駐在生活のために何を準備すればいいのか?
海外市場の開拓や工場運営を効率化するために、社員が海外赴任・駐在する機会は以前よりも増えている。数ある海外の中でも、中国はネガティブな報道が多いために不安を抱く人は多いようだ。私の赴任体験から、駐在前に日本でやっておけばよかったことを紹介する。
これからこの大陸に赴任する人の参考になれば幸いだ。
お金に関すること
どこでも必要なもの、それはお金。
現地法人から給与を受ける(ダブルペイ)場合でも、本給与は日本での受け取りになるはずだ。現地で足りなかったときや万が一に備えて、取り出せるようにしておくのはとても重要である。日本の銀行は、日本に住所があることを前提としているので、窓口や郵送での手続きが必要なケースが多い。赴任前に終わらせよう。
1.ネットバンキングの開設
何らかの理由で、日本の別口座へ振込が必要になったらどうしようか?
国外のATMから日本の口座へ振込はできない。中国の銀行から、窓口で海外送金は可能だ。その場合は、中国語が必須となる。日本にいる代理人にお願いもできるが、気が引けるし不便である。
そこで、活用したいのがネットバンキングサービスだ。辺鄙な中国もインターネットは整備されている。ネット経由で日本の銀行口座を操作できるのでとかく便利である。
よく使うのは、次の3機能だろう。
- 口座の照会
- 振込(日本のクレジットカード決済講座と給与口座が異なる場合)
- メール通知
駐在後に必要なっても、ネットバンキングはすぐに利用ができないケースが多い。最近は、ネット詐欺防止のため暗号カードやワンタイムパスワード端末を送付することが多いからだ。この送付が申込みから2~3週間かかるのである。
また、家族全員で中国へ住んでいる場合、申込み自体ができない可能性がある。要注意。
2.海外ATM対応カードの発行
銀行カード(キャッシュカード)は、海外のATMで使えるものと使えないものがある。一般的なカードはほとんど使えない。なお、手持ちの銀行カードの裏側を見ると、対応しているかどうかがわかる。
『PLUS(プラス)』や『Cirrus (シーラス)』と書いてあるものであれば、海外ATMで出金ができる。
出金できる場合でも、上限金額がある。たとえば、新生銀行のキャッシュカードはデフォルトで海外ATMに対応済みなのだが、海外での引き出しは10万円に固定されている。
国内サービスと海外サービスで規定が異なることが多いのでよく読んでおこう。
手数料について
海外ATMで出金した場合に気をつけたいのが手数料。国内のATMで出金する場合と異なる場合が多い。新生銀行では、以下のとおりだ。
引き出し金額+3~5%程度の加算レート手数料(方法次第)+(日本の銀行の手数料)+(現地銀行の手数料)
たとえば、現地銀行のATMで1,000RMBの引き出しを、為替レート19円/RMBのときにやると
19,000円+4%の手数料760円 合計19,760円
となる。
銀行別手数料の一覧
発行元 |
年会費(税込) |
加算レート |
手数料(税込) |
キャッシュバック |
---|---|---|---|---|
新生銀行 | 無料 | 4% | 無料 | なし |
シティバンク | 無料※1 | 3% | 216円 | なし |
楽天銀行デビットカード | 1,029円 | 3% | 無料 | なし※2 |
SURUGA Visaデビット | 無料 | 3% | 216円 | 0.2% |
JNB Visaデビット | 無料 | 3.02% | 無料 | 1% |
りそなVisaデビットカード | 1,080円 | 2.5% | 無料 | なし※3 |
あおぞらキャッシュカード・プラス | 無料 | 2.57% | 216円 | なし |
三菱東京UFJ-VISAデビット | 1,080円 | 3% | 108円 | 0.2% |
※1 シティバンクは残高で口座管理費が掛かるので注意(Citibank | 手数料について | シティバンク銀行)
※2 楽天スーパーポイントの付与あり
※3 りそなポイントの付与あり
3.クレジットカードの有効期限
中国で物を買ったりサービスを受ける場合は、銀聯カード(Union Pay)があれば十分だ。最近では、この銀聯カードにひも付けた支付宝(Ali Pay)やWeChatで支払いもできるので、カード自体持ち歩く必要がない。
むしろ、VISAやMaster、JCBカードは、外卡(ワイカー)と呼ばれて使えない。使える場所は、大型の百貨店、外国人の多いレストランなどに限られる。
ただ、大型連休で中国から出て海外に行くならば、VISAやMasterの方が便利だ。また、海外のネットで物を買うときも同じである。
そこで、注意したいのがクレジットカードの有効期限の確認やPIN(パスワード)の確認である。もしも、有効期限が間近に迫っており、国内で更新されたクレジットカードを受け取る方法がないのであれば、紛失扱いにして再発行するのも手である。
日本のクレジットカードはキャッシュカード同様に、日本に収入があって住所があることが前提となっている。更新や紛失時の再発行で郵送先がないと失効する。あらかじめ、日本国内に郵送先も確保しておきたい。
自己防衛に関すること
海外にいるときに重要なものは1にパスポート、2にお金である。そして、3番目がセキュリティに関することだ。
中国は日本を含む海外と違って情報へのアクセスが自由ではない。また、民主主義国家でもないので、何が起きるかわからない。自分の身を守るための手段を確保しておこう。
4.携帯電話(スマホ)の準備
FacebookやTwitter、Googleなどは、身元確認にSMSや通話を使う。ローミングをする場合でも、現地キャリアを使う場合でも中国当局の管轄下にある。それは、監視や盗み聞きされる可能性があるのだ。そこで、第三者による干渉を可能な限り排除する準備をしたい。
たとえば、Googleには二段階認証という強力な保護機能がある。しかし、認証先を中国現地キャリアにするのはおすすめしない。強盗に鍵を渡すようなものだからだ。
私の場合は、二段階認証の音声認証に楽天の”IP-Phone SMART”を使っている。このIP電話の場合、通話が暗号化したデジタルデータでやりとりされるので安全なのだ。少し前まではSkype Outを使っていたが、180日使わないとキャンセルされるので切り替えている。
Skype同士の音声通話、ビデオ通話、ファイル転送、インスタントメッセージ(IM)の会話はすべて暗号化されています。これにより、悪質なユーザによる盗聴の可能性から会話を保護しています。
SMS認証(ショートメッセージによる認証)は暗号化できないので止めておこう。
なお、中国では海外から携帯電話(スマホ)の持ち込みは原則禁止である。これは中国国内のネットに接続する端末は、すべて当局からの許可が必要だからだ。
もっとも、入国のときにここを厳しく言われたことは今まで一度もない。中国人の嫁や友達もここに関して入管から指摘・没収という事例がないので、運用はザルのようだ。
5.VPNの準備
中国には自由権がない。そのため知る権利もない。
一応、中国の憲法にも一通り権利について規定がある。しかし、戦前の大日本帝国憲法と同じで”公共の福祉”の名の下、形骸化している。そのため、中国メディアの報道はすべて当局が検閲したものを垂れ流すプロパガンダ機関になっている。ニュースのソースが限られるのだ。
これに加えて、海外のサービスはほとんどが使えない。日本でよく使われているFacebookやTwitter、LINEなどもアウトである。中国で使えないサービス・ページを別記事でまとめているので、こちらを参考にして欲しい。
FacebookやTwitterなら諦めるというのも手だが、そもそも情報の検索自体ができない。日本にいればよくやる何かあったらGoogleやYahooが使えないのだ。幸いにも日本には類似サイトが複数あるので逃げ道はまだある。
中国の情報規制がどのくらい厳しいのか?想像がつかないかもしれない。
たとえば上記の”くまのプーさん”は、国家主席の習近平にソックリと揶揄されたため、禁止キーワード入りしている。
いずれも、中国のネットは規制されているので、VPNをおすすめする。当サイトでも、中国で使えるVPNサービスを以下の記事で紹介している。
参考になれば幸いだ。
駐在してからもできること
駐在が始まると中国で部屋探しが始まる。日本と違って戸建てという選択肢はど田舎を除けばマンション探しになる。中国-特に日本人が多い上海-での部屋探しについて、別記事を作っているので、こちらも参考にして欲しい。
最後に、私が日本で準備したものの、いらなかったな…と思ったものをあげていく。
常備薬
私は偏頭痛と喘息持ちなのだが、どちらも海外の医療機関が日本と同じ効果のある薬を処方してくれる。駐在する場合、企業が海外の医療保険を付与してくれるはずだ。中国国内には外国人向けの医療機関が多数あり、それら診療所で出してくれる医薬品はほとんどが海外製である。
日本から持っていく場合でも、薬自体に有効期限があるのをご存知だろうか。液体の医薬(飲み薬や目薬など)は、開封後は1ヶ月以内に使い切る必要がある。毎月帰国するようなケースを除けば、すべて日本から持ち込むのはしんどいだろう。
食品
私の周りにいる駐在員の中には、お米を家族で手分けして大量(30kgとか)に詰め込んで持ってきていた人がいた。これはかなり大変である。
実は、日本のお米を日本から持ち込んだ炊飯器で炊いたとしても水が悪いので、日本のような炊きあがりは期待できない。
食べ物は毎日のことなので、ある程度のレベルで妥協した方がいいだろう。もっとも、日本人が多い上海や北京、広東であれば日本の食材もかんたんに手に入る。値段は高いが…。
なお、上海に限ればいろいろ日系サービスが充実しているので、こちらも参考になるだろう。
衣服
中国で日本のように着飾るチャンスはあまりない。現地で衣服は調達すればいいと思う。
少なくとも以前私がいた広東省(深セン)で、いかにも外国人です!という服を着るとカモネギになることうけあいである。郷に入れば郷に従えで、現地で手に入るそれなりの服で過ごすのがトラブルに巻き込まれない秘訣の1つだ。
衣服はかさばる上に虫食いやられるので、防虫剤が普及していない中国に持ってくると、お気に入りの服が…なんてことになりかねない。
あと、中国の洗濯機はレベルが低いので、デリケートな洗い方ができない。
さいわいなことに、ユニクロが中国全土に展開している。ユニクロで我慢して、完全帰国のときに中国でポイすれば経済的だ。
自分の身は自分で守ろう
中国は日本と比べると連休が少ない。たまにある連休でウキウキ!しても、人混みに近づかないのが吉である。
駐在員の多い北京も上海も、中国の中では観光地である。そのため、連休になると中国全土からお上りさんがやってくる。そんな人混みに行ってトラブルに巻き込まれると、死んでしまう可能性もある。
どこでなにをしても、ほぼほぼ安全な日本とは大きく異なるのだ。中国(に限らないのだが)で生活する上で気をつけたいことを別記事でまとめているので、ぜひ読んでほしい。
じゃ、休日も家にいて何をしたらいいのだ!と思うかもしれない。そこでおすすめしたいのが、空き時間を有効活用できる証券会社のネット取引だ。NISAなど少額で税優遇される取引もできる。
中国駐在しながら、財テクの研究はいかがだろうか?
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