中国当局が数年前から推し進めるネット実名制。10月からはQQや微信(WeChat)、掲示板もその対象となる。中国ネットで拘束・逮捕されないためのやってはいけない9つのことをご紹介。
”中国ネット”の範囲はどこまで?
ネットが関係する逮捕事例と言えば、違法な物品やコンテンツを販売・やり取りするサイトが思い浮かぶかもしれない。ちなみに、中国でパブリックなサイトを運営するには、当局からの許可が必要である(いわゆるICPライセンス)。
自分はサイトを持っていないから関係ない…と思った人は、気をつけよう。先日公開した記事でも述べているが、新たに施行される規定では個人が身内に対して発信した内容もその対象となるからだ。
新たな規定”互联网群组信息服务管理规定”が対象とするのは、以下のようなグループが含まれる。
- 微信群(グループ)
- QQ群
- 微博群
- (百度などの)贴吧群
- 陌陌群
- 支付宝群
- 掲示板など…
これらグループをまったく使っていない人がどれだけいるだろうか?たとえば、中国現地法人の社員グループなどに入ってないだろうか。これも対象となっている。
逮捕される9つのこと
では、どういう内容を発信すると拘束・逮捕される可能性があるのか?ここ2週間、複数の中国ネットで取り上げられているのが、次の9つである。
- 敏感な政治トピック
- デマの拡散
- 内部資料の暴露
- ポルノ・薬物・危険物
- 台湾・香港・マカオのニュース
- 軍事資料
- 国家機密
- 公安当局を煽るようなコンテンツ
- その他違法なモノ
実は目新しいものは一切ない。多かれ少なかれ当サイトでずっと取り上げてきたジャンルばかりである。ただ、今回の新規定で対象となる人が大幅に増えただけである。最近、日本のメディアも取り上げる中国版ニコ生主催者による過激なコンテンツもここに含まれる。
拘束・逮捕事例
上述の9つだが、いくつかはすでに逮捕事例がある。
事例1:ポルノ・薬物・危険物
沈阳青年吴某用微信建了一个100余人的微信群。群员马某在群中每天都发布“有大片看”信息,向群员收取数十元会费,每天向交钱的人发送淫秽视频。群主吴某因视而不理,涉嫌构成传播淫秽物品罪,被警方依法予以刑事拘留。法官表示依据两高的司法解释,“利用互联网建立主要用于传播淫秽电子信息的群组,成员达30人以上或者造成严重后果的,对建立者,管理者和主要传播者,以传播淫秽物品罪定罪处罚”。
(要約)100人規模の微信において、グループ所属者が数十元の会費を徴収し、ポルノコンテンツを発信。グループ創設者(管理者)も自身が鑑賞していたため、適切に処理をしなかった。このため、グループ創設者とコンテンツ発信者をわいせつ物頒布罪で処罰。
この逮捕事例からわかるのは、メンバーが違法なコンテンツを発信した場合その管理者も責任追及を受けるということだ。
事例2:公安当局を煽るようなコンテンツ
安徽阜阳界首市男子杨某因不满交警夜晚查酒驾,在一自己建立的微信群中发布“他们傻X吗,下雨还查?一群傻X穷这个样”等侮辱性言语,在微信朋友圈造成不良社会影响,被当地警方以涉嫌寻衅滋事行政拘留五日。
(要約)交通警察の取り調べを受けたグループ創設者が自身の微信群において、公安当局を侮辱する発言。行政拘留を5日間受けた。
文中にある”行政拘留”と言うのは日本には存在しない。百度百科によれば以下のような行政罰としている。
行政拘留是一种重要的也是常见的行政处罚的种类。行政拘留是指法定的行政机关(专指公安机关)依法对违反行政法律规范的人,在短期内限制人身自由的一种行政处罚。
15日以内を上限とする身体拘束を伴う行政罰としている。驚きなのは”行政拘留裁决权属于县级以上公安机关”としていることだ。司法機関の判断を経ずに行政機関(公安当局)自ら決定できるのである。中国の公安当局は態度が悪くて横柄なため人気がないが、こんな行政罰を公安当局自身が好き勝手にできるのではたまったものではない。
もっとも中国の場合、三権分立とは程遠いので同じではあるが。
事例3:その他違法なモノ
家住阜新市海州区的董某以网名“阿联酋”的身份在手机微信客户端里建立了微信群,先后命名为“撸九子”,“撸管子”,“撸九VIP游戏”等,并组织40余人以制定规则以发红包的形式进行赌博活动,从中抽取红利。法院经审理后,判处主犯董某,犯开设赌场罪,判处有期徒刑二年零六个月,缓刑三年,并处罚金人民币5万元。
(要約)微信群のあるグループ創設者は、红包機能を利用して賭博場を設置し賭博行為をしていた。グループ創設者は賭博の主犯として賭博開張等図利で懲役2年6ヶ月の実刑判決および5万元の罰金。
この事例で出て来る红包機能についてご存じない方は、以下の記事で触れているので読んでいただきたい。
しかし、红包機能を使って賭博開帳するというのはまったく思いつかなかった。中国人は常に斜め上をマッハで飛んで行くなぁと感心である。
ほかにもある注意点
上述の9つに加えて在中邦人が気をつけたいこととして、スパイ法やサイバーセキュリティー法などもあることだ。
たとえば、中国当局がピリピリしている天安門事件などをQQや微信などのグループなどで発信すると本規定で逮捕されるだけではすまない可能性があるのだ。
日本は安全である。爆破や殺害予告でもしなければ逮捕されることはないだろう。しかし、この常識は中国の非常識である。重々気をつけていただければ幸いだ。
余談
今回のタイトルは、ネットで最近流行りのタイトル風で書いてみた。いわゆる『○○するためのたった×つのこと』的なものだ。○○にはプラス思考のワード(たとえば金持ちや成功だったり)、×には奇数の数字(ほとんどが1か3)がくる。書籍のランキングでもがんがん出てくる。
この点、中国-特にネット界隈-はダークである。ハッキングやら逮捕など危ないワードやら”○○ができない”といったネガティブ思考だらけである。過去の記事をざっと読んでみても、ネガティブキーワードのオンパレードである。
こうなると書いている方も気が重い上に、法律用語だらけでうんざりである。面白おかしく書いた記事と言えば下記くらいなのだが、どうにかならないものだろうか…?
コメント
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