中国でVPNが全面禁止-ホテルもスマホも家電も監視下

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安全神話を監視社会で作る試み

中国でVPNが全面禁止-ホテルもスマホも家電も監視下

2018年4月1日から当局が許可したVPN”以外”は法的に違法となった。翻墙(金盾の規制回避)は禁止されているので、中国のネット規制によりすべてのデータと流れは、当局の監視下に置かれることとなった。監視社会は今後、どこへ行くのだろうか?

人類未曾有の大プロジェクト-金盾

本題に入る前に、中国ネット規制の主役・金盾プロジェクトの全体を知る必要がある。

ネットワークは入口と出口があるパイプだ。地域や国を越えるインターネットの場合、複数のパイプが複雑に絡み合うので全体を把握するのが難しい。やり取りする経路が1つとは限らないためである。国を越えると法律や習慣が異なるため、飛躍的に難しくなる。

そんなネットワークを中国政府は驚くほどの人手と時間、資金を投入して把握しようと試みてきた。これが金盾プロジェクトである。把握するために見なくてはいけないのは、次の3ヶ所だ。

  1. データ投入(入口)部分
  2. ネットワーク移送(パイプ)部分
  3. データ利用(出口)部分

中国政府はこれらを1つ1つ時間を掛けて構築してきたのだ。万里の長城が長い歳月と膨大な手間を掛けて作られたように、金盾プロジェクトもたどってきたのだ。

金盾(きんじゅん)とは、中国で国家が政策として運用しているインターネット検閲・規制システムである。中国共産党の体制維持のために、日本では考えられないようなメディア検閲やネット規制がされている。今回は、中国のそれら検閲・規制を解説。

民泊アプリも中国に白旗

中国でVPNが全面禁止-ホテルもスマホも家電も監視下

中国で展開するサービスやアプリは、中国企業であれ海外企業であれ現地の法律に従う必要がある。たとえば、同マーケットを重視するアップルは、去年の秋にVPNアプリをAppStoreから削除した。

中国政府からの要望で、米アップルが中国ユーザ向けのApp Store(アプリストア)からVPNアプリを削除した。中国にいるユーザはどうしたらこの規制を回避してダウンロードできるのか?

また、中国で作成・収集したデータを国外に持ち出すのが原則禁止(正確には許可制)となったため、同社はクラウドデータを中国のローカル企業に移管している。

昨年夏にAppStore(アプリストア)からVPNアプリを大量削除した米アップル。来月から中国に設置したiCloudデータセンターの稼働を開始する。対象となるのは中国アカウント。手持ちのアップルアカウントが中国ならば、ラストチャンスである。

先月末(2018年3月末)に民泊で有名なAirbnb(エアービーアンドビー)も中国の法律に従う形で規約の一部変更を発表。今までは民泊の運営側が提出していた宿泊客のパスポートやその他の旅行情報を当局に自動送付するように変更している。

The home-sharing company plans to share guest information, including passports and booking dates, directly with the government. This week, it sent an email to hosts declaring it may disclose their information at any time — those with concerns were given a link to deactivate their listing.

Airbnb to Share Information With Authorities on Guests in China

なぜ宿泊客の情報を当局送付?と思った方は、中国でホテルに泊まったときのことを思い出そう。宿泊者の情報とともに、パスポートの写しを取られているはずだ。

ホテルに宿泊する場合であれ、知人宅に居候する場合であれ、外国人の居場所はその到着後24時間以内に”臨時宿泊登記”をする必要があり、法律で定められている。

これは憶測だが、民泊アプリであっても同法の適用がされる。ただ、民泊の提供側が面倒で提出をしないトラブルが多発してたのだろう。今後、これらデータはサーバから自動で送信されるようになったわけだ。

大手メーカのスマホもデータ送付

中国でVPNが全面禁止-ホテルもスマホも家電も監視下

上述の臨時宿泊登記は、法律の適用があるだけまだマシである。手持ちのスマホが自分のデータを勝手に送付していたらどうだろうか?

