Facebook含むSNSを規制する中国
現代のソーシャルメディアで有名なサービスは、Facebook(フェイスブック)とTwitter(ツイッター)。そんなFacebookを中国でどうやったら使えるか?逃げ道がないかトライしてみたのでご紹介。
Facebookと中国の規制
中国では、ウイグル弾圧の前後の2009年7月に同サービスを規制している。Googleトレンドからも同じ傾向が読み取れる。
キーワードトレンドを詳しく見ると、ピークが2010年の3月。その後も、季節の変わり目にコンスタントに上がっている。外国人が中国にやってくる変わり目-たとえば外資社員の赴任や留学など-に中国へやってきて、またはその直前にチェックをして検索が跳ね上がっているのだろう。同じ時期にTwitterや類似サービスが規制されており、キーワードトレンドも同じように変化している。
言語を英語に限ってキーワード検索すると、”Twitter”と同じ傾向が読み取れる。規制直後に上昇をして、ここ1~2年で落ち着いている。中国のネットワーク規制が周知されたことや、先日報道されたVPN規制などが原因と思われる。
ただ、ユーザ数が異なるため、検索ボリュームが7倍近く異なるものの、一定の需要があることがわかる。
では、そんなFacebookを中国で使う方法はあるのだろうか?
1.Web版Facebook
まずは、Web版のFacebookについて。
Facebookの公式サイト(https://www.facebook.com/)は規制されており、開くことができない。ドメイン名(facebook.com)はもちろん、転送先のIP(たとえば、31.13.82.36など)についても徹底的に規制がされており、開くことができない。
この状況はTwitterと同じ。
上の図は、規制対象の一覧である。これを見るとわかるのだが、メインのドメイン(facebook.com)はもちろん、サブドメイン(api.facebook.comなど)も含めてことごとく規制されている。キーワードでの検索で使われた場合も、規制が3回に1回かかるのだからFacebookの存在自体知らない中国人も多数いるだろう。
同じ理由から、モバイル向けに使われている「m.facebook.com」も規制されているので使うことができない。Yahoo!台湾のサブドメインがブロックされていないのに比べると、海外のSNSへの対応は徹底している。
Web版Facebookについては、Twitterと症状が同じなので、VPNで海外に出てアクセスするのが唯一の方法になる。
2.モバイル版Facebook
数年前までは、金盾には不具合(欠陥)があって、サブドメインを総当りすると抜けられるという方法があった。たとえば、Yahoo! 台湾はアクセスができないのに、モバイル版はアクセスできる…といった具合である。
しかしながら、金盾はこの数年で機能が充実している。このため、Web版Facebookで検証したとおり、モバイルアプリで使っているサブドメインに規制がかかっている。このため、そのままでは、使うことができない。
モバイルの場合、モバイルアクセス(データアクセス)とWifi接続があるが、現状ではいずれの通信も規制される。そのため、そのままでは使えない。
3.互換版Facebook
Facebookには多数の互換ソフトウェアがリリースされている。TwitterもFacebookも同じアプリでみたい!というユーザ要望に答えたソフト会社が開発したものである。独自の認証やデータ転送をしていれば、規制回避ができるのだ。
ただし、現在のFacebookは認証を必ずfacebook.comドメインで行うように強制している。このためTwitterの場合と同じで認証自体ができない。せめて認証機構だけでも外部またはサードパーティ的な方法が許可されていればいいのだが、独占的なFacebookはそれを認めていないのでどうしようもない。
互換版Facebookも使うことができない。
4.モバイル版Facebook Messenger
今回取り上げたいのは、モバイル版向けメッセンジャーである「Facebook Messenger」だ。以前のFacebookは、このメッセンジャー機能が内包されていたのだが2015年頃から独立したアプリとしてリリースされた。
このメッセンジャーアプリは、Android、iPhoneやiPad向けにもリリースされている。特に小細工をしないで使うと、前述した1から3のケースと同じで、VPNが必要になる。
VPNがない環境で起動をすると、上の画面のように、いつまでも「Connecting」から動かない。そのまま放置すると、サーバ接続に失敗しましたとエラーが出て終了する。
罰ゲーム仕様?
ところが、不思議なことにこのメッセンジャーは、『通知の受信だけ』はVPNがなくても動作するのだ。動作する前提条件は、以下のとおりだ。
- メッセンジャーアプリを起動しない
- アプリ通知を有効にする
- データ同期が有効
この状態で、誰かがFacebook上からメッセージを投げると、受信した時にポップアップが正常に出てくるのだ。
しかし、このメッセージを見てメッセンジャーを起動しても、3の場合と同じで接続ができずに読むことができない。Facebook本体も同じで、通知だけなら受け取れる。どうやらプッシュ通知を受ける機能は、規制対象外のサブドメインから発信されているためであろう。
もっとも、Facebook上で中国在住の人にメッセージを送っても、送信済にはなっても既読情報を送信できないので放置されたようにみえるわけだ。短文で全部読めても、、返信ができない。なかなかの罰ゲーム仕様である。
Facebookのメールアドレスもブロック
Facebookにはメールから投稿するという機能がある。どうしても中国からFacebookのタイムライン上に投稿したい場合、この方法が実は残されている。しかし、この方法はメールアドレス(メールサーバのドメイン)に依存する。
理由は、中国当局の要請で2017年7月末頃から中国のメールサーバが特定ドメインへの送信を止めているためである。以下、12vpnがリリースしている情報である。
If you do use a Chinese e-mail provider, you will find that you are no-longer able to send e-mail to many blocked domain names. While websites like twitter.com, facebook.com, youtube.com and 12vpn.com have been blocked in China for a long time, their e-mail still worked. Now their e-mail is blocked as well. You may be able to receive e-mail from them, but your reply will not arrive.
今後もサイトやサービスに限らず、メールなども対象となるようである。
希望の光としては、Facebookのトップであるマーク・ザッカーバーグ氏がたびたび中国にラブコールを送っていることだ。
米フェイスブックは24日、中国に子会社を設立したことを明らかにした。また、現地の新興企業やソフト開発者の支援に向けた「イノベーション拠点」を創設する計画という。中国ではフェイスブックの利用が禁止されているが、プレゼンス拡大に向けた取り組みを進める。
2018年のこの報道以降、中国に法人登記を行っている(ただし、1周間もしないうちに取り消しされているが…)。粘り強い交渉とバックドアと引き換えに、そう遠くない未来に中国版Facebookというのができて一部解禁となるかもしれない。
Facebookを中国で使う方法のまとめ
もっとも、現状では中国国内でFacebookを見る方法は、VPNしかない。
Web版でもモバイル版でも、また互換Facebookを使うにしても、中国ではそのままでは手も足も出ない。残念ながらVPNを使うほか、方法が見つからなかった。
海外スマホなどで、データローミングをする場合を除けば、中国国内の通信が規制されているためにやむを得ない。裏技的にリモートデスクトップで海外PCにつなげるのを入れようかと考えたが、一般的ではないので取り上げない。
中国でFacebookが使えなくて悶々とする諸兄の役に立てば幸いだ。
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