡散臭い仕組みは、専門家やある程度知識がある人ならリスクを認識でき、その上で正しい投資が求められる。そこに、よく仕組みがわかっていない素人がズブズブツッコミ泥沼化するという構図が今、目の前に広がっている。
実はこの話を見てある種デジャヴを覚えた。それは、1997年にアルバニアで起きたねずみ講暴動である。
1997年アルバニア暴動(1997 rebellion in Albania)は、1997年3月に経済破綻を契機としてアルバニア共和国で発生した全国的な大規模暴動を指す。経済破綻の遠因が無限連鎖講(ネズミ講)であった事から「アルバニア宝くじ暴動」、一時的に内戦状態に陥った事から「アルバニアの無政府化」とも呼ばれた。
この暴動の引き金となったねずみ講も、現在の中国ほどではないが似ている。
経済の停滞、政治に対する失望が蔓延する中で、これは儲かる!と口コミで広がった商材を、知識のない素人がこぞって購入。当然、最後は破綻し国家が混乱するというパターンである。
口コミが好きなのもアルバニア人と中国人の共通点であり、大部分の国民がこの手の知識に疎いというのもよく似ている。靴磨きの少年が株券について口にだすようになったらその市場は危ないのである。
この手の自転車操業は長く持たない。その資金の一部は実はAIIBだったりするのでは?と思ってしまう。いずれにしても、この問題を放置すると中国全体が暴動の嵐が吹き荒れる…ということが起きかねない。
引き続きウオッチしていきたい。
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