朝令暮改のネット規制
中国当局のネット規制は、枠組みとコンテンツの2タイプ。枠組みとはVPNやドメイン規制のように手段そのものを阻止するもの。それに対してコンテンツは枠組みは許可するものの、その中身に口出しするものだ。前者もさることながら、後者の規制も加速しているのでご紹介。
本題の前の次回予告
少し前であれば選択肢にそもそも上がらなかった中国謹製ソフトウェア。ソフト開発のオフショアで基礎をつくり、政府の金盾による保護と次世代産業に指定されたことで目をみはるほど力をつけてきた。
たとえば日本であればExcelでもなんとかできるデータ分析も、中国であればデータボリュームが単純計算で10倍になるため人力では限界がある。そのためこの分野の中国製ソフトは海外製品と比較しても遜色ない。
今回、そんな中国製ソフトの『FineBIをご紹介』…するはずだった。しかし、例により規制強化のニュースが来ているのでそちらを取り上げる。
タトゥー(入れ墨)はアウト
今回の規制は中国共産党の風紀取り締まりを受けて、メディアや中国版TwitterことWeibo(微博)などで実施されている。
まずタトゥー(入れ墨)である。
入れ墨はもともと中国で刑罰の1つとして扱われいていた歴史がある。つまり、低俗なものみなされていたのだ。中国の制度を輸入していた昔の日本でも、刑罰として採用されていた時代があったのをご存知のかたも多いだろう。
そんなタトゥーを、過去に中国人民解放軍は一律禁止していた。
しかし、近年の流行を受けてか一定の範囲内であれば受忍するように変化している。とある地域での規律では、入隊にあたり肌が見えるところであれば直径が2cm以内、それ以外であれば3cmを超えてはいけないなどである。
ただ、相変わらず望ましいものではないためメディアに取り上げられる芸能人や選手などのタトゥー露出は改めて禁止されたようだ。
上述の記事で対象とされた广州恒大淘宝に所属する张琳芃選手の写真がこちら。
うん。これはひどい。メディア露出時にサポーターなどで肌の露出を禁止されるのもうなずけるレベルである。
ちなみにこの選手、言動も斜め上をターボで行く人物である。
低俗を地で行くとはこういうことを言うのだろう。
ヤンママもアウト
タトゥーは上述のとおり最近の話ではない。
しかし、今年に入ってからは、ヤンママ(未成年者の妊娠・出産)もコンテンツやアカウント削除の対象となっている。中国版Instagramである”快手”で、一部ユーザが自身の妊娠・出産をアップロドしたところ、コンテンツの削除とアカウント停止を受けている。
A popular Chinese livestreaming platform has deleted videos and accounts relating to teen pregnancy after being criticized for not properly regulating its content, Sixth Tone’s sister publication The Paper reported Sunday.
ちなみに、問題となったコンテンツがこちら。巷を騒がせる”インスタ映え”レベルの感覚で妊娠・子供の様子をアップロードしているように見える。
Youtuberなどは黎明期をのぞけば、供給過剰に遅かれ早かれ陥る。そのためコンテンツが独自性を求めて-そして、ほとんどの場合独自性がないのだが-過激化するのは、別の記事で本サイトも指摘しているとおりだ。
ヤンママが一律悪いとは言わない。しかし、分別つかない人たちに感化することを考えれば妥当かもしれない。ヤンママの次は、シンママあたりが規制されそうである。
同性愛など一部は撤回
その一方で、多様化する社会の波に押されて撤回に追い込まれたものもある。中国版TwitterことWeibo(微博)で、同性愛関連(ホモおよびレズなど)コンテンツの削除規定を同社が取り消したのである。
中国版Twitterとして知られるマイクロブログプラットフォーム「新浪微博(Sina Weibo)」が現地時間4月16日、同性愛関連のコンテンツを削除するという先ごろの決定を撤回すると発表した。
ここまで書いて、周恩来がホモだったという記事を思い出した。
中国共産党の幹部は、元貧困層出身が多いのだが、周恩来は海外への留学経験もあり家庭環境も良好だったネイティブエリートである。幾多の激動の変化を超えて毛沢東に信頼された彼が、実は同性愛だったというのは当局としては好ましいことではなかったはずだ。
タトゥーやヤンママとは異なり、LGBTの類は若者が感化されてやることもないという判断なのか。それとも、自身にもすねに傷を持っているから許容されたのだろうか?と勘ぐってしまう。
いずれにしてもコンテンツの検閲・管理は手間ひまがかかるにもかかわらず、規制の手綱を緩める気配はなさそうである。
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