通報件数が前年比で約3倍-密告社会化する中国ネット

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市場開放の裏側では北朝鮮化

中国3大イベントの1つ国慶節も終わり、最大の目玉である十九大まであと3日となった。メディアは共産党の成果を誇張する自画自賛だらけだが、華やかな報道の裏で密告社会が刻々とすすんでいるようだ。

通報件数ではあの企業がトップ

中国当局は、今年上半期までに寄せられたネットの違法または好ましくない情報の通報数を発表した。別記事でお伝えしているとおり、今秋からネット運営者に加えてグループなどの管理者にも管理責任を問う規制が始まる。

中国当局のインターネットでの実名制がさらに強化される。今までのSNSを中心とする大手への規制から、中国国内隅々まで対象となる規制である。国民の口封じがさらに強まりそうだ。

これに先駆けて、企業への管理体制強化は夏頃から始まっており、その効果もあって今年の7月からは通報数が急増。8月の単月だけでも約650万件と前年比で約3倍である。単月でこれだけの数をさばけるだけの人員を確保しているのだからすごいの一言だ。

8月份全国网络违法和不良信息有效举报量达650.6万件,环比下降约4.0%,同比增长约1.8倍。同时,全国网络举报部门直接处理或向执法部门转交有效举报约631.1万件,通过各类渠道向网民反馈处理结果632.3万件。

中国ネットはアクセスがすべて監視されているので、当局が人民の一挙一動を追跡できる。ただ、ユーザ数が9億人近くいるのをすべて追跡するのは至難の業なので、アプリやサービスを提供する企業側にもその一部負担を義務化しており、これが通報数の増加につながったのであろう。

商用に限ると有効な-中国当局が受理した-違法または好ましくない情報が最も多かったのは、QQやWeChat(微信)を率いる腾讯(テンセント)である。2位の新浪微博(Weibo)に8倍近い差つけている。ユーザ数は同じくらいなのだが(いずれも自己発表で5億人)、アクティブユーザ数の違いが表れているようだ。

そんな状況を日本のマスメディア(ただし、産経新聞のみ)も取り上げ始めている。

中国のインターネット空間を舞台に“密告”が急増している。中国当局が管轄する違法通信告発センターによると、政権批判や違法集会、賭博やポルノなどに関するネット上の“問題発言”が、9月には415万件通報された。前年同月比で60%も増えたという。

【上海余話】1日14万件? 「密告社会」再び – 産経ニュース

今年の夏から腾讯(テンセント)と新浪微博(Weibo)どちらの企業も、内部にこれら違法または好ましくない情報を監視する部署を設けており、今後も件数は増加するのは間違いない。

10月18日から党大会(中国共産党第十九次全国代表大会)が開かれるのに合わせて、国内では規制が強化されている。検索サイト企業はサイバーポリスを結成、テンセントはプライバシー無視を掲げる。情報・言論統制が加速が止まらない。

通報アプリで一発通報

しかし、こういった中国当局や企業の監視部署も人数は限られる。また、国家プロジェクトである金盾が集めてくる膨大な情報から該当する情報をすべて見るのは限界があり当局も公式に認めている。

そこで中国当局が設けたのが通報専門の部署がある。その名も”中国互联网举报中心”で和訳するとインターネット通報センターになる。冒頭であげたレポートの中でも、このセンターへ国民に広く違法または好ましくない情報の提供を呼びかけている。

网络举报是网络空间治理体系的重要组成部分。举报中心将进一步采取措施,加大工作力度,及时受理和协助处置网民举报,维护公众合法权益,推动网络空间共建共治共享。欢迎广大网民通过举报中心网站、12377举报电话、(中略)积极举报网上违法和不良信息。

中国政府のネット化は日本のそれよりもすすんでおり、この通報センターも公式サイトに加えてWeChat上にも公式アカウント(jbzx12377)を持っている。なお、アカウントのjbzxは举报中心のピンイン頭文字である。

この通報センターのすごいところは、通報アプリを作って配布しているところだ。

”一键举报”を和訳すれば一発通報だが、iOSとAndroidにそれぞれ対応しておりプラットフォームを選ばない。しかし、一体誰得なのだろうか?

このアプリはとてもシンプルである。起動したトップ画面には”ネット通報”と”コールセンターへの通話”がドーンっと出てくる。

このうちネットでの通報機能は、最初に通報の起因を選択させる。ここには8種類のジャンルが用意されているが、これらを検挙対象としているということだろう。

それぞれの内容は以下のとおりだ。

  1. ポルノ
  2. 政治トピック
  3. 賭博行為
  4. 権利侵害
  5. テロ
  6. デマ
  7. 詐欺
  8. その他

これらのジャンルは別記事で取り上げた逮捕される9要因とほぼ重なっている。興味があれば別途読んでいただければ幸いだ。

中国当局が数年前から推し進めるネット実名制。10月からはQQや微信(WeChat)、掲示板もその対象となる。中国ネットで拘束・逮捕されないためのやってはいけない9つのことをご紹介。

ジャンルの選択が終わると、必要最低限の項目を入れると当局に情報を送信できるようになる。送信済みの通報内容がマイリストに一覧表示される凝りようだ。

中国のアプリとしては珍しく匿名モードが用意されている。そのため名前や連絡先を教えなくても通報できるようになっている。ただし、これにはオチがある。というのも、アプリはデフォルトで通話元になる電話番号を読むようになっているためだ。

実名登録制が義務化されている中国では、電話番号から身元の割り出しが可能である。匿名とは言いつつも、同じなのだ。国民の一挙一動を事細かく捕捉していく当局のやり方は北朝鮮の密告社会を彷彿とさせる。

外圧で中国はどう動く?

さて、そんな国民の一挙一動を捕捉するための政治制度やシステムが、当局の思わぬところで国際紛争の火種になっている。たとえば、カネの流れで言えば人民元はIMFのSDRになって1年が経つが、当局の厳しい外貨規制は未だに続いており自由化に逆行しているという指摘を受けている。

中国の通貨・人民元が、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に加わってから、10月1日で1年を迎えた。中国には、金融市場の自由化、国際化を果たす責任が求められたが、むしろ後退が目立った。

人民元、自由化・国際化責任に逆行…規制強化 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

また、今春から始まったデータの国外持ち出し規制は、データの元締めを絞り込むことで中国当局がデータの所在を把握しやすくするためだが、これもWTOへの提起に発展している。

実は米政府は今月のWTOの会合でこの問題を提起した。対米貿易黒字を抱える国に一方的な対抗措置をちらつかせてきたトランプ米政権が、WTOを使う姿勢を示したのはひとまず前進だ。日本はこの機を逃してはならない。

中国のネット安全法に日米連携で対処を:日本経済新聞

こういう外圧がいい方向に向いてくれることを祈るばかりである。

もっとも、やりすぎると「天宮1号」のように制御不能になって、どこに落下するかもわからないので、ほどほどにしてもらいたいが。