先日、医療機関で専門家に診断を受けたところ、ASD(自閉症スペクトラム)と結果を頂戴した。この過程でシンガポールでできること、難しいことを調べたので備忘録として残したい。
4歳、でも喋らない。おかしいぞ?
わが家には子どもが二人いて、そのうち上の子は言葉が出てこない。1歳半検診で引っかかったら、一度専門家に見てもらいましょう!という呼び掛けがあるが、子どもの発達にはばらつきがあるだろうと考え経過観察していた。
なお、自治体が配布している発達のマイルストーンとして…
- 3-4ヵ月:笑う
- 7ヵ月:喃語(あ~とか、う~とか)
- 1歳-1歳6ヵ月:有意語
- 2歳-2歳6ヵ月:2-3語文
- 3歳:自分の名前がいえる
上の子はとても活発で、どんなにお腹が空いていても食事で座ったことがない。シンガポールに来る直前あたりからひょっとしてADHD(注意欠陥・多動性障害)かな?と疑っていた。
疑いが強くなったのは、3歳検診である。3歳過ぎていたが、なにもしゃべらない。言葉が遅いのではなく、有意語はパパやママもしゃべらなかった。
当時の小児科医から『言葉の遅い子は20-30人に1人見かける』と。ADHDの可能性を聞いたときに『喋らないならば自閉症かもしれません』と。さて。
言語セラピストに通い始める
2歳過にシンガポールにある日系幼稚園に通わせることにした。集団生活の中で言葉やルールを身につけられるのでは?と思ったからだ。その幼稚園からも、3歳過ぎたころに言語セラピストはどうですか?と言われる。そこに医師からの言葉である。
ここでボチボチ動き始める。セラピスト訪問の記事について書いたのもこの頃。
このときもそのうちしゃべるだろうと高をくくっていた。学校生活(集団生活)は問題なく過ごせていたからだ。
なお、このセラピストプログラムに周1で通いつつ、家の中でもあれこれやってきた。ただ、まだ子どもは喋りたいというレベルになっていないようだ。その中でも進歩があり、終始無言(怪獣語)だったのが、数語喋るようになった。
今で喋れる言葉は数えるほどであるが…
- 爸爸(パパ)
- 妈妈(ママ)
- 哥哥(私)
- 妹妹(妹)
- Yes
- No
- OK
- GO(なにか物事を進めたいとき)
2-3語は難しいのか、短母音を繰り返す以上のことはやりたくないようだ。さて、どうやってブーストしたらいいのか?と思い始めた。
聴力に問題なし
この頃、喋れない原因をいくつか探っていた。検診でよく聞かれるのが下記3つ。
- 聴力に問題
- 理解力の問題
- 滑舌(舌周り)に問題
聴力は3歳前に一度シンガポールで行っていた。ただ、ブースト問題を考え始めた頃、シンガポールのプライベートクリニックに不信感を抱くような出来事が連続する。
聴力の程度に問題または理解力に問題があるのかもしれないと疑い、聴性定常状態誘発反応(ASSR)-睡眠状態で音に対して反応があるかのテストも受けた。
結果、シロ。検査官からは良好ですね!と笑顔で返される。同じ頃に滑舌周りについても見てもらうが、こちらもシロ。
いよいよ、なんだこりゃ?となる。
シンガポールで発達障害の診断が受けられる医療機関
そうなると、理解力不足またはもっと深刻な問題なのでは?とようやく疑いはじめる。医療機関と発達障害への対応を検討しはじめた。
小児科医がいても、療育の専門医およびセラピスト(言語療法士や臨床心理士)がいるところは実は多くない。シンガポールのKK Women's and Children's Hospitalはこの分野で有名。ただ、英語がとても苦手な嫁様が対応できないため日系で探す。
知る限りでは、実施できるのは2機関。
- ラッフルズジャパニーズクリニック(https://rafflesj-clinic.com/services/counceling/)
- 日本人会クリニック(http://www.japanese-clinic.com.sg/jacs_outpatients/index.php)
情報の過不足はあるが、相談機関を検索できるウエブサイトも存在する。
ASD診断来た
なかなか取れない予約にイライラしつつも、日程をこなす。結果はASD(自閉スペクトラム症)で、ここまでは予想通り。
ここからが難しい。ASDが診断をあとに、投薬や手術で治るわけではないからだ。大塚製薬がまとめている自閉症スペクトラムのまとめサイトが秀逸なのだが、診断のあとの道のりが長期戦なのだ。
日本では行政(療育機関)、医療機関、学校機関がスクラムを組んで対応する。しかし、シンガポールの場合、選択肢が限られている。
これは、なかなか難しそうだ。
小さくて大きなことばの壁
わが家は日本人+中国人の組み合わせ。シンガポールにいる日本人界隈では、中国語問題がよく出てくる。そのため、中国語できると便利ですよね?と聞かれる。
ただ、当のわが家がシンガポールに住んでいて思うことは、英語メインの国だということ。
- 中国語 → 新移民(近年、シンガポール国籍を取得した中国人)を含む中華系であればおおむね通じる。ただし、発音の良い/悪いやボキャブラリー数はかなりばらつきがある。もともと彼らの出身地は南方(福建語、潮州語、広東語や客家語)が多いこと、ここ30~40年で中国語(普通话)を導入しているので、医師や経験豊富なセラピストなど、上の世代になるほど中国語不可または意思疎通が円滑ではない。
- 英語 → こちらは選択肢が豊富にある。ただし、家庭内で英語でサポートできるかどうかが鍵。わが家は夫婦揃って母語が英語ではない。
- 日本語 → 需要が限られているため、供給(セラピスト)がとても限定される。当地で仕事されているセラピストも赴任や一次滞在でいる方が多いようで、募集をよく見かける。当然、日本語が話せるようになった場合でも、生活で第二言語が必須。
シンガポールの福祉政策
シンガポールの福祉政策は、自助努力が基本。そのため、シンガポール国民でも医療費はかかる。ただ、国からの補助制度がある。
この制度に、外国人は含まないのですべて実費となる。カウンセリングが1回あたり150-250S$(12,000円~20,000円)ほど。日本では国や地方自治体の援助があるので1回あたり1,000円~2,000円くらい(地域や地方自治体によって異なる)になる。
また、要支援児童の学校(スペシャルスクール)は、国民・PR優先でまだ空き枠がある場合のみ外国人の児童が入学できる。ただ、学費については国民・PRと比べて相当割高になる。
聞きかじったレベルではあるが、発達障害が判明したあとシンガポールを去る両親は多いようだ。療育体制の問題と金銭的な負担が現実問題として解決しづらいからだろう。シンガポールで療育続ける人の多くは、配偶者がシンガポール人のケースが多いらしいようなので、わが家のようなケースでは問題山積みとなる。
と、言うわけで現在進行系です。
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