中国生活で切っても切れないもの、それは規制
金盾(きんじゅん)とは、中国で国家が政策として運用しているインターネット検閲・規制システムである。中国共産党の体制維持のために、日本では考えられないようなメディア検閲やネット規制がされている。今回は、中国のそれら検閲・規制を解説。
中国の検閲・規制について
中国では、すべての情報を国家が統制している。
新聞、雑誌、ラジオ、TVはもちろん、携帯電話のSMS(ショートメッセージ)、通話内容にいたるまで。そして、すべてのメディアは国家から許認可制で運営されている。この許認可は当局の裁量に左右されるため、メディアは当局に生殺与奪権を握られている。このため、中国で出回る主要なニュースは、どのメディアを見ても同じように表現される。さらに、データソース(情報元)が複数であっても、国が管理しているため国のプロパガンダにとどまっている。
中国には一説によると、300近いテレビ局があるそうだ。しかし、上述の理由から、どれを見ても似たような論調、似たような主張を展開する。
たとえば、中国で2010年ノーベル平和賞を中国人(劉暁波氏)が受賞した。外国籍に鞍替えした中国人が過去に受賞していたが、純粋な中国人の受賞ははじめてであった。ノーベル賞を喉から手が出るほど欲しい中国政府としては、名誉なことのはずだ。
しかし、この劉氏は人権活動や民主化運動に参加し、中国当局と度々ぶつかってきた人物である。当局から見れば不愉快な存在なのだ。そのため、中国のマスメディアはこの受賞を非常に小さく扱った。
300も局があるのに一様に扱いは同じで、国民のほとんどは受賞のことすら知らないのである。中国国民は情報を知るための手段がほとんどないため、彼が中国で何をして、その結果受賞に至ったのかを知ることもできない。
2017年に同氏が中国当局の意図的な落ち度で末期がんになり死去したときも、追悼のメッセージを片っ端から削除するような国である。
中国の厳しい言論統制を逃れ国外に亡命した中国の知識人や人権活動家はツイッターやネットメディアを通じて悲しみや怒りを表明した。
だが中国国内では、劉暁波に関する情報は厳しく制限された。最大のソーシャルメディア、微信は、死去を知った多くのジャーナリストや学者らが追悼のメッセージを書き込んだが、次々と削除された。
当局の意向がそのまま反映されているのが中国のメディア媒体ということになる。
インターネット規制について
既存のメディアについては上述のとおりだ。では、新しい手段であるネットはどうだろうか?
インターネットにおける情報の重要性は、中国共産党も早くから認識していた。そのため、中国当局はインターネットへの施策を90年後半に立案・実施していた。その内容は、1つは国外と国内に対して、もう1つが国内と国民に対してであった。
中国<->海外
国外と国内に対してやっている施策が金盾(中国語:金盾工程、拼音:jīndùn gōngchéng)と呼ばれるプロジェクトである。
この計画が始まったのが1998年でWindows 98が出回り日本ではインターネット開花がした頃。そして、2001年にはプロジェクトが開始。このプロジェクトはとても大掛かりで、システムで補いきれない部分は、サイバーポリスと呼ばれる数千万人の監視員と体制に協力的な人を総動員し、手動で摘発にあたっている。
言論の自由や思想の自由を尊重する西側諸国と相容れない、正反対の政策と言えよう。金盾が具体的な規制に対して、理想やアウトラインを決めるのが互联网信息办公室である。時の政権の目指す方向について具体化する部署であるが、ここの元トップが拘束されている。
党が黒と言えば黒、白と言えば白なのだ。
なお、2017年から中国においてVPNの運用は当局の許認可が必要となっている。同年から2018年の初頭まで当局による登録が行われて、4月から許認可を持たない(主に海外の)VPNサービスは違法状態となっている。
ただし、違法状態になったからといって使えないわけではない。公的に当局が立場を表明したというところだ。
国内<->国内
もう1つの国内と国民に対して行っているのが許認可制度。
中国国内では海外から勝手に持ち込んだ携帯が禁止されている。中国国内で販売されている携帯電話には個別に番号が割り振られており、誰がどこで何を発言したのかがわかるようになっている。高等教育機関の職員や金融機関のスタッフを対象とした調査で、海外から持ち込んだスマホの利用を問いただす設問があるくらいだ。そのくらい中国当局は、国内のすべての端末を監視下に置こうとしているのだ。
おまけに、企業やポータルサイト全部に政府が指定する監視ソフトの導入が義務付けられており、これがないと公開ができない。
たとえば、Googleの中国語版の百度(バイドゥ)ですが、ページ下にちゃんと”京ICP证030173号”というのが書いてある。これが許認可を得ている証拠になる。そして、このソフトが入っているということ=誰が何をしたのかが当局に全て筒抜けになっているということになる。この許可を外資が取るのは事実上不可能で、中国の情報を中国人が政府の干渉のもと、完全に掌握しようという試みなのだろう。
規制対象となっているサービス
中国で規制対象となっているサービスを一覧化したまとめがあるので、参考にしてほしい。
インターネット規制の影響
中国は外国であるし、中国政府が国民をどうこうしようと外国人の我々には口出しする権利はない。ただ、そんな閉鎖国家に住む外国人にとって、自由な閲覧ができな中国のインターネットは非常に不便である。
海外に留学や仕事で生活している邦人は約133万人いる(2016年統計)。国別で見ると、1位は想像通りだがアメリカで全体の1/3に相当する42万人。実は、アメリカについで多いのが中国なのだ。
9%相当にあたる12万人(台湾含まない)が住んでいる。ピーク時には15万人いたが、相次ぐ反日デモや大気汚染、人件費の高騰などでここ数年はずっと減少で移行している。
とはいえ、12万人は長期滞在なので、出張を含めれば相当数になるだろう。
インターネット規制は回避できるのか?
中国に現地化して、世界がどう動いているのか気にならない人やプロパガンダも見通せる人であれば気にならないかもしれない。しかし、日本で自由なネットアクセスを享受してきた人であれば、不便に思うはずだ。
毎日使っていたGoogleで検索はできない、Gmailは開けない。Youtubeで動画を見ることも、Facebookで友達の日記をながめることもLINEで連絡をすることもできないからだ。
以上のとおり、中国においては金盾が海外と国民の間に立ちふさがる”電脳版万里の長城”として立ちふさがっているのだ。
ある種、軟禁状態である。そんな中国で外国人が自由に情報を手に入れるのは非常に至難の業。では、どうしたらいいのか?
その回答がVPNという仮想ネットワーク技術である。この技術は、中国のネット規制を回避するために開発されたものではない。しかし、結果として『中国 vpn』や『中国 規制』あたりで検索するとこのキーワードにヒットする。
中国に出張・駐在するようになって、あれ?と思った方の手助けになれば幸いである。
コメント
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