疾患が世界中に蔓延したり、大震災が起きるなど10年に1度くらいの危機的状況では制度の良し悪しが露呈する。従来のサービスとシェアサービスでもそれが垣間見えた。
シェアサービスはスポット提供のサービスを指す。一番有名なのがDidi(滴滴)やGrabなどタクシーの代わりに個人と個人を結ぶライドシェアサービスである。以前にも日本のタクシーがオワコンである旨で取り上げている。
今回紹介したいのは、RedmartやNTUC FairPriceに代表される宅配スーパーマーケットとシェアサービスである。
行き詰まった宅配スーパーマーケット
FairPriceといえばシンガポール在住者なら誰でも知っている大手スーパー。これに対してRedmartは店舗を持たない宅配専業スーパー。オフライン vs オンラインという構図だが、両者には似通った部分もある。
それは宅配サービス(Redmartの場合、必須だが)は、日当たりの取り扱い可能数に限りがあるということ。両者ともに一定数の宅配できるようにスタッフを固定で雇入れまたは専門の業者に委託しており取り扱いできる上限数がスタッフまたは宅配車両となる。
シンガポールの政策上、車両を維持するのに高額の費用がかかる。また、宅配しないスーパーと価格競争をする関係上、在庫コストや輸送コスト圧縮のため海外のスタッフを大量に雇入れしている。
先日行われたマレーシアの国境閉鎖に続きシンガポール政府も陸路を閉鎖したことで、宅配ヒューマンリソースが枯渇してしまったのだ。
マレーシア国境が閉鎖された翌日(19日)頃からRedmartの宅配スロットは埋まったままで、事実上使うことができない。Redmartの場合、在庫の一部をマレーシア国内に持っていたようで、システム上在庫があってもシンガポール国内に配達できないというおまけまで付いてきている。
Redmartの場合、ヘルプデスク業務を海外に委託しており(ただし、割合は不明)フィリピン政府の首都封鎖の煽りでヘルプデスク業務もパンクするという泣きっ面に蜂状態であるのはお伝えしたとおり。
FairPriceも似たような状況で、向こう1周間が埋まっている上に宅配スロットの拡充の見通しが立っていない。
生鮮食品はともかく、重たい水などの飲料水や粉ものの洗剤、かさばるカップ麺とか運びたくないですよね?さて、困った…である。
シェアサービスが殴り込み
と、ここで思いも寄らない伏兵がシェアサービスである。
もともとシェアサービスの担い手は、地元または長期ビザを持っている人がメインである。彼らはシンガポールの政策が変わってもあまり影響を受けない(外出禁止令除く)。ここに目をつけたシンガポールのシェアサービスが宅配業務を始めたのだ。
まず、シェアサービス大手のGrabが、Deliveryに加えて、いつの間にかGrab Martなるものを提供開始。
サービス自体はGrab Foodと同じで店舗と消費者を自社と契約している宅配人に依頼をして宅配してもらうというもの。そのため、一般用品全般を幅広く扱う。RedmartやFairPriceと異なるのは、宅配元がそれぞれ独立した店舗という点。
よく見るとFairPriceがちゃっかり便乗している。ただ、FairPrice自身と異なるのは生鮮食品や冷凍食品などは一切取り扱っておらず、パッキングされていて搬送中の破損に強いものに限られるという点。
foodpandaならぬpandamart
Grabに加えてフードデリバリー専門だったfoodpandaが、pandamartなるものを立ち上げて類似のサービスを開始している。こちらは武漢肺炎が猛威をふるいはじめた2月半ば頃からだったと思う。
今回を商機と見ているようでfoodpandaを起動したあと、こんな分岐画面が出てくる。
本来であればpandamartという独立のアプリか両者を包括するようなブランド立ち上げが好ましいのだが、時間節約のためfoodpandaのアンダーで滑り込ませている。
Grab Martと異なるのは現在ボリュームを追いかけている(新規利用者の獲得)ためであろう送料無料という点。最小消費金額も送料も要らないのだからこれは便利である。
pandamartの場合、先に紹介したSocial distancingを取り入れており、配達物の玄関先までというオプションも用意されている。
コンドミニアムの場合、セキュリティ上そもそも上がってこれないし、HPBだと廊下が狭いので隣人に蹴っ飛ばされそうな気がするが。
武漢肺炎が収束する頃には、没落するサービスがある一方で、商機を掴んだ新サービスが消費者のハートをガッチリ掴んでいるのだろう。
というわけで、デリバリーで困っている方はぜひ使ってみてはいかがだろうか。
コメント