ここ数年、世界市場では中国メーカが躍進している。2017年のデータでは、サムソン(韓国)とアップル(米国)を除けば、ほとんどが中国メーカだ。パカパカ携帯時代にはシャープやソニーが人気だったのも、今や見る影もない。

順位は1位から、韓国Samsung Electronics、Apple、Huawei、中国OPPO、中国Xiaomi。前期と入れ替わったのはXiaomiのみ。前期の5位は中国Vivoだった。

メーカー別世界スマートフォンシェア、HuaweiがAppleに僅差で迫る

そんな中国メーカのスマホが勝手にユーザのデータを送付したり、バックドアと思われても仕方がないカラクリが含まれているケースが後を絶たない。

アプリだけでなくOSも… 以前から当サイトでは、繰り返し中国製アプリのセキュリティ上の懸念(正確には害悪)を警告してきた。中国製スマホ...

華僑メディアはそんな状況を皮肉って、スマホの急激な普及が監視大国に一役買っていると書くほどだ。同記事ではインターネットユーザの7割強は、プライバシー保護の危機にあるとしている。

中國的創新科技發展迅速,智能手機日漸普及,有調查預料,中國的智能手機用戶將會達到13億,冠絕全球。雖智能手機普及,有助打破科技鴻溝,中國有77%互聯網用戶都是透過手機上網,但同時亦曝露明顯的私隱問題,使智能手機變成最方便普及但不為意的監控工具。

【監控大國】智能手機變流動監控裝置 三大國產品牌設後門直送私隱上雲端

家電で監視システムを展開

中国でVPNが全面禁止-ホテルもスマホも家電も監視下

そんな監視はオンラインにとどまらず、オフラインでも推し進められている。

中国の沿岸部の都市や交通の要所に監視カメラが大量にあるのは周知の通り。ただ、カメラ映像は事後トラブルのために保持しているだけではない。犯罪や反政府活動を予防するために、積極に活用されている。

以前にご紹介したビジネス向けQQことTencent TIM。このTIMに付属機能としてOCR(光学文字認識)がついているのをご存知だろうか。ひょっとすると特定分野で中国のAI開発能力は、日本のそれを抜いているのかもしれない。

しかし、監視カメラを中国全土にくまなく配置するには、多額の資金とさらなる年月が必要だ。そこで、スマート家電を使って展開する試みがすすめられている。

これは農村部でのテレビ等の家電や携帯電話から個人情報を収集し、県・郷・村を徹底管理するシステムであり、現在、ほぼ完成しつつある。「雪亮」は広東省の家電メーカー、美電貝爾が開発したという。

中国農村を監視する「雪亮工程」

この雪亮プロジェクトも金盾プロジェクトのように、社会の安定と治安の維持という大義名分が与えられている。

“雪亮工程”是以县、乡、村三级综治中心为指挥平台、以综治信息化为支撑、以网格化管理为基础、以公共安全视频监控联网应用为重点的“群众性治安防控工程”。

雪亮工程_百度百科

ここ3~4年、中国の2級、3級都市を対象にスマートシティプロジェクトが多数動いている。その裏に中国全土を細かく把握しようとする当局の影が見え隠れするわけだ。もっとも、隠れているようには見えないが…。

人民にとっては福音?

これら一挙一動を把握しようとする当局の動きは、在中外国人から言わせれば迷惑である。プライバシーの侵害だ!と声を荒げたくもなる。

ただ、視点を変えてみる必要もある。中国は日本と比べて国土が約26倍広く、人口も約10倍多い。島国の日本と異なり、大陸続きのため追跡するのにも一苦労である。そのため、犯罪の規模も日本より大きい。

たとえば、中国では児童が1年間で20万人も行方不明になると言われている。20万人というのは東京・台東区の全住民に相当する。

VPNを禁止して中国全土をローカルネットワーク化して、接続する端末を監視。追いきれないアナログ部分を監視カメラ等で把握しようとする当局の主眼は、監視社会かもしれない。ただ、副産物として安全神話を生むとしたら、海外と関わることのないほとんどの人々にとっては幸せなのだろう。

なお、タイトルにある”中国でVPNが全面禁止”は法的な意味合いである。中国で規制されているサービスやアプリを使うには、引き続き海外VPNが有効なのは変わりない。

2018年も中国のネット規制は厳しい。出張や駐在で来るとGoogleはもちろん、GmailやFacebook、LINE(ライン)、Twitterなど使えないことに気づくだろう。昨秋からはYahoo! Japanも規制されている。そんな規制を突破する切り札-おすすめVPN-をご紹介。

『ところ変われば品変わる』ではないが、人類未曾有のプロジェクトで中国がどう変わっているのかは注目に値するのではないだろうか。