カタツムリより遅い光回線
中国電信は最近になって100Mの光回線サービスを始めた。日本が同じサービスを2000年に仮サービス、2001年から正式サービスを始めているので、単純比較して15年遅れている。そんな中国でたとえ光回線を引いても、日本のADSLにすらおよばない。なぜか?中国のネットが遅い原因を探ってみた。
海外サイトを使った時のイライラを数値化
海外のサイト、特に日本のサイトを開こうとして、遅さのあまりにクラクラ来ることはないだろうか。体感で遅いので、それを実際に数値として見てみる。
今回は自宅に引いてある10Mの光回線。もちろん、固定回線なので中国電信だ。
日本のYahooサイトに対してPINGでテスト。Yahooのサイトサーバ自体が東京にあるので、上海から東京にアクセスしていることになる。レスポンスは102ms前後。
送信サイズを1,400バイトまで増やしてみたが、ほぼ同じ程度。どこで遅くなっているのかを確かめるために、通信経路を見てみる。
その結果、同じネットワークの中で急激にレスポンスが落ちていることがわかる。「202.97.35.18」も「202.97.6.46」も同一のネットワーク内にあるのに、速度が1/8になる。
inetnum: 202.97.0.0 – 202.97.31.255
netname: CHINANET-BB
descr: CHINANET backbone network
descr: Data Communication Division
descr: China Telecom
country: CN → (中国)
どうやら、ここで速度劣化が起きているらしい。
越境アクセスのレスポンスはどこで落ちるのか
似たような海外へのアクセスを日本側でやってみる。日本の端末からアメリカYahooにアクセスをしてみた。
結果は、我々の感覚と同じで、海をわたって海外のサーバにたどり着くまでの間が最も長かった。この例では、NTT東日本の「129.250.12.201」から太平洋を横断してNTTアメリカの「129.250.5.70」で落ちている。中国のように国内で落ちたりはしていない。
自宅にある回線の問題だろうか?そこで、中国国内に対してアクセスをするとどうなるのか。有名ドコロの百度とテンセント(QQ開発元)にアクセスしてみる。
平均して、30ms前後で推移している。国内のサーバに対してはそれなりの速度が保たれている。この速度がこのネットワークの本来の速度だろう。つまり、海外に出るときにどこかで引っかかっていることがわかる。海外に出るときに必ず通るもの…それは「金盾」だ。この金盾が通信内容を解析しているので遅いのではないか?という仮説を立ててみた。
VPNを通した時のレスポンス
そこで、金盾が内容を解析しないVPNを使用した状態で同じく日本のYahooにアクセスしてみる。VPN接続時のIPは以下のとおり。
今回は、Hide My Ass! Pro VPNの沖縄サーバに接続した。
レスポンスを調べるために、同じくPINGを打ってみる。
結果は、平均58msとVPNを利用しなかった時の半分程度。一般にVPNは暗号化のパケットが付与されるのでレスポンスが落ちるのだが、ここでは逆の現象が起きている。念のため時間帯を午前、午後で変えてみたが同様の現象だった。日本側から中国端末に同じようなレスポンステストをしてみたが、中国発信同様で中国国内に入った後レスポンスが低下した。
中国のネットが遅いのまとめ
これらのテストからわかることは、金盾は単に検閲やネットワーク規制を行うだけではなく、VPNを使用しない場合でもレスポンス低下を引き起こしていることがわかる。
原因は金盾のサーバスペックの問題なのか、それとも金盾のシステム自体の問題なのか、それとも他の意図があるのかはわからない。ただ、1つ言えることは中国のネットが遅い!と感じるのは、単に回線が細いや日本から遠いということだけではなく、中国の検閲・規制システムが悪影響を及ぼしているということだ。
ネットが遅くてイライラしている人は、速度とレスポンスアップのためだけにVPN導入するのも有効な対策になるということだ。ただし、VPNを入れた場合でも速度劣化することがある。その場合は、次の記事を参考にしてほしい。
当サイトでも、中国で使えるVPNサービスをこちら(記事:中国おすすめVPN)で紹介しているので参考になれば幸いだ。
追記
中国の検閲システムは国策としてやっているため、解除される見込みは当面ない。そして、この検閲システム自体が速度低下を引き起こしているのは間違いない。ただ、このシステムは不具合が多く、導入時に思わぬ混乱を引き起こすことがある。
また、アクセス経路ごとにサイトやサービスが使えたり、使えなくなったりする。使えない場合に備えた2次、3次の予備を持っていくのが賢明である。
コメント
金森さん
コメントありがとうございます。
日本から中国のサーバを見る場合でも,金盾が邪魔をします。
これはin-outだけではなくて,out-inも見ているためです。
日本から中国のワケワカメなメールサーバ使わなくても海外メアド使えるので使わけするのが一番ラクだと思います。
で,必要であれば相互にアクセス(メール転送)するのがベストでしょう。
ご参考までに。
フリーメールをGmailとyahoojapanメールから、阿里邮箱个人版と沃邮箱に乗り換えてみようと、アドレス変更せっせとしてました。インターネット回線のことは詳しくないのですが、中国のフリーメール両方とも明らかに、読み込み困難、その後ようやく読み込める。gmail,yahooメールは一瞬でload。インターネット読み込みスピードは下り何mb/sだけではない!と感じ、このウェブサイトで答えを頂きました。中国フリーメールの日本からのデメリットとして、自分自身の記憶に留めるためにもコメント差し上げました。中国のフリーメールに乗り換えるだけでも中国の勉強になると思ったんですが、残念ながら日本在住では大問題フリーメールみたいです。
にっしーさん
コメントありがとうございます。
これは中国に限らず、海外との通信全般に言えることです。
ただ、中国の場合は特殊事情がこれに加わると思っていただければ…(笑)
自分はその100M回線を使っていますが国内だと80Mbps台なのですが海外だと25Mbps台ほどになっています(計測はwww.speedtest.net)。今まで疑問に思っていたのですがそういうことだったんですね。いつもこのサイト様には勉強になっております。
たらさん
いつもありがとうございます。
うすうす感づいていたことでしたが、テストしてみたらやっぱりね!みたいな感じです。
台湾サーバたまに混雑するようです。サーバの番号変えると案外あっさりつながったりします。
試してみてください。
こんにちわ、中国に渡ってから同じようにネットの遅さを感じていました。
pingが日本に比べて遅いのは知っていたのですが、こういうことだったんですね!
VPNによる速度改善も実体験ではなんとなくわかっていたのですが、数値で見ると一目瞭然ですね。
鎮江からだと台湾サーバーより沖縄の方がつながりやすいようです